医療経団連(仮称)決起集会レポート

IMG_0171.JPG去る5月31日に「病院がトヨタを超える日」などの著者で医療法人KNI理事長の北原茂美医師が主催する医療経団連の決起集会が丸ビルホールで開催されました。

当日、日吉歯科診療所の熊谷崇先生、株式会社オーラルケア代表取締役大竹喜一氏と参加してきました。

他業界からの参加者は医師、薬剤師など医療関係者に留まらず、IT関連企業、農林水産業、広告業、住宅メーカー、政界、法曹界、教育界など約250人(推定)と多岐に渡り、来賓として内閣官房医療戦略室参事藤本康二氏も出席されていました。

当初準備不足を懸念されていましたが、本会のコンセプトを共有するという基盤強化は達成できたのではないかと思います。



歯科から見た、医療経団連の意味

SKMBT_C28015060910050.jpg2030年には医療産業への就業者が944万人となり、国内最大の労働者人口になると推計されています。

しかし、国民皆保険の限界、医療費抑制政策、診療報酬制度という統制経済の縛りなど、医科・歯科が抱える問題は未解決のままです。

現在でも過重労働と低収入、社会・労働保険の未加入などの理由から人手不足の歯科ですが、今後診療報酬はさらに圧迫され、雇用状況が悪化することは明らかです。

歯科の政治的窓口の歯科医師連盟は、不透明なロビー活動により再び東京地検に摘発され、歯科への利益誘導は期待できない状況です。

この閉塞した現状に対して旧来の方法論で望むならば、歯科の収入減少には歯止めがかからず、それに伴い就業者の確保はますます難しくなり、日本社会全般に先行して歯科の二極化が進んでいくでしょう。

国も産業も格差から衰退が始まる傾向は歴史が証明するところです。

この傾向は他業界も同様ですが、労働基盤が脆弱な歯科は、各産業に先行して格差・衰退が進行していくと予想されています。



SKMBT_C28015060910061.jpgそれではこのような状況にある歯科が、医療経団連に参画するとどのような改革がなされ、どのような取り組みが求められるのでしょうか。

第一に、停滞する社会状況を歯科の括りだけではなく地域社会から見直し、歯科の立ち位置を歯科医師会や歯科流通機構といった旧体制から地域産業構造の中に移す意識が必要です。

つまり旧体制のネットワークから地域産業を主体とした広域ネットワークへと軸足を移すのです。

そして広域ネットワークを織り上げる多業種の人達(地域住民でもある)の活動を組み込むことで、歯科は国の制度で保護されている医療から独立独歩の生活産業へとシフトする環境に位置することができます。

産業化された歯科には多様な人材、進歩的な考え、先駆的なシステムが集まってきます。

同族化が進んだ旧体制の歯科では、院長の寿命が医院(会社)の寿命でしたが、多様な人材の流入による視点・環境・経営基盤の変化が、医科・歯科の企業体としての寿命を延ばします。

つまり医科・歯科の産業化の基盤が、歯科業界以外の視点から確立されてきます。

そして医科・歯科が広域ネットワークの中で医療サービスを提供する存在になると、旧来の国の加護の元での収入基盤に加え自由マーケットによる収入基盤を得ることになるでしょう。

ここで言う自由マーケットとは、例えばジルコニアをどのように説明してどのような値付けをするか、といった些末なHow Toでないことは言うまでもありません。

広域ネットワークの中で、医科・歯科はかつての自動車産業のように地域産業を取りまとめる横串になる産業に位置することが命題とされた自由マーケットです。

歯科はそこで多種多様な立場の人が集まる共感市場を形成する中核産業になることを目的とするのです。

共感市場の中で歯科は国民皆保険制度などの旧体制への依存から抜け出し、自立した医療サービス産業へと成長する道筋を得ることができるのです。



SKMBT_C28015060910040.jpg医科歯科の産業化へのロールモデルとして、医科では北原茂美先生の八王子国際病院と東京都八王子市との関係を挙げることができます。

そして既にそのモデルをカンボジア、ラオスへ『生活産業としての医療』として輸出するビジネス的な試みは、各界から注目を集めています。

歯科のロールモデルとしては、山形県酒田市・日吉歯科診療所の熊谷崇先生を挙げることができます。

酒田市民の口腔の健康を向上させたことに留まらず、旧態依然とした歯科の概念を変え、全国の歯科医院に新たな道筋を知らしめ、さらに庄内をベースに地域産業や大学などを取りまとめて地域を活性化させています。

このような取り組みは、従来の医療のイメージから逸脱しているかも知れませんが、旧体制の医療に比べて『幸せにできる人の総量』が圧倒的に多いことは言うまでもありません。

旧体制の医科・歯科に比べ、北原先生の病院、熊谷先生の診療所は、患者はもちろんのこと地域全般、周辺企業、医療関係者以外にも幸せを与えてきています。

それに比べ検察に摘発された歯科医師連盟のロビー活動に使われたお金は、歯科医師自らの幸せだけを求めた結果、歯科は反社会的な存在とされつつあることを忘れてなりません。



IMG_0172.JPGこのような先駆的な取り組みをしてきた北原先生は、医療経団連での医療の在り方を『いかにして人が良く生き良く死ぬか、その全てをプロデュースする総合生活産業』と再定義しています。

歯科においても『一本の歯を守る』ことから、『一本の歯を守ることで、人が良く生き良く死ぬかをプロデュースする』まで文脈を伸ばすことで、歯科は社会性を得て生活医療から生活産業へと市場を広げることができるのではないでしょうか。