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予防時代の歯科医師の価値とは何か(後編)
——技術職から、未来価値を設計する医療へ

前編では、日本の歯科医療が1990年代から長い時間をかけて歩んできた
“大御所の時代からエビデンスの時代へ”という地殻変動を振り返った。

しかし、この変化は単なる技術や考え方の転換にとどまらない。
もっと深いところで、歯科という職業の重心そのものが移動している。
その影響は「歯科医師の役割」にも、「歯科衛生士の立ち位置」にも、
そして「医院の経営構造」にも表れている。

後編では、その大きな流れを読み物として追いながら、
予防の時代における歯科医師の価値を、経営という視点から捉え直してみたい。

経営が「技術」ではなく「継続率」によって決まる時代へ

治療中心の時代。
歯科医師は、いわば“腕で勝負する技術者”だった。
卓越した技術があれば患者が集まり、
華のある症例を示せば評価が集まり、
それがそのまま医院のブランドとなった。

しかし、エビデンスという視点が医療の中心へと入り込んだとき、
この構図は静かに崩れていった。
医療の価値が、
「すごい技術を持つ誰かの手」にあるのではなく、
“どの患者にも一定の結果を返せるプロセス”に宿るようになったからだ。

その瞬間、
歯科医師の価値は“技術者としての価値”から
“医療システムを設計する価値”へと移動していった。
この変化は、職能の変化だけではない。
医院という組織の価値構造そのものを変えてしまうほど大きいものだった。

技術がすべてだと思われていた時代の終わり

予防型医療が広がりはじめると、
歯科医院の経営は治療件数に依存する仕組みから解放されていった。

安定した継続率が生まれ、
予約が乱れず、キャッシュフローが予測できるようになり、
修復・補綴の自由診療に頼らなくても医院が育つ。

それまで、技術力が“医院の柱”だと信じられていた世界が、
継続率こそ医院の安定性を決める最重要の指標へと変わったのだ。

継続率が高ければ、
医院は時間とともに勝手に強くなる。
継続率が低ければ、
どんな技術があっても組織は疲弊する。

この構造に気づいたとき、
歯科医師の価値はもはや“治療をすること”だけでは説明できない。

患者が継続する医療をどう設計するか
という、より大きな視点が必要になる。
そして、この構造が明確になったことで、
もう一つの劇的な逆転が起こった。

歯科衛生士の価値が「補助者」から「医療の中心」へと転じた理由

1990年代まで、歯科衛生士の立場は低かった。
治療中心の歯科医療では、
衛生士の仕事は“治療の補助”とされることが多く、
その価値は十分に評価されていなかった。
いわば、暗黒時代である。

だが、時代は劇的に変わった。
歯科衛生士が歯科医療の主役へと押し上げられる決定的な要因が、
二つあったからだ。

① 歯科医師の管理下で、患者と直接「予防管理」を担えるようになったこと
検査、説明、リスク評価、行動変容支援。
患者が医院と向き合う時間の多くは、
医師ではなく衛生士によって支えられるようになった。
継続率が経営の核心になる時代に、
衛生士の存在は“医院の未来価値”そのものとなった。

② 歯肉縁下のスケーリング(SRP)が衛生士の専門業務として認められたこと
これは単なる作業範囲の拡大ではない。
歯周治療における核心部分を担うということは、
衛生士が“患者の歯の未来を直接左右する専門職”になったのだ。

この逆転を可能にした「臨床と思想」の中心に熊谷崇先生がいた

この二つの変化を、
理論と臨床の両面からつなぎ合わせたのが
熊谷崇先生である。

MTM(メディカルトリートメントモデル)は、
予防を「やさしいこと」「意識の話」としてではなく、
科学的根拠にもとづく“医療プロセス”として体系化した。

この枠組みの中で、
歯科衛生士は治療の補助者ではなく、
予防医療の担当者として存在することが前提となった。

こうして、
補助者だった衛生士が、
予防医療の主役へと劇的に価値を逆転させたのだ。

衛生士の定着率が“医院の未来価値”を決める時代

歴史を踏まえると、
現代の歯科医院の経営構造は非常に明確である。

衛生士の定着率は、そのまま医院の未来価値である。
・衛生士の力量が継続率を生む
・継続率が医院の安定性をつくる
・安定性が医院の進化を可能にする
歯科医師は治療の専門家であると同時に、
チームを育て、医療を設計する“組織の責任者”へと役割が広がっている。

