審美歯科には象牙色

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ぶらり一人で出歩く時には、都心部やベイエリアにある外資系ホテルにはどうも足が向かない。クリスマスイルミネーションが煌めき出すこの時期は尚のことだ。オオクラの本館が閉館した今、立ち寄るホテルは、江戸川橋・椿山荘と神楽坂・アグネス、お茶の水・山の上ホテルと皇居の鬼門に偏っている。中でも山の上ホテルは、今では有名な『てんぷら近藤』店主の若かりし職人時代、一席分を揚げ終わる都度に油を床下の容器に流す姿を「もったいないな」と貧乏臭い了見で、カウンタ−越しに見ていた時分から通っている。

私のコンサバティブな嗜好は、歯科医院のインテリアにも一脈通じ、デザイナーズ歯科医院と称されるインテリアが、なんだか軽薄な感じがして、居ること数分で疲労感に襲われる。この手のインテリアは『商店建築』で見れば十分で、何回も通う気にはなれないのは、私だけではないだろう。定期管理型歯科医院は、避けるのが無難なインテリアに思う。

同様にゴージャスな煌めきのイルミネーションにも食傷気味で、山の上ホテルの暗闇を引き裂くようなイルミネーションの方が、格段に洒落て感じる。審美を標榜する歯科医院も真っ白なインテリアを信奉して、真っ白な歯を最上とするばかりでは、頭の中まで真っ白と勘ぐられても仕方ない気がする。デザインに余白、イルミネーションに暗闇が必要なように、日本人の審美歯科医なら、透写されるアイボリーの美しさに気付いて欲しい。外資系ホテルのようなゴージャスな歯科医院はもう充分な気がする、山の上ホテルのような文化の香りを感じる歯科医院の出現が待ち遠しい。