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生活者の関心を引き出すのは医院、高めるのはスタッフ【2017.11.20】

スタッフ任せでは患者がどんどん喪失する

患者の関心を引き出す方法のひとつとして、前回お話しした「手書きの葉書」は、業種を問わず行われ有効とされてきた方法です。
しかし、「手書きの葉書」が徐々に上手くいかなくなる理由は、媒体や患者側にあるのではなく、医院スタッフの能力に問題がある場合が圧倒的です。相対的に歯科医院のスタッフよりも、患者のほうが社会常識も科学的見識も高い場合が多いため、情緒的になりがちな手紙の内容で関心を引き寄せることは難しいのです。しばらくすると、わざわざメインテナンスに行く必要があるの?と、考えてしまうことになるのです。
患者意識を喚起できない程度でしたらまだしも、医院のサービスマーケティングまで疑問視される「手書きの葉書」をしばしば目にすることもあります。さらにスタッフには、顧客別の経営重要度が明確に理解できていませんから、顧客満足の点からも綻びが出てくる傾向があります。平均的歯科医院のスタッフの力量はこの程度ですから、スタッフ任せの旧態依然とした「手書きの葉書」に代表されるサービスに時間をかけている間に、患者はどんどん喪失していくことになるでしょう。

患者ではなく生活者を相手にしている

健診やメインテナンスに来院する健康な人に対しても、医療機関では総じて患者さんと呼んでいます。これは単に慣習として患者さんと呼んでいるに過ぎないのでしょうが、スタッフの対応は無意識のうちに患者さんも健康な人に対しても同質化していってしまいます。そのために健康な人が来院するための顧客満足視点が不足して、継続的にメイテナンスで来院する人が、なかなか増えていかない結果になる場合が多いのです。

健康な人は、患者さんではなく生活者なのです。「生活者」とは「生活を生産する人」という意味です。勉強をしているときは、知的生産をしているわけで、仕事をしているときは、経済的生産をしているのです。歯科医院に継続的にメインテナンスに来るときは、健康生活の再生産を拡大したいと思っているのです。健康生活を再生産したいと思うから、フィットネスクラブや健康教室が盛況になるわけです。したがって、予防を基盤とした歯科医院が成長するには、生活者の健康生活の再生産にどのように参加するかということが、顧客満足のポイントになってくるのです。

生活者はサイエンスを求めている

花王の「ソフィーナ」というロングセラー商品があります。「ソフィーナ」の成功は、化粧というのは粉やクリームを顔に塗りたくり化けるものではなく、皮膚という畑に美しくなる菌を皮膚科学で培養するという考えを世の女性に打ち出したことにあります。一見してエモーショナルな化粧品の世界に、科学を持ち込んだのです。
しかるに歯科医院は医療機関であるにも関わらず、科学的な見地からのアプローチを推し進めるよりも、「手書きの葉書」に代表されるエモーショナルなアプローチに十年一日の如く取り組んでいるのはどうしたことでしょうか。

歯科医院は「ソフィーナ」の成功を学ぶことが必要です。「ソフィーナ」がサイエンスの導入で成功した理由は、生活者は感情だけでは満足しなくなったからです。科学的説明を大切にするスマートな生活者になったのです。ですから「ソフィーナ」の科学的なメッセージを他社の化粧品の情緒的広告以上に評価したのです。むし歯も歯周病も感染症であり、予防することが科学的に証明されている現在、科学的な根拠を示すことが、何よりも先行されることは言うまでないことです。今、成長している企業も歯科医院も、生活者の科学的欲求に応えている組織であるという事実は、生活者が感情だけでは満足しない時代の中に歯科医院は存在することを意識することが求められていることになるのです。

このように考えていくと、予防を基盤とした歯科医院の顧客満足とは、不平、不満、不快感がないことではなく、次のメインテナスへの期待感を大きくする科学的根拠にあるということが理解できると思います。次への期待感が継続することで、20代ならば30代になった時の自分への期待感を、40代なら50代の、そして80代になった時の自分への期待感を生涯にわたって大きくしていけるのです。つまり健康の再生産ができる医院か否かが生活者には大切なのであって、接遇的な表層的なサービスは二の次なのです。

