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佐和義夫先生:佐和歯科クリニック

「予防歯科」はむし歯や歯周病を未然に防ぐことに意味がある

佐和先生の決意・志について

歯科医師を目指そうと思ったきっかけ・動機について教えてください。

私は京都市中京区の出身で父は東山区の出身です。父は歯科医師ではなく教員でしたが「本当は歯科医師になりたかった」という言葉を聞き、父の夢でもあった歯科医師を目指しました。
昔から細かい作業が得意で手先が器用でしたので、歯科医師という職業にやりがいを感じていました。また大学で学んだことが直接仕事に役立ち、技術を磨けば患者さんに喜んでもらえるかもしれない!と、1ミリも迷いはなかったです。

歯科大学に入学してから現在に至るまでの経緯・学びについてお聞かせください。

歯科大学に入学し感じたことは、同級生に「第一希望が医学部だった」という人が多くて驚きました。歯科医師になってからも同じような話をよく耳にしますし、現在もそういった歯科医師の方に接する事があります。
私は「医学部」ではなく本命の「歯学部」に進学することができ感謝しています。当時の国公立医学部や地方新設国公立医大などの受験は現在ほど難関ではなく、人気の国立歯学部より受かりやすかったのが実情です。一時期は私も妥協して医者になろうかと迷いましたが、歯学部に合格することができ今でも感謝の気持ちが絶えません。

一般的に削って詰めるといった「むし歯治療」から「予防歯科」に力を入れようと思ったきっかけや、オーラルフィジシャン育成セミナー(2013年34期)の受講動機について教えてください。(2019年3月現在60期)

私自身が子を持つ親になったことがきっかけです。もちろん子を持つ前も歯科医師としてお子様の治療や予防歯科を実践していました。しかし恥ずかしながら、家庭でのハミガキや離乳食、飲物、全てにおいて、子を持つ前後では予防歯科の考え方が変わりました。予防歯科は診療所だけではなく家庭での指導も含めてアプローチが必要なのです。
そして、さらに学びを深めるべく、6年前(2013年)に熊谷崇先生のクリニックの日吉歯科診療所(山形県酒田市)にて、オーラルフィジシャン育成セミナーを受講しました。受講後は教えを実践するにあたり毎日が濃厚で、まだ6年しか経っていないことに驚いています。

「発生予防」の概念こそが予防歯科である

熊谷崇先生による教えについて

KEEP28を達成するためには予防歯科が非常に重要です。貴院が実践する予防歯科と世間一般的な予防歯科とではどのような点が異なるのでしょうか。

熊谷崇先生から教わった「KEEP28予防歯科」と、現在の日本でよく提唱されている「一般的な予防歯科」との違いを一言で言うと「発生予防」の概念の有無です。
「むし歯」にしても「歯周病」にしても、まだまだ世間一般的には「早期発見・早期治療」を推奨する感覚が、患者さんにも歯科医療提供者の方にも根強く残っています。残念ながら「むし歯」も「歯周病」も未然に防ぐのではなく、軽いうちに治療すれば重症化を防げます!まめに検診を受けて、むし歯が小さいうちに治してしまいましょう!という考え方が主流なのです。しかし、熊谷崇先生は仰います。「むし歯」も「歯周病」も小さいものでも発生させてしまったら、「予防は失敗に終わった」のだと。
例えば、「胃がん」の場合はどうでしょうか?まめにがん検診を受けていたのにもかかわらず、ある時小さな「胃がん」が見つかってしまい、先生が「小さなうちに見つかって本当に良かった。すぐに切れば大丈夫ですよ!」などと言われても、嬉しいでしょうか?安心出来るでしょうか?
現在は「ピロリ菌検査」を行い陽性となれば、抗生剤の使用で「胃がん」は高確率で「発生予防」が出来る時代になりました。
「むし歯」や「歯周病」も同じです。「発生予防」に取り組むのか?「早期発見・早期治療」に取り組むのか?どちらを選択するのかは、皆様と私たち歯科医療従事者なのです。

貴院はホームページでも予防歯科や定期検診の重要性を患者さん目線で分かりやすく発信しております。患者さんが予防歯科の重要性を理解し、継続的に定期検診に通っていただくために行っている取組みや啓蒙活動について教えてください。

