メッセージのある勉強会

コンサルブログ | 2017年5月31日

バブル経済が崩壊して、株、土地、個人金融資産など1千数百兆円が失われたといわれていますが、私は、年功序列という日本的経営の根幹が失われて、長幼の序や仕事への誇りが失われてきたことの方が、大きな社会的損失だったと思います。

この影響は歯科にも顕著で、従来の年功序列的な人事システムに代わって、にわか仕立ての実力主義の導入が広がりました。元来、歯科ではスタッフの在籍年数も短く院長の寿命が組織の寿命のため、年功序列はあってないようなものでした。そのためか、スキル、マネジメント、コミュニケーションなどで給与待遇を決める能力主義を通り越し、一足飛びに年功の関係しないアウトプットを評価するふんわりとした成果主義が主流となりました。

ものの本には、成果主義は数字を正しく評価して賃金に反映させることで、スタッフのやる気を引き出し、組織を活性化させるとありますが、歯科での現実はどうでしょうか。成果主義を導入する歯科の眼目は、人件費の抑制とスタッフ教育の放棄にあるようで、スタッフのやる気や医院の活性化よりも、「スタッフ教育などの無駄を省き効率よく稼いでもらうこと」という本音が透けてみえます。それは、成果主義にした医院の人事システムから明らかです。医院の成長を前提として、頑張れば頑張っただけ給料が上がるシステムではなく、誰かの給与が増えれば誰かの給与が減る、ゼロサムゲームが殆どだからです。

このような成果主義の医院の勉強会には、「患者心理を踏まえたカウンセリング」とか「ユニット○台でナン億円稼ぐには」などという営業研修のラインナップが揃う傾向があります。医療人のモラルと科学的思考を学ぶのではなく、商人(アキンド)精神をスタッフに注入する勉強会の趣です。働いて金を稼いで生活するという経済的側面だけを掘り下げていくのですから、スタッフの患者や医療に対しての思いも、院長の生活のためだけの医療感が自ずと反映されないわけがありません。

最近の歯科雑誌などで取り上げられる医院や盛況なセミナーのモデルケースは、成果主義から派生した金権体質な医院を範としていることが多いようです。こういった金儲けに成功する勉強会とは一線を画す勉強会を見学させてもらいました。
志を一つにするアップルデンタルセンターOPひるま歯科 矯正歯科鶴見歯科クリニックの合同勉強会です。
病因論などを各医院の院長が教授する座学、カリエスに対しての概念形成の過程を各医院の歯科衛生士の代表が発表し、それに対してのグループワーク、さらには歯科分野に限定されない「学び方の方法論」ともいうべき特講などを朝9:00から昼食を挟んで17:00まで行われ、その後に懇親会というスケジュールです。

アップルデンタルセンター 畑慎太郎院長

詳細は3医院のオリジナルのため割愛しますが、この勉強会の特徴は、スタッフが医院から引き継ぐべき考え方を、全体構成を通じてメッセージしていることです。技術や経営論議よりも、まず医院の考え方、医療のあり方をやんわりと伝えているところが、各医院の院長の人柄が表れていました。

「何を思う?」OPひるま歯科 矯正歯科 晝間康明院長

鶴見歯科クリニック 鶴見和久院長

グループワークの様子

勉強会全体を通じて「人は働くことによって築かれていきます。それは働いて金を稼いで生活するという経済的な意味だけではなく、働くことで自己実現を果たしたり、働いて社会の役に立つことで、生きる悦びや実感を見出しましょう。」といったメッセージが発信されているようでもありました。「人は働くことで人生を生きるのです。あなたはなぜ当院で働くのか、そしてどんな働き方をしたいのかを考えてください。」と、問いかけている感もありました。成果主義医院の勉強会とは、スタッフの能力の引き出し方の濃淡が全く違い、「これぞ本気の勉強会!」のあるべき姿でした。

勉強会に参加した3医院の先生・スタッフの方々と伊藤