内覧会を考える

コンサルブログ | 2017年7月5日

内覧会業者の実態

昨今の歯科医院開業では、ほとんどの医院が内覧会を行います。その中で、内覧会業者を使う医院は6割程度で、内覧会業者も雨後のタケノコのごとく「歯科専門」と称して存在しますが、その実態はいかがなものでしょうか?

例えば、自称リーディングカンパニーの内覧会業者の社長は、都心部の集客施設で、数件の歯科医院を運営していた医療法人に在籍していたはずです。その法人のマーケティング手法は、立地優位性の高い場所で出店すること以外これといったものはなく、最後には分院を居抜きで売却して繋ぎ資金として、約10年前に破産しています。
内覧会業者はこの会社に限らず、歯科のマーケティングや医院運営に長けているわけではありません。その多くは、マンションや介護施設向けの内覧会業者が直接、あるいは他業種の傘下で、歯科へ参入してきているのが実態です。

そういった内覧会業者の実際の内覧会現場を見ると、歯科経営のノウハウがあるように見せてはいますが、ほとんどは実態がないと感じられます。

内覧会業者の功罪

内覧会業者を使った場合の成果は、なんといっても新患の予約にあります。
多くの業者発表とは違うと思いますが、私の知る十数件の医院が、内覧会業者を使用した数字を平均すると、内覧会の参加者数は、主に土日2日間で130~200人程度、予約数は30~60件程度です。新規開業の医院にとって、この予約数が大きな魅力であることは間違いありません。

ショッピングセンターなど商業施設での開業では、内覧会業者を使用しないと、開業1ヶ月後の新患数は100人前後です。
商業施設等での開業で内覧会業者を使用すると、内覧会を開催した日に新患予約が集中しますが、開業1ヶ月後の新患数は、内覧会業者を使用しなかった場合と、ほとんど変わらない傾向があります。
このことから、認知が弱い立地の医院の方が、内覧会のメリットがあるように思われますが、立地の悪い医院は予約数もあまり期待できないことも付け加えておきます。結局は、内覧会の成否の多くは、開業地の立地に左右されているのです。

次にマイナス点をあげます。予約は取ったがキャンセルが多い、あるいは問題のある患者が多いなどの声を聞きます。このことは、誘導的に予約しているわけですから、コンプライアンスの低い患者が多くなることは、当然の結果といえます。また、内覧会開催時に、パンフレットに食べ物を添付しているなどと同業者ないし近隣から、強引に予約を取られたなどの患者からのクレームが保健所へ寄せられることも少なくないと聞きます。

内覧会の意義と価値

歯科の内覧会は20年以上前から行われており、決して新しいマーケティング手法ではありません。内覧会を行う意義は、生活者の医療機関への敷居を低くすることと、自院のあり方を伝えることにあります。

私の経験から、地域の生活者は、来院経験がなくとも4~5軒の歯科医院を認知しています。開業早々に来院してもらえなくとも、まずは地域の生活者の記憶に残ることが大切です。その後、生活者に歯科が必要になった際に思い出してもらい、過去に通院した医院と比べてもらえる契機と、自院の取り組みを伝えることが、内覧会を開催する意義です。

しかし最近では、内覧会業者が介在することで、内覧会の意義は「知って理解してもらうこと」から「予約を取ること」に変わってきています。歯科医院側が短期的な成果を求めることに、内覧会業者が呼応した結果、「予約数◯件」が業者のPRとなり、目的となったからでしょう。

20年前と比べて、内覧会の企画と内容自体は大きく変わっていませんが、成果を出すための医院の装飾が派手になり、集客手法が強引になったことは危惧されます。極論すれば内覧会業者の強みは、“客引きの度胸”だけで、その他のマーケティング的な試みは陳腐化しているように思います。

歯科医院、特にヘルスケアを標榜する医院は、その地域の景観や文化を大切にする姿勢が求められます。業者主導の内覧会の表現自体が、歯科医院の理念伝達をさまたげ、イメージを壊してしまう危険性を考えなければなりません。
ただ、業者の“客引き度胸”は歯科医院スタッフにはないもので、一朝一夕で身につくものではありませんから、内覧会業者を使う価値は、その点においてはあると言えるでしょう。逆の視点から見れば、それ以外のことは自院が主導することが、内覧会を行う価値を十分に引き出すポイントといえます。

