商業施設と歯科医院経営

杉並区の顧問先コンサルティングが昼過ぎに終わり、駅に向かっていると雲間から薄日が漏れてきた。急遽、千葉郊外の開発地域のマーケティングに向かう。現地調査は、お天気次第の進捗になるので、梅雨時の晴れ間は特に貴重だ。予定外のため、電車で最寄りの駅まで行き、レンタカーを借りる。

1980年代終わりから90年代にかけて、大手ディベロパーから総合スーパーへの歯科医院への出店のオファーがあり、多くの歯科医院を紹介した。当時は商業施設としては、総合スーパーは先端をいった存在であった。しかし、20年あまり経過した現在、総合スーパーは衰退傾向にあり、現在はテナントミックス建屋とスーパー本体で構成するSCが全盛だ。調査地の千葉市北東部もSCと中規模スーパーの出店が目につく。高齢化社会になって、東京の都市圏が10キロ程度縮小して30キロになった現在、この地は旧都市圏の40キロとの中間に位置する微妙な商圏ではあるが、平日の昼間で商業施設の駐車場は30%程度埋まっている。まあまあイケル感触だ。

しかし都市圏の縮小が進む状況で、郊外出店による「立地独占」という戦略はいつまで続くかわからない。SCのマスマーケティングに相乗りする歯科開業も、その効力頼みでは立ち居かなくなる日は遠くはない。経済条件の高いSC内での歯科医院経営はどうして行けば良いのだろうか。答えは、既存患者の活性化に集約される。つまり、いかに既存患者との関係を強化し、自院医療サービスを繰り返し提供していけるかにかかっている。今後、商業施設内歯科医院経営は、①ブランド構築による認知度向上のため広告宣伝と②一度来院した患者に対して継続的かつ適切なアプローチを行い、自院医療サービスの継続的利用を働きかけていかなければならない。

現実、顧問先のSCのレジ通過数は減少傾向にあり、それに伴い医院の新患数も減少してきている。商業施設のマスマーケティングに頼った医院経営や焼き畑農業的な経営手法から脱却する時期が、高齢化社会とともに医院経営にも押し寄せて来ている。