医院の価値は、
技術力ではなく“仕組みの質”によって決まる時代に入った。
これは、歯科医療が
歯科技工中心の職能から、医療としての機能集団へと進化した証である。

価値の転換点と、これからの医療をどう選ぶか

歯科技工中心の時代、
治療中心の時代、
そして予防管理が主役となった現在の時代。
歯科医療は長い時間をかけて、
患者の健康価値に向かう方向へと確実に進化してきた。

そして今、
この転換点をどう読み解き、
自分の医院にどう活かすかは、
一人ひとりの歯科医師とチームに委ねられている。

その背景を整理し、
次の時代を選び取るための材料として提示することに、
今回の後編の意義がある。

大御所が姿を消した理由(前編)

大御所が姿を消した理由(前編)
——エビデンスの時代が変えた“権威のあり方”

歯科医療の流れを振り返ると、1990年代から2020年代へと続く約30年は、
日本の歯科界にとって静かだが大きな価値観の転換が起きた時代だった。
その変化は劇的ではなく、むしろ水面下でゆっくりと、
しかし確実に医療の基盤そのものを書き換えていった。

今回のコラムでは、かつて歯科界を照らした“大御所”たちが
なぜ姿を消していったのか、その背景を歴史的な視点で整理してみたい。

大御所の時代——“語る人”が価値になった頃

1990年代、日本の歯科界には確かに“大御所”と呼ばれる存在がいた。
銀座・赤坂・青山といった場所に診療室を構え、
それぞれが勉強会を主催し、
アクロバティックで華のある症例を披露し、
受講者たちはその技術に魅了された。

当時の価値観は非常にわかりやすかった。
誰が言ったかが医療の価値を決めていた。

  • あの先生の言うことなら正しい
  • あの勉強会が推奨する手技なら間違いない
  • この治療を習得すればキャリアが開ける

治療の中心は歯冠修復と欠損補綴であり、
華やかで劇的な症例こそが“実績”となる時代である。

しかし、この時代の頂点にいた人々の活躍を横目に、
歯科医療の世界は静かに動き始めていた。

予防という新しい視点が日本に根づき始めた

1988年、スウェーデンからアクセルソン博士が来日した。
その講演は、日本の歯科界に初めて体系的な“予防”の概念をもたらした。
当時はまだ、一部の熱心な臨床家が反応しただけだったが、
歯科医療の新しい方向性を示す大きな一歩だった。

続く1990年代、
熊谷崇先生を中心にヘルスケア歯科研究会が誕生し、
予防歯科が臨床の現場に少しずつ浸透していく。

ただしこの時期は、治療中心と予防中心の考え方が混じり合う
汽水域(きすいいき)のような時代だった。
どちらが主流になるのか、歯科医師たちは迷いながら道を探っていた。

エビデンスが「カリスマの言葉」を越えていった瞬間

予防が臨床に根づき始めた頃、
歯科医療の判断基準は大きく変わり始めた。

カリエスやペリオの学びが
“理論”ではなく“臨床で使うもの”となり、治療の方向性を決める際に
もっとも重視されるのは次第にこうなっていった。

“誰が言ったか”ではなく“何が証明されているか”
つまり、

  • カリスマの言葉 → 参考情報
  • 科学的根拠 → 判断基準

という構造の逆転が起こったのである。
この価値観の変化こそが、大御所たちが静かに姿を消し始めた最大の要因だ。

彼らが間違っていたのではない。
ただ、医療の評価の軸そのものが変わったのである。

「俺の症例が証拠だ」という時代の終焉

比較検証が難しい時代には、華麗な症例写真や特異なアプローチが
そのまま価値として成立した。

しかしエビデンスベースが広がると、医療の評価軸は完全に変わった。

  • 成功率
  • 再治療率
  • 長期アウトカム
  • 患者のQOL
  • 残存歯数

これらが数値として可視化されるようになり、
“うまくいっている気がする”という曖昧さは徐々に排除されていった。

そしてこの変化は、大御所の時代が終わったというよりも、
歯科が「歯冠修復・欠損補綴を中心とする技術職の時代」から脱皮し、
科学的根拠と健康維持を軸に据える“医療としての歯科”へ進化したことを
何よりも雄弁に示している。

