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小六英介先生コラム「歯科医院内のコミュニケーション」について

ことばを磨く1

ことばを磨く1

会話を交わす上で、何回も逢っているのに、いつも他人といった感覚で過ごす人は多いものです。理由はいくつもあると考えられます。この頃の社会は、少し親しみを持って話そうとすると、ストーカーまがいの行動にまきこまれそうでならない。他人とはなるべく距離をおいて、事務的に、冷やかに、多くを語らずに、まさに、さり気なくしておくべきである。この世は怖ろしいのだと考え、その通りに短絡的に動く人が多くなるのも仕方のないことかもしれません。相手の気持ちを察して、こちらに心を向わせるなどと考えない方がよろしいということになります。
先日も、ある若い母親が、子どもに話していました。「見知らぬ人に話しかけられたら、返事などしなくていいから、すぐに家へ帰ってくるのよ」と強い口調で教えていたのを聞きました。なんともかわいそうです。
私はこの頃、ことばにも生活習慣病があって、不健康なことばぐせに気がついていない人が増えていると思うのです。ここをブラッシングしておかないと口腔内と同じで、かなり重症になってからでは治癒もおそく、身のつらさを味わうことになります。

●何回も逢っているのに、話しにくい
●いつまでたっても打ち解けない
●何となく他人行儀でよそよそしい
●会話が表面的で、事務的で、肝要なことを話し出しにくい
●時に警戒心が先行するから、疑惑を持ちやすくなる

こういったイメージが続くのは話し相手としてイヤーな感じを拡大してしまいます。先述の若い母親の教育をうけた子どもが、そのまま成長したら、重症の「ことば生活習慣病」になることは目に見えています。

●挨拶もろくにできない
●返事をしない、しても、ウン、フン
●自分の心に不必要な壁をつくって融和しない。偏屈、へそまがり、自分勝手、そうとうな症状ばかりです。最終的には自閉症の症候群におちいってしまいかねません。

挨拶ぐらいと軽くみないこと

今年の夏の暑さは異常でした。顔を合わせれば「暑い!暑い」、テレビを入れると「記録的猛暑」ばかり、なんとか生活感があって心のゆとりを取り戻せるような表現はないものですかね。そこで先人の知恵を借りようと俳句歳時記(角川書店編)をひいてみました。暑さを質的にわけ、時期と合わせた表現はたいしたものです。

●炎昼(えんちゅう)真夏の灼けつく昼のこと。印象が強くなまなましい。
●三伏(さんぷく)陰陽道での分類。初伏、中伏、末伏といって酷い暑さの候を言う。
●炎ゆ(もゆ)日中の高温で、あらゆるものが炎えそうな表現。地球温暖化の現在の地球の暑さは、確実に「炎」の字がピッタリ。
●灼く(やく)真夏の太陽によって灼きつけられる激しさを言う。この語の使い方は砂灼くる、風灼くる、岩灼ける、そのうちに道が灼けて、どこかの工場が整備不全で火を吹くとなると、まさに炎熱地獄。
●大西日(おおにしび)西日というのは夏の日差しの中でも特に身にこたえます。一日中、灼けついているのに夕方にかけて更にギラギラと照りつけベトベトとしていらだたせます。昔から暑さは人の敵だったのです。

これらもクーラーをつけっぱなしの建物の中ではピンと来ないかもしれません。でも一歩外へ出ると、アスファルト舗道は熱したフライパン、夜中になっても都会の大気は冷却せず、ヒートアイランド現象。ビアホールのジョッキは3分で加熱するという具合、ほんとによく死なずにいたと思います。でも、いろいろな言い方があるものです。少しことばを磨いてみると食欲も出るかも知れません。ではひんやりするのを一句。どうぞお大事に。

しぐるるや 駅に西口東口 安住敦

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心にひびく話しことば
スタッフの品格が高まる
心にひびく話しことば

小六英介著
ヒョーロン・パブリッシャーズ

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