予防型歯科の文脈を考える

コンサルブログ | 2017年6月26日

ある歯科医院を訪問すると、“聞き流すだけで予防型定期管理のハウツーが理解できる”と、英会話教材のような宣伝文句が施されたDVDを見せられた。気が進まなかったが後覚のためと思い、件の歯科医師の勧めで一緒に聞いてはみたが、最初の4~5分でうんざりとして聞くことをやめた。

冒頭「メインテナンスが3ヶ月1回必要な理由が医院内で一貫性がないと、予防型定期管理は定着しない」と説く。3ヶ月1回のメインテナンスが必要な一貫性の根拠は、予想通り保険算定のルールに求め、患者の健康管理を根底にしない旧態依然の予防歯科そのものだった。巧妙に理由付けをして患者を納得させ、保険制度を使い金儲けするハウツーが、このDVDの全てであった。
DVDの製作者は、人はビジネス上の損得や効率だけで生きているわけではなく、医療や教育は損得や効率という用語では語りえない最たるもののひとつだという常識が欠落しているのだろう。

誰しも後戻りは、好んで行おうとはしない。歯科医師にも国民皆保険制度が施行された1961年以前に戻り、予防歯科を考えるべきとは言わない。しかし、2014年の医療施設に従事している歯科医師総数は10万965人になり、人口10万人対歯科医師は81.8人で、1970年の35.2人から大幅に増加している。国際的には必ずしも人口対比の歯科医師数は多くはないものの、現行の保険医療制度の下では、歯科医師数の増加に準じた歯科医療費の増加は、現在も将来も見込めないことは明らかなことである。然るに、患者の健康を踏み台として健康保険制度の蛇口を全開にするようなDVDを疑問に思うこともなく必要とする歯科医師の姿勢は、社会ビジョンに逆行しており世の中に認められるわけがない。

現在の保険医療制度の状況からすれば、遠からず予防歯科の文脈を替えるしかない。過剰な保険請求をして、その余沢で医院経営を潤すといった価値観を、予防歯科の本義へ価値観自体を変更するしか予防歯科の存在する方向はないと思う。このことは社会正義といった高所からだけではなく、むしろ経営的視点からも自明の理であると思う。

果たして保険医療制度に浸かりきった歯科医師は、その価値観を変更できるだろうか。たぶん、価値観を変えることも、自らの生活を変えることも難しいだろう。そして最後まで難問として残るのもこのことだと思う。

歯科医師が自らの価値観を変える一助として、栃木県鹿沼市で開業されているチョコレート歯科医院の加藤大明先生が、デンタルハイジーンに寄稿した小論を一読することをお勧めする。
http://www.sat-iso.net/message/index09.html