熊谷崇先生に教わった「発生予防」の概念を「子供のむし歯の発生予防」にシフトした場合、よくお母様やお父様には「生えたての歯はタケノコの様に柔らかいですよ」とお話しています。
「6歳永久歯」が生えたての頃は「タケノコ」の様にとても柔らかく非常にむし歯になりやすいのが特徴です。不幸にもこの頃にむし歯になった歯を削る時には、かわいそうな程の柔らかさと脆さをドリル越しに感じます。しかしこの様に柔らかい永久歯が生えてから6年も経過すると表面も中身も「硬く」「丈夫」に育っていきます。まるで「タケノコ」が「竹」に育つイメージです。中学生まで「6歳永久歯」がむし歯にならなければ、その後もむし歯になる可能性は低いでしょう。
最後に生えてくる永久歯は「12歳永久歯」です。この永久歯も「硬く」なるのには約6年かかります。逆に言うと12+6=18歳までにむし歯にならなければ、その後もむし歯になる可能性は低いでしょう。もし18歳まで「むし歯」に1本もならなかった人は「生涯」むし歯を一度も経験することなく人生を過ごせる可能性が高いです。現に「むし歯予防大国」スウェーデンでは、生涯むし歯を一度も経験しない国民の割合が「80%以上」と言われています。
オーラルフィジシャン歯科医院ではフッ素塗布やむし歯菌の駆除、シーラントなど「永久歯をむし歯から守る」発生予防の手法が、どなたにも適応出来るように確立されています。あなたの大切なお子様が、一生むし歯治療を繰り返す人生か?一度もむし歯を経験しない人生か?どちらを選択されるでしょうか?答えははっきりしていますよね!

スタッフの安心を優先するための未来への投資

医院マネジメント・保育園の運営について

同法人では保育園も運営されておりますが、歯科医院と一緒に運営することによる相乗効果や双方にもたらすメリットについてお聞かせください。
また、乳幼児の「口育」において重要なポイントを教えてください。

私どもの医療法人社団アイアイ会では、法人の持つ企業主導型保育園「アイアイ会登戸保育園」を「事業所内保育園」として川崎市多摩区で運営しています。
母体となる佐和歯科クリニックと保育園は電車で10分程の距離にあります。この保育園は職員のための保育園で費用は無料です。現在一人だけですが当医院職員のお子様を預かっています。これはアイアイ会の現在、そして未来のスタッフのための保育園です。
私のイメージとしては・・・

  • 「育休」に「勝てる保育園」のある職場
  • 「育休」で休むより魅力的な職場
  • 「育休」を取得せずともキャリアを積める職場

との思いを込めております。

少子化問題を「自身の問題」と置き換えて出した結論が「保育園経営」です。もちろん、地域のお子様も受け入れています。その場合は有料ですが保育料は安く設定しています。
また「口育」「口育士」は聞き慣れない言葉かと思います。今後、話題になってくると予想しますが、いわゆる若年者の「口腔機能発達不全症」の予防と、高齢者の「口腔機能低下症」への対応を一手に引き受け管理・発達へと誘導します。「口育」は「日本口育協会」が母体です。歯科医療従事者向けに言いますと「乳児嚥下」からいかに「成熟嚥下」に移行させるか?その重要なステップが「離乳食・前期・中期・後期」ということになります。キーワードは「乳児嚥下の残存の改善」です。

現在、歯科界では歯科衛生士の採用に多くの医院が苦労されています。
なかでもオーラルフィジシャン歯科医院では患者担当制や日常的な学習等により敬遠される傾向が少なくありません。
貴院は多くの歯科衛生士が在籍されておりますが、採用・雇用について工夫されていることがございましたら教えてください。

私どものクリニックは、そのようなとても多くの歯科衛生士が在籍しているわけではありませんが、私が行っている歯科衛生士への取り組みは、

  • 全員新卒採用
  • 全員正社員(社保適応)
  • 全員同時出勤退勤で早番遅番などのシフトなし
  • 全員週5出勤で出勤日・休日のシフトなし

これが良いのか悪いのかはわかりませんが、当院では経験者のレベルアップ、新人採用、教育システム、診療意識や技術の統一に役立っていると信じています。

貴院は他医院の先生やスタッフからの見学希望が後を絶たないとお聞きしておりますが、採用・教育・マネジメント面で大切にしていることを教えてください。

見学希望が後を絶たない等ということは全くありませんが、採用・教育・マネジメントで気にかけていることは「製本された各職種別マニュアル」を見学者の方に見ていただいています。この様に製本されたマニュアルがあれば安心して勤務していただけるのでないかと思います。

