「診療科目を売るのが広告」という偏見と誤解

コンサルブログ | 2017年8月30日

「こんなチラシが送られてきたのですが、どう思いますか?」と、尋ねられることは少なくありません。夏季休暇前に歯科医師から送られてきたチラシを見ると、キャッチコピーに“自費戦略で増患対策”とあり、「自費患者が月に30人以上増えました」と笑顔の写真入りで歯科医師がコメントをしていました。

この手のチラシやメールにうんざりして、効果に半信半疑な歯科医師も多いと思いますが、ネット印刷会社の調査からは需要は年々倍増していることがわかります。

このような「物売り広告」は、表現だけが騒々しく華やかですが、生活者の気持ちを動かす力はなく、実に幼稚で子供っぽい感じがします。総じて流通小売業界の二番煎じで中途半端な代物なのですが、この15年余りで何がどう間違ったのか、「診療科目を売る広告」が歯科界の主流として定着してきました。

しかし、年々増加している歯科医院の物売り広告の70%以上は、無駄遣いに終わっているように思います。70%という数字には根拠はなく、何となく大まかな予想に過ぎませんが、本心を言えば90%は無駄、としたいぐらいです。

そんなことを言えば、「現実に新患が増えた」、「増収になった」という反論があるかもしれません。確かに、そのようなことは一時的にありますが、患者の大半は他の医院で不満を持っていた、とりあえず今の不都合さえ解決すればいい、などの来院動機の低い人です。少なくとも、医院の診療方針などを理解して来院したかどうかは非常に疑わしいのです。

歯科医師に限ったことではありませんが、人はしばしば間違いを犯します。それは仕方のないことですが、色々な間違いの中で一番やっかいな間違いは、物事を始めた時の間違いです。歯科医院では、開業した時です。この時期はまだ十分な知識やチェック機能がないために、間違っている認識がないまま、いつの間にかそれが既成事実化して医院の体質となってしまうためです。このような危なかっしさが、歯科医院の広告(ウェブサイトも)には潜在しています。

大半の歯科コンサルタントや経営的歯科医師の書物を見ると、「こんな表現だと自費に繋がります」、「こんなキャッチなら患者が増えます」など、総じて広告は商品(診療科目や利便性)を売るためのコミュニケーション活動のようなことと語っていますが、それは全くの間違いです。彼らは広告(アドバタイジング)とプロモーションの違いを理解していないのです。ついでに言えば、厚生労働省の『医療広告ガイドライン』は、正しくは『医療販売促進ガイドライン』とするべきです。彼らの不勉強はさておき、これからの歯科医師には広告の真髄をぜひ知っておいてもらいたいと思います。歯科医院運営の骨格になるのが、広告なのです。

少し理屈っぽい話ですが、全日本広告連盟の『広告綱領』には、「広告は商品やサービスを正しく人に伝えるとともに暮らしを生かすアイデアを提供し、快適で充実した生活の実現に役立てる。広告はまた、企業の経営理念・活動と社会的使命を人々に知らせることにより企業への理解と信頼を増進する。広告はさらに、コミュニケーションの手段と技術を通じて高い文化性を生み出しよりよい社会の実現のため貢献する」とあります。まさに社会の中で歯科医院のあるべき姿を言い表しています。

つまり、広告は診療科目を売りにするものではなく、患者や連携医療機関、ステークホルダー、そして地域との信頼関係をつくるものです。さらには、歯科医院が長期に渡って存続していくために必要不可欠な信頼関係をつくるコミュニケーションなのです。マーケット・シェアばかりを意識するのではなく、マインド・シェアを高めることが広告の真髄です。

患者や地域のマインド・シェアを高める歯科医院って、素敵だと思いませんか。ぜひ、広告体質の歯科医院を目指して欲しいと思います。