歯科技工的な職人気質から、医学的な再現性を求める時代へ。
これは歯科の歴史における大きな転換点だった。

ブランド医療から「再現性の医療」へ

大御所の強さは、属人的な技術の高さにあった。

  • この先生にしかできない
  • この医院だけのノウハウがある

しかし、EBP(Evidence Based Practice)の普及は
価値の中心を大きく変えた。

誰がやっても一定の成果が出る医療。
手品のような技術ではなく、
データとプロセスに裏づけされた医療が求められるようになった。

こうして、
ブランド医療から“再現性を持つ医療”へと価値が移っていったのである。

この変化をどう読み解くか

1990年代から続いた価値観の転換は、
日本の歯科医療にとって大きな意味を持つ変化だった。

かつて大御所が主役だった時代から、
科学と再現性を基盤とする医療へと流れが移り、歯科界は静かだが確かな前進を遂げてきた。

そして今、この転換点をどう読み解くかは、
これからの歯科医療を選び取る一人ひとりに委ねられている。

その背景を整理し、
次の時代へ進むための判断材料として提示することに、今回のコラムの意義がある。

仰木彬 × 予防歯科

仰木彬 × 予防歯科
——異質を活かす力が、日本の歯科を変える

日本プロ野球(NPB)の長い歴史の中で、
最もイノベーターであった人物は、間違いなく仰木彬です。

0→1 をつくり、日本人選手の未来を切り開いた「開拓者」——野茂英雄。
その異質さを“才能へと変換する力”を持ち、
イチロー、大谷翔平、山本由伸といった“世界を変える個性”を咲かせた「育てるイノベーター」——仰木彬。
日本人メジャーリーガーの系譜をたどると、
必ずこの二人の哲学の交点に行き着きます。

野茂は「前例を壊した人」
仰木は「異質を活かす仕組みを作った人」

この二つが揃わなければ、
いま私たちが見ている日本野球の黄金期は存在しなかったでしょう。

仰木は「型にはめる」指導を嫌い、
選手のバックグラウンド・性格・価値観のすべてを肯定し、
その人だけが持つ“最高の伸びしろ”に光を当てました。
彼は異質を矯正するのではなく、
“異質のまま強みに転化させる”日本唯一の指揮官でした。

 

歯科医療は、いまだ“仰木彬的イノベーション”の途上にある

一方、日本の歯科医療はどうでしょうか。
制度、保険点数、旧来の診療フロー——
こうした枠組みが強く働くなかで、
患者一人ひとりの背景や生活ストーリーが
診療に十分反映されないまま進んでいく現場は、いまなお少なくありません。

しかし予防歯科、とくに MTM(メディカルトリートメントモデル)は本来、
“個の違いを読み解き、その人固有のストーリーを治療計画に組み込む診療体系”です。

これは仰木彬が選手に向き合った姿勢と、驚くほど重なります。

 

仰木彬の“異質を見る眼”は、なぜ歯科に必要なのか

仰木は、他人が欠点と見た部分を、
唯一無二の武器として育てました。

・二軍で凡庸と見られた選手に“別の角度の価値”を見出す
・年齢・経験に縛られず、旬を逃さない起用をする
・前例や常識ではなく「本人らしさ」を尊重する

これはそのまま、
・リスク評価型予防歯科
・個別化したメインテナンス
・ライフステージごとの疾病予防
という現代歯科の核心と一致します。

患者ごとに
生活リズムも、家庭環境も、性格も、口腔内の条件も違う。
その違いを“異質”とみなして切り捨てるのではなく、
“その人の物語”として尊重する姿勢がなければ、予防歯科は根づきません。

 

米国スポーツの包容力に学ぶ

——ドジャースの強さは「異質の共存」にある

ロサンゼルス・ドジャースのクラブ文化は、
トランプ的排他性とは対照的に、
宗教・肌の色・家族観・価値観の違いを“戦力化”できる大きな器を持っています。

多様な背景を持つ選手が同じロッカーに集い、
互いの違いを尊重しながら競い合う文化。
この包容力こそ、圧倒的な強さを支える要因です。

歯科医療も同じです。

・正社員の衛生士
・子育て中のパート衛生士
・若手のドクター
・ベテランの院長
・時間のないビジネスパーソン
・不安が強い高齢者
・学校や部活で忙しい子ども

こうした背景の違いを尊重し、
一人ひとりに合わせたコミュニケーションと予防プランを設計する。
それができて初めて、予防歯科は文化として根づきます。

 

