2016年文化的歯科医院がなぜ必要なのかを伝えていきたい

新年明けましておめでとうございます。
正月三が日は好天に恵まれましたが、なんだか目の前はもやもやした感じの歯科界です。

年末年始の休暇に入り、目を通すことなく山積みになっている業界誌を整理することが、ここ数年の習いになっています。子供の玩具整理同様に片付けの手は止まり、いつの間にか業界誌を読み入っています。ページをめくりながらこの10年余りの間、歯科医院の診療とサービスの質は格段に上がってきたと感じます。しかしその割には、歯科医院への生活者と国の評価は、一向に上がることがありませんでした。メディアに到っては常に歯科を批判の標的にしてきた10年でした。

この間を振り返るとCT、3D光学ミーリングマシーン、マイクロスコープなどに代表される医療機器と歯科材料の接着材や陶材が、歯科診療の質の底上げを先導してきました。つまり歯科理工学、大きな括りでいえば文明の利器によって歯科医院の質は向上してきたことになります。文明(歯科理工学)は、より速く・より精密に・より効率的に、歯科医師の手足に代わり良質な歯科医療をつくりあげてきたことになります。その反面、行きすぎた文明が人類を滅ぼすように、先行した歯科理工学によって、歯科医師は臨床においても経営サービスにおいても、あらゆる局面で物事を掘り下げて考えなくなり、医院文化が育たない10年間だったように思えます。

医院文化は文明(歯科理工学)とは正反対に位置して、より遅く・より深く・より非効率で、我慢や不便なものを乗り越えて成り立っています。だからこそ歯科医師は臨床力がつき、賢明になり心も豊かになり、良質な医療サービスを提供できるようになるのだと思います。こういった文化を感じることができる歯科医院が少なくなったことが、取りも直さず世間からの低評価に通じているのではないでしょうか。

そんな業界評価の中にあって、文明を取り入れながら揺るぎない文化も育ててきた医院もあります。先端の歯科医療を提供しながら、医療人としての考えや心構え、教養を深めるといった文化をしっかりと根付かせ、さらに後進の目標にもなっています。その代表格が酒田市の日吉歯科診療所と福岡市のつきやま歯科医院です。両医院は、単に職人的技術力を誇示したり、先端医療機によるサービス財をPRしたりすることなく、積み上げられたエビデンスと優秀な人材が医院文化を築いているために、生活者に留まらず同業者からもメディアからも評価されています。

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この両医院に関する仕事に、2015年から2016年にかけて多少なりとも携わらせていただいて、文化と文明のバランスの取れた医院を間近で見ることができ、文化的歯科医院の在り方を学び直す機会になりました。2016年は、この経験を多くの歯科医院に伝えていくことが、私たちの使命であり仕事の価値だと思っています。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。