第11期ご挨拶

猛暑一転、到来したばかりの秋は一気に深まる気配、台風一過の高く澄み渡る空には、変わることなく物思う季節を感じます。皆様方におかれましてはお元気でご活躍のことと存じます。

さて、おかげさまで2018年8月度の決算を無事に終え、新たに第11期を迎えることができました。これも弊社を支援してくださるクライアント医院様、スポンサー企業様のお力添えがあってのことと感謝申し上げます。前期では「予防歯科と社会をつなげる」プラットフォームとしてコミュニケーション・ギアを開設して、GoogleとYahoo!の検索キーワード「予防歯科」で1位を達成することができました。今期はコミュニケーション・ギアの情報の正確性や充実度などに注力し、歯科医院様に限らず生活者の方から高い信頼と幅広い支持をいただき、予防歯科を求める社会の「オフィシャルサイト」に位置付けられるよう努力してまいります。このことは今期からの社会に対する弊社の「つとめ」と考えております。

昔の日本では、一人前の大人がしなければならないことは二つあった。「かせぎ」と「つとめ」。前者は言うまでもなく生計の維持だが、後者は世間ぜんたいに対する責務のようなもの。

二十年前、サハリンの山の中で、川の流れをじゃましている倒木を黙々と片づける男を見た。そこにあるべきものではない、というだけの理由で彼は力をふるっていた。
道にゴミはあるべきではない。そう思って家の前の道路を掃くことと、被災地に行ってがれきを片付ける事はつながっている。国境を越えて病者や負傷者の治療に赴く医師たちは、不運な人々を本来の姿に戻そうと力を尽くしている。

ここ何十年か、日本だけでなく世界全体が「かせぎ」に傾いた。そちらが行き詰ったら今は「つとめ」を取り戻すべき時ではないのか。

引用:池澤夏樹著『終りと始まり』より

上の文章は、作家の池澤夏樹さんのものです。思索の秋にふさわしく、私たちには意味深い内容です。「かせぎ」と「つとめ」のバランスを保つことは、誰しも難しいものです。それにしても平成年間で、歯科界はこのバランスを大きく崩してしまったように感じます。

「かせぎ」と「つとめ」のバランスを保つことが、一流の証ではないかと思います。私たちの業界を見渡すとそんな人はあまり見当たらなくなりました。それどころか、「かせぎ」に傾いた人を一流と担ぎ出す風潮さえも感じます。二流を担いでも三流四流にしかなれない愚に気がつかなければなりません。

誰もが一流にはなれませんが、一流の人を担ぎ一流に近づくことはできます。
「サハリンの山の中で木を片付ける男」に、次世代の歯科医師の生き方を感じます。歯科界は「つとめ」を取り戻し、一流の人材を社会に輩出しましょう。きっと、できるはずです。低迷する歯科界ですが、弊社は一流の歯科医師を全力で社会に繋げてまいります。朝ドラの中で秋風羽織も「どんなにひどい今日でも…夢を見るのは自由だ」と、言っていましたし。

今期もどうぞよろしくお願いいたします。

クレセル株式会社 代表取締役 伊藤日出男