仰木彬がいたから、大谷翔平がある

“異質が異質のまま世界で輝く”構造をつくった人。

仰木彬は「異質」を否定しなかった。
むしろそこに未来を見ました。

もし仰木がいなければ、
大谷翔平の二刀流は現実として開花しなかったかもしれません。
イチローの精密な打撃も、山本由伸の世界基準の投球も、
ここまで鮮烈には響かなかったでしょう。

仰木は、
異質を異質のまま認め、
光が当たる位置に配置し、
強みに転換させる環境をつくった人物です。

 

歯科業界も「仰木彬的アップデート」を

これからの歯科のスタンダードは、
“画一的な治療を正しくこなす医院”ではなく、
“異なる個を理解し、伸ばす医院”です。

患者ごとに違うリスク・違う生活・違う価値観を丁寧に読み込み、
「その人だけの予防計画」を設計できる医院こそ、
予防歯科時代の中心になっていきます。

仰木彬が野球界に残したものは、
スポーツだけの財産ではありません。

医療、人材育成、組織づくり——
あらゆる分野に応用できる普遍的な哲学です。

今、予防歯科にこそ必要なのは、
・野茂英雄が切り開いた 0→1 の精神
・仰木彬が体現した 異質を活かす眼力

この二つがそろったとき、
日本の歯科は静かに、しかし確実に変わり始めると信じています。

予防歯科を “国家戦略” に、疾病保険の限界と新しい公費モデル

高市総理の所信表明演説で掲げられた「健康医療安全保障」と「攻めの予防医療」の徹底は、長らく全身の健康の入り口として重要性が叫ばれてきた歯科医療、特に予防歯科にとって、大きな追い風となる可能性があります。

しかし、この政策を真に国民の健康増進に結びつけるためには、現在の制度が抱える二つの根深い課題、すなわち「財源制度設計の根本的な矛盾」と「医療の質の担保」から目を背けることはできません。

  1. 疾病保険の限界と「公費インセンティブ」への転換

現在の日本の健康保険制度は、基本的に「疾病保険」、つまり病気になった際のリスクを分散し、治療費を給付する仕組みです。この構造的な限界があるため、「予防」という未病への働きかけに対し保険給付を行うこと自体が、制度の根幹に矛盾を生じさせています。

予防に保険財源を回せば、本来の目的である疾病治療に必要な財源を圧迫し、制度の持続可能性を損ないかねません。私たちはこの矛盾を回避し、国民の主体的な健康行動を促す制度設計が必要です。

そこで注目されるのが、高市総理も言及した「給付付き税額控除」など、公費(税金)を基盤としたインセンティブの活用です。

自ら予防歯科を受診し、健康に投資した国民に対し、その費用の一部を税から還元(控除・給付)することで、「自立した国民」の予防行動を支援します。
たとえば、年2回以上のメンテナンス受診や唾液検査などの科学的リスク評価を実施した者に対して、一定額の控除を設ける、といった制度設計が考えられます。

これは、保険という「治療ありき」の枠組みから脱却し、「健康への主体的な投資」を国が評価し、促すという、より先進的な政策転換を意味します。
予防の財源を保険料から公費へと分離することで、疾病保険の限界を突破しつつ  “攻めの予防医療” を現実の仕組みとして実装できるでしょう。

  1. 質の低い医療への「バラマキ」の停止と専門性の評価

現在、歯周病治療の安定期治療(SPT)に対する保険給付の減額が見込まれるなど、財源の逼迫が顕在化しています。しかし本質的な問題は、医療の「質」が担保されていない治療にまで、一律に給付が行き届いていることにあります。

学会関係者の非公式な見解として、「基本的な歯周病治療ができる歯科医院は全体の20%程度」という指摘もあるように、質の低い医療機関にまでSPTなどの保険点数を“バラまく”ことは、効果のない治療に公的財源を投じることを意味します。

それは、患者の健康を損なうだけでなく、真に知見と技術を持つ医療機関の経営努力を評価しないことにもつながります。「健康医療安全保障」を担保するためには、予防医療の質の平準化が不可欠です。

そのために、以下の2つの改革が求められます。

(1)施設基準の厳格化
SPTなど予防効果の高い保険診療行為については、実施できる歯科医院に専門医・認定医の在籍や研修実績など、より厳格な施設基準を設けるべきです。
単なる届け出制ではなく、研修・実績・データ提出を条件とした「資格制限型基準」として運用すれば、実質的な質保証が可能になります。