患者の健康感形成には初期から関与する

科学的根拠を医院が意識するようになって、初めてサービスマーケティングの仕組みをつくる効果が出てきます。
ここでは健診・メインテナスンテ率を上げるための紙媒体を、総称的にリコールカードと呼ぶことにします。
さて、このリコールカードを出す時期はいつなのかという問題があります。一般的には、

  1. 「保険算定の都合に合わせて」
  2. 「誕生日月」
  3. 「リスクに合わせて」

という順番で届くようにしているようですが、これでは多くの患者に見過ごされてしまいます。
平均的な歯科医院では、概ね個々の歯科医院の保険診療率に準じて、主訴が解決したら歯科医院にはもう関心がなくなる傾向があると言われています。例えば、保険患者が全体の80%だとすれば、主訴が解決したら80%の人が歯科医院に対する関心が希薄になってきます。主訴が治り関心がなくなった患者から、再度関心を引き出すのは並大抵のことではありません。患者が医院やスタッフへの関心が冷めないうちに次の手を打つことが大切です。患者が自分の口腔に関心のあるうちは、スタッフ側の話や情報を、親切・熱心・ホスピタルといった観点から受け入れてくれます。しかし、時間が経てば経つほど、医院側の情報発信を単なる「売り込み」のように感じて、警戒心すらもたれてしまうのが現在の歯科医院を取り巻く目です。だからこそ患者とリレーションを結ぶには、治療で通院している期間と診療が終了してからの1ヶ月間が、患者さんの健康に対する感度を上げる期間なのです。

リレーションプログラムを持っていますか?

例えば科学的根拠を載せるリレーションプログラムなど、(名称はどうでも良いのですが)患者との関係性を築いていくマイルストーンをスタッフが生活者に周知徹底することがサービスマーケティングの仕組みです。
周知徹底させることは、

  1. 「どのような周期で」
  2. 「どの患者まで」
  3. 「どの媒体を使うのか」

の区分をスタッフに示さなければなりません。
この中で最もよく質問されるのは、何年前までの患者に出すのかということ、つまり②「どの患者まで出すのか」についてです。目安としては、保険患者でしたら3年、自由診療でしたら5年前に終了した患者を限度とするのが合理的です。
リコールによって再診・メインテナスに来院した患者の約80%が、2年以内に終了した患者だということは弊社関連医院データから見てとれます。5年以上になるとほとんど効果はありません。つまり再診・メインテナス率を上げるためには初動告知がいかに肝心かということです。

初動プログラムこそがマーケティング

以下は、初歩的なマーケティングプランの一部です。ここまでが、患者の関心を引き出すために医院が構築することです。

  1. 歯科医院利用ガイドを説明する。
    図書館の利用ガイドなどを参考にして製作する。この中では概念的なことではなく、施設の利用方法などを具体的に説明する。
    (下の画像をクリックすると拡大表示します。)

    当院を受診される方へ

    時間予約制のお願い

    治療費のお支払いについて

  2. 治療終了時にメインテナンスについてのオリエンテーションを実施する際に、患者のリスクに応じて1~2年で4回分(目安)のメインテナンスプログラムを提示する。

    メインテナンスプログラム

  3. オーダーセレクトの歯ブラシ、歯間ブラシ、フロスなどのセットを購入してもらう。
  4. 1ヶ月以内に65%の記憶が喪失されることを念頭に、オリエンテーションから1ヶ月以内に担当歯科衛生士ないしスタッフのプロフィールとメッセージを送付する。
  5. 適宜次回のアポイント時期まで医院ニュースレターや予防小冊子などを送付する。
  6. メインテナンス1週間前に確認の連絡。
  7. メインテンスは4回目から5回目で脱落する生活者が多いため4回目アポイン時期を確実に認識できるようにする。4回目のメインテナンス時には、過去3回のメインテナンスから得た情報に基づき再度のオリエンテーションをする。または医療的メインテナンスにヘルス・ビューティーやリラクゼーションなどのバリエーションをつける。