心をつかむ1

歯科医院内のコミュニケーション

心をつかむ1

ことばというのは自分の思いどおりには伝わりにくいものです。誤解を生まないために表現法を考え直してみる必要があります。
表現法つまり話す力を磨くためには、自身の頭の中を改造しないといけません。コミュニケーションを上手に図るために柔らか頭で反省事項をあげてみるとよいのです。

コミュニケーションはお互いを大切に思うことが基点です。どうも医療に関して言えることは、「治療をしてやる。こちらの言うことをききなさい」の気が強く出てしまうので患者さんは嫌います。「知らしむべからず、寄らしむべし」の旧態依然とした心があるとこれからの業務は進展しません。

京都の有名な帯問屋さん、200年以上の歴史を保ち、御主人は社会的な地位も高く、話し方も実に的確です。いわゆる老舗中の老舗。ここの家訓に「先義而後利」というのがあります。
これは、「先ず世の中の人(お客様)の役に立てることは何かをその場その場でよく考えなさい。その途中でもうけようなどと考えてはいけない。世の中のためになれればもうけは自ずからついてくる」というのがあります。この戒めは、目先の利にとらわれると、全てを失うことにもなる。特に世の中の噂は知らぬふりをしていてはいけない。短絡的には商売は成り立たないというわけです。

どうするのかを次のように言っています。まず相手の話を心からじっくり聴きなさい。その時の心は、相手を大切に思うだけです。口をはさむのではなく、相手が話しやすいようにうながしていくのです。こちらから意見を申し上げる時には、自分ならどう説明してもらえれば納得するだろうかを思い浮かべなさい。ことばひとつひとつに手を抜いてはいけません。人間関係はそこから良化していくのです。

私は歯科医療に携わる方々に、聖人君子たれとは申しません。しかし医業も商売ですから患者さんが居なければ成り立たないのも事実です。自分の話し方や考え方の反省事項として何があげられるかです。

手抜きはないか

人間は頭でわかっていても実行に移さないことが多いのです。次のような気が先行しますと他人の評価はガタ落ちです。

聞き手にまわっている時

早とちり、勘ちがい、思い込み、決め私手つけ、誤認、誤解。無反応、無返事。これらは、無精、手抜き、いいかげん、人を人とも思わない失礼な人と、際限なくマイナスのイメージが拡大していきます。

話し手にまわっている時

挨拶が不適当かまったくしない。独りよがり、一方的、権威ぶった言い方、ことばづかいが不明晰で不愉快。説明不十分、言い放し。省略が下手でわかりにくい。
こうした点が重って表現されると相手を軽視しているというイメージが生まれ、心がはなれていきます。

人間はどうしても楽なほうへと動きがちです。無精、ものぐさ癖のある方は注意してください。患者さんの評価はシビアなのです。油断禁物なのです。従ってどう話すかも大切ですが、どう聞かれるだろうかという点をきちんと考えるべきです。私の経験からも、概ね聞き手は「野次馬的存在」です。集中力がない。(歯科医に対して)警戒心と親近感の両方が現われ、否定的な言い方を嫌います。また、室内の音、手の温度、うがい水の温度に敏感。こだわり、偏見、思い込みが強い。ですから患部の手当ての途中でもよく観察しないと答がでません。患者さんのプライドを傷つけないように計らうことが最も大切なことです。よく聴き、よく観察することです。