(2)データに基づく公的評価と第三者監査の導入
電子カルテやデータヘルスを活用し、実施された予防行為が実際に患者の健康改善に寄与したかを客観的に評価することが必要です。

さらに、学会や公的認証機構による第三者評価を制度化し、診療報酬と連動する形で定期的に監査することで、医療の質を可視化し、国民が信頼できる医療環境を整備できます。

効果の高い医療機関を診療報酬上で優遇する仕組みを導入すれば、
「数」ではなく「質」で報われる健全な競争が生まれ、結果として国民全体の健康増進につながります。

  1. 新しい「健康医療安全保障」のかたち

保険財源は、「誰に」給付するか、つまり自立した国民に、
そして「どこに」給付するか、つまり質の高い医療機関に、
この2つの軸を明確にすることで、はじめて真に国民の命と健康を守る「安全保障」となり得ます。

予防歯科は、単に病気を防ぐための手段ではありません。
それは、国民一人ひとりが「自分の健康をデザインする力」を取り戻すための社会的仕組みです。

保険から公費への転換、そして質の高い医療への再配分、この制度改革は、
国民の主体的な健康づくりを支え、未来世代の医療費を抑制する“国家戦略としての予防歯科”を築く第一歩となるでしょう。

編集後記的補足
この提言は、「制度改革」と「臨床品質」を両輪として捉えることを目的としています。
予防歯科の真価は、医療費抑制ではなく“人が健康に生きる時間の最大化”にあります。
その価値を支える制度こそが、次代の日本医療の土台になると考えます。

参考:高市総理所信表明:健康医療安全保障

国民の命と健康を守る事は重要な安全保障です。

人口減少・少子高齢化を乗り切るためには、社会保障制度における給付と負担のあり方について、国民的議論が必要です。超党派勝つ有識者も交えた国民会議を設置し、給付付き税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の一体改革について議論して参ります。野党の皆様にもご参加いただき、共に議論を進めて参りましょう。

これまでの正当感合意も踏まえ、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しや、電子カルテを含む医療機関の電子化、データヘルス等を通じた効率的で質の高い医療の実現等について、迅速に検討を進めます。

高齢化に対応した医療体制の再構築も必要です。入院だけではなく、外来・在宅医療や介護との連携を含む新しい地域医療構想を策定するとともに、地域での競技を促します。加えて、医師の偏在是正に向けた総合的な対策を講じます。合わせて、新たな地域医療構想に向けた病床の適正化を進めます。

こうした社会保障制度改革を進めていく中で、現役世代の保険料負担を抑えます。当面の対応が急がれるテーマについては、早急に議論を進めます。

また、「攻めの予防医療」を徹底し、健康寿命の延伸を図り、皆が元気に活躍し、社会保障の担い手となっていただけるように取り組みます。特に、生差別に由来した健康課題への対応を加速します。私は長年、女性の生涯にわたる健康の課題に取り組んで参りましたが、「女性の健康総合センター」が設立されました。本センターを司令塔に、女性特有の疾患について、診療書店の整備や研究、人材育成等に取り組むなど、その成果を全国に広げて参ります。

ビートルズのコピーバンドを見たことがあるだろうか?

古いメモ帳にあったこの問いは、現代の歯科業界のあり方を考える上で、深く示唆に富む視点を与えてくれる。

ビートルズには数えきれないほどのコピーバンドが存在する。彼らはオリジナルへの深い敬意を前提に活動しており、ファンもその姿勢を理解している。演奏技術や解釈は批判されても、存在そのものは肯定され続ける。なぜなら、その活動の根底に「ビートルズを愛している」という揺るぎない前提があるからだ。

では、もしコピーバンドが「曲は悪くないが、ジョンやポールはたいしたことはない」と言い出したらどうだろう。創作の源泉に依存しながら、その源泉を切り捨てるという倒錯が白日の下にさらされた刹那、ファンは幻滅し、静かに去っていくはずだ。

この構図は、現代の歯科業界にも重なる。

特定の臨床モデルを自院で採用し、患者に利益をもたらす限り、それは歓迎されるべきだ。しかし、そのモデルを生んだ哲学を語れぬまま、あたかも自らの教えであるかのようにセミナーで広めるのは、節度を欠いた振る舞いと言わざるを得ない。その核心を生んだ哲学を語れない者に残るのは、空虚な模倣の響きにすぎない。