現在多くの歯科医院では、全てを内覧会業者任せにする傾向があります。これではせっかくの1)医院組織の意識統一 2)地域エリアマーケティング 3)スタッフ研修の機会 を放棄することになります。この傾向は、内覧会を行う真の価値に歯科医師が気づいていないことによるのでしょう。
内覧会の価値は大きく分けて1)地域への自院の認知と集客 2)医院の組織固め にあります。どちらも大切なことはいうまでもありませんが、多くの医院は2)の要素をおざなりにしがちです。中期的な視点からすれば、1)よりもむしろ2)の方が大切であることを付言しておきます。

内覧会へのアプローチ

ここで内覧会の準備と手順を確認してみましょう。以下で紹介する段取りは、弊社が医院独自の内覧会を勧める時に提示するスケジュールです。

  1. エリアマーケティング 1)徒歩診療圏 2)ドライブ診療圏 3)1)2)における公共施設・幼稚園・塾・調剤薬局・商店会などの調査
  2. Webマーケティング 1)地域ユーザーの検索ワードの調査 2)地域歯科医院の診療志向調査
  3. 1・2の調査を踏まえた内覧会運営企画と広告媒体選定
  4. 内覧会運営にあたる医院の意識統一と役割分担・準備
  5. 具体的な準備
    01)開業挨拶や内覧会などのリーフレット制作(配布用)
    02)院内掲示用の、診療体制と医療機材の説明ポスター・POP作成
    03)内覧会開催認知ポスターの制作
    04)医院名刺・診察券・診療圏歯科医院への挨拶状(封書)作成
    05)患者教室と院内の催し企画
    ※食べ物の提供は保健所からは禁じられている。
    06)自院Webサイトへの内容公開
    07)患者説明会・イベント受付の手順書作成
    08)来院者の誘導・院内説明・予約までの手順書作成
    09)来院者への記念品と院内装飾品の発注
    10)補綴物など展示品の準備などを取引技工所やメーカーへ依頼
    11)新聞折り込み・ポスティングの業者への依頼
    12)所管警察への道路使用許可申請
    13)各施設・商工会などへの挨拶と説明
    14)新聞折り込み・ポスティングの実施
  6. 地域人口動態・患者特性・医院システム・機材説明・接遇の院内勉強会とロールプレイング
  7. 内覧会の実施
  8. 予約および記帳した来院者へのメールや手紙での対応
  9. 内覧会の総括
    内覧会で得た、地域特性と生活者への歯科への関心を文書化
nairankai

内覧会費用

一般的な内覧会業者の2日間開催の費用は、100万円前後のところが多いようです。これに新聞折り込み・ポスティング費用やパンフレット制作費用などがかかるのが通常のようですから、実際は130万円前後かと思います。

それでは自院開催をした場合の費用はどうでしょうか。印刷物はオリジナルで訴求力のある開催リーフレット・ポスター・診察券・名刺などを制作して、装飾品・記念品を購入し、新聞折り込み・ポスティング費用(部数による)なども含めても、総額50~60万円程度で準備できるでしょう。 内覧会業者が介在した場合との費用の違いは、

  1. 各施設・商工会などへの挨拶と説明
  2. 所管警察への道路使用許可申請
  3. 患者教室と院内の催し企画
  4. 医院システム・機材説明・接遇の院内勉強会
 

にかかる人件費と歯科材料店などへの紹介リベートなどが、上記の準備品目などに加わってしまうため高額になるのだと思います。また、内覧会業者が作成する広告材では、歯科医院の理念・質感やオリジナリティーが十分に表現できないマイナス面も指摘しておきます。

このように考えてみると、内覧会は時間があれば、自院で企画・運営し、オリジナルの印刷物も準備して、医院への誘導(客引き)は内覧会業者に依頼する形式が、最も合理的といえるでしょう。これからの歯科医院は、内覧会を自院主導で開催して、1)医院組織づくりの基礎として、2)地域患者の傾向を知る契機に、3)そして開業前の接遇の見直しの機会とした上で、地域の生活者に自院の理念・方針、歯科医療の本来のあり方を伝える場にして欲しいものです。