予防歯科には関わる人が幸せへと一歩近づく、社会実現のヒントがある

診療データの提供について

クラウドサービスを利用して診療情報を患者さんと共有することについて、患者さんの反応、スタッフの労力、その効果などを教えてください。

正直クラウドシステムに関しては、本格フル稼働しているとは言えないような状況です。しかし、ご利用いただいた患者さんからは「驚嘆」と「称賛」以外の評価はありません。
私の様なものでも過分にも、絶大なる「信頼」を頂けるシステムだと思います。
同業者の歯科医や、見学者の方々にも私自身の「クラウドデータ」の口腔内写真やレントゲン写真をお見せして、患者さん「すべての人」に「無料」で「いつでも」これを提供できる体制が整っていると伝えますと、大抵の方が非常に驚かれます。

予防歯科を更に社会に普及させるためには、どのような取り組みが必要になるとお考えでしょうか?

今の日本では予防歯科に本気で取り組まなくても、むし歯になってから歯を抜いても保険で数千円か一万円位で歯が入るんでしょ?治るんでしょ?というような感覚があるかもしれません。しかしそれは治ったのではなく、「義足」や「義手」と同じような「代替え品」になって何とか活動できるようにしているのに過ぎません。
自分の子供に、将来「義足」や「義手」のような、「歯の修復物」を「一生」装着させたいと思う親が、果たしておられるでしょうか?(義歯や義足や義手がだめなものであるというような思いはひとつもありません。)しかも、いわゆる「銀歯」というのは「日本でしか」行われていない治療法だというのをご存知でしょうか?金の代用金属である「銀」と「パラジウム」という合金が世界中で「日本でだけ」使われており、口に「銀歯」が入っているのは「世界中で日本人だけ」です。
なぜ日本ではそのような治療が行われているかというとそれは、
・憲法第25条) すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
要するに、健康保険で歯の治療を受けるという事は、「生活保護」の受給をする事と同義です。「銀歯」の治療を受ける事がいいかどうかはここではお話いたしませんが、「世界的にはまれな治療法」なのです。
アメリカ・ヨーロッパはもちろん、おそらく中国、ブラジル、アフリカ、フィリピンでも、銀歯の治療はないと思います。世界中のどこでも歯の詰め物・被せ物はほぼ100%「セラミック」でしょう。
誤って抜歯をされたと言う患者が起こした裁判で負けた歯科医師は、1本の歯に賠償金約200万円を請求されたそうです(金額は正確ではないかもしれません)。人間の口には誰でも(親知らずを入れず)28本の永久歯があります。裁判の結果を照らし合わせれば人間の歯には200万円×28本=5600万円。単純計算で歯の総本数の価値は「5600万円」という事になります。
また私の尊敬する坂本龍馬の名言にこういったものがあります。
「時勢は利によって動くものだ。議論によっては動かぬ。」
皆さまも、ご自身の「歯の価値」というものを、今一度お考えいただければと思います。

今後の展望・展開について

現在OPで取り組んでいる「医と産業の連携」において、今後の方向性・可能性について先生のお考えをお聞かせください。

旧時代的において「社会保障」と「経済活動」は相反しやすく、放っておくとお互いの価値観に相違が生じてしまいがちです。しかし、30年前のスウェーデンがそうであったように、双方が「知恵」を出し合いお互いを支え合うことで「WIN-WINな関係になれることが北欧で実証されています。それがすべての人々にとっても「the most WIN」な社会だと思います。
人が活動するうえで必要な「産業」と、人が生きるうえで必要な「医療」。本来、この二つは「セット」でなければいけないモノなのかもしれません。最初に「企業」が自身の身を切りながら実践される「予防医療」には、関わる全ての人が幸せへと一歩近づける、そんな素敵な社会実現へのヒントがあるように思います。

最後に貴院の今後の展望・展開について教えてください。

熊谷崇先生、ダン・エリクソン先生(スウェーデン・マルメ大学)に教わった事を着実に実行していくのみです。簡単な事ではありませんが、ここ神奈川県川崎市で、しっかりとしたMTMを長期にわたり持続的にご提供出来るようにしていきたいです。

先生による自己評価(5点満点)