さらに一線を越えるのは、模倣でありながら「自分こそ元祖だ」と振る舞うことである。それは文化的正当性を巧妙にすり替える、看過できない行為にほかならない。短期的には喝采を集めるかもしれない。しかし、長期的には信用を失い、本質を理解する人々は必ず離れていく。文化的な正当性は模倣や虚飾によって築かれるものではなく、根底にある哲学と、その積み重ねからしか生まれないからだ。

真正の価値は、模倣や小手先の差別化からは決して生まれない。原点を築いた人への敬意と、理不尽なまでの追従、そしてそこから発展させる真の革新によってのみ、長期的な評価は確立される。

メディカルトリートメントモデルの革新性を本当に目指すなら、ビートルズの「Tomorrow Never Knows」がそうであったように、既存の枠を突き破る創造性が必要だ。

予防歯科の歴史的象徴を担うのなら、「A Day in the Life」のように時代を映し出す表現力が求められる。
――それでも君は歌えるのだろうか?

言葉が変える健康観

言葉が変える健康観
――「クリーニング」から「SPT」、そしてメインテナンスへ

哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは『論理哲学論考』(1921年)の中で、こう述べました。

「世界の限界は言語の限界である」。

言葉にできないことは、存在していても認識されず、思考の外に追いやられてしまいます。
この命題を歯科医療に重ねると、患者が「クリーニング」という言葉しか持たなければ、その健康観は“お掃除”レベルに留まってしまう、ということになります。

2000年代初頭──「噛み砕き言葉」が必要とされた時代

2000年前後、日本で「予防歯科」診療の軸としてを掲げる医院はまだ少数派でした。
むし歯や歯周病は「発症してから治すもの」と捉えられ、定期通院やメインテナンスは文化として根づいていませんでした。

この状況で予防歯科を広めるためには、専門用語を避け、誰にでもわかる表現に置き換えることが不可欠でした。

「プラーク=歯垢」
「カリエス=むし歯」
「ペリオ=歯周病」

いかにも漢字による当て字のような翻訳でしたが、当時は普及のために必要な工夫であり、実際に患者さんへの理解を助け、医院経営の面でも有効だったのです。

「クリーニング」という言葉の影響

一方で、「わかりやすさ」を優先した結果、誤って浸透してしまった表現もあります。
その代表例が「クリーニング」です。

「定期的にクリーニングをしましょう」と伝えれば患者さんには響きやすい。
しかし、それは本来の医療行為を矮小化する表現ともいえます。

実際には、保険で算定できる SPT(Supportive Periodontal Therapy=歯周病安定期治療) は、単なる“お掃除”ではなく、歯周病の再発を防ぐための医療的プログラムです。

  • プラークコントロールの評価
  • 歯周組織の再評価
  • リスク因子の確認(喫煙・生活習慣など)
  • 将来予測の説明と情報提供

こうした一連のプロセスを含んでこそ、SPTは意味を持ちます。
クリーニングという言葉の浸透力が強く、あまりにも包括的に使われすぎたために、その医療的価値は患者の健康観から抜け落ちてしまうのです。

SPTという仕組みの理解

SPTはアメリカで体系化された考え方を、日本の保険制度に合わせて導入したものです。
もちろん制度の仕組みや背景には違いがありますが、ここで重要なのは優劣を比べることではありません。

大切なのは、どの仕組みであってもSPTが「継続的な管理と情報提供」を意味するという事実を、患者さんと正しく共有することです。そのために私たちができることは、「SPT」「リスク評価」「メインテナンス」といった言葉をきちんと使い、患者さんにも理解してもらうこと。これこそが、健康観を広げる第一歩になります。

目指すべき方向──メインテナンス型歯科医療と患者の自己決定

地域性や患者さんの経済状況によっては、自由診療だけで理想を追求することが難しいケースも少なくありません。
その現実を踏まえると、SPTという保険算定の枠組みは、予防型歯科医療を社会に広げる上で大きな役割を果たしてきたと言えます。

しかし、歯科医師という専門家にとって、SPTを“最終地点”と捉えるのではなく、その先にあるメインテナンスを見据える姿勢が大切だと思います。
保険診療を基盤として大切にしながらも、患者に「違いを感じさせる」メインテナンスを生涯にわたって提供していくことが求められています。そしてそれは、自由主義経済や民主主義という社会の枠組みの中で、患者の自己決定を支え、選択の幅を広げるための営みでもあるのです。

それこそが、歯科医師の責任であり、歯科医療の未来を拓く道だと考えます。

  • 再発防止だけでなく、生活習慣や全身の健康まで含めた包括的な支援
  • 患者とともに「維持・増進」を目指す長期的な視点
  • そして、患者自身が専門用語を理解し、自分の口腔状態を言葉で語れるようになること

患者さんが「クリーニング」という表現だけを知っている段階から、「SPT」や「メインテナンス」を語れる段階へ進むとき、その人の健康観は飛躍的に広がります。
そして医院と患者の関係性も、より強固なものとなるでしょう。
その言葉の共有こそが、予防型歯科医療を次のステージへ導く鍵になるのです。

ウィトゲンシュタインの命題を借りれば、

「患者が語れる言葉の数だけ、その人の健康の可能性も広がる」。

かつては「クリーニング」という言葉で予防歯科を広めた時代がありました。
しかし、予防歯科が成熟段階にある今こそ、次に必要なのは 正しい言葉を共有し、SPTを超えて真のメインテナンスへ移行することです。

――「クリーニング」から「SPT」、そして「メインテナンス」へ。
その言葉の進化こそが、これからの予防歯科を支える礎となるのです。

ヴィヴィアンとフロスの話

ヴィヴィアンとフロスの話

冷房の効いた部屋で、ふと涼しげな何かに触れたくなり、久しぶりに映画『プリティ・ウーマン』を観返していました。あの1990年のロマンティック・コメディです。

ジュリア・ロバーツ演じるヴィヴィアンが、初めてエドワード(リチャード・ギア)と過ごす夜のこと。ホテルのバスルームで彼女が取り出したのは、小さな箱。彼は一瞬、ドラッグか何かだと疑います。けれど、その中身は──白く細いデンタルフロス。

派手で軽薄にも見える彼女が、静かに歯のケアを始めるその姿に、私はハッとさせられました。たった一本の白い糸が、彼女の“内なる清潔さ”と“自分を大切にする知性”を語りはじめる。

このシーンが示すのは、まさにアメリカという国において予防歯科が「文化」として生きているという事実です。

アメリカでは、ジョンソン&ジョンソン社がフロスの特許を取得したのが1898年。
『プリティ・ウーマン』が公開された1990年には、すでにフロスは予防歯科ツールではなく、生活様式の一部として、自己管理や清潔感を表す“文化的なツール”になっていました。

特に上流階級や中産階級では、フロスを使うことは「知的で自立した大人のマナー」。
映画の中でも、それはセリフで説明されることなく、自然な行為として描かれています。

一方で、日本ではようやく2020年代に入り、「歯間清掃」や「定期的な予防」が制度や常識として広まりつつある段階です。歯科衛生士が、患者さんがフロスを自分から使っているのを見て驚き、感心する──そんな光景が今も珍しくないという現実。

つまり、予防歯科という考え方そのものに、100年近い文化的ギャップがある。

そしてふと、こんなふうに思います。あらためて、「予防歯科って、やっぱりクールだな」と。

……この暑さにくじけそうになる日々のなかで、
たった一本の白い糸から世界が広がっていく──それだけで、少し背筋が伸びる気がしませんか?

私も、コールガールからフロスを習っていれば、きっとうまく使えていたような気がします。

どうぞ皆さまも、お身体を大切に。
予防歯科という“静かな文化”の担い手としての誇りとともに、健やかな夏をお過ごしください

なぜ“横分けの男たち”は歯科業界を制覇するのか?

なぜ“横分けの男たち”は歯科業界を制覇するのか?

──顔面広報・ゼロサム経営・昭和の風が吹いている

幹線道路を車で走っていたら、突如視界に飛び込んでくる、黄色やピンクの背景と、眼鏡をかけたおじさんのドアップ。「インプラント」と大書されたあの看板を、一度は目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

また、スマートフォンで歯科医院を検索したとき、開いた瞬間に現れる「涼しげな目線でこちらを見るドクターの大きな顔写真」に、少し驚いた経験がある人もいるかもしれません。

──そう、それが、

  • 幹線道路沿いに何百枚もの看板を掲げることで知られる歯科院長、そして
  • 歯科界の教育メディアを運営し、Web上で強い存在感を放つドクター。

この2人に共通するのは、なんといっても横分けヘア、顔出し、そして「俺にまかせろ」感。
今どき珍しい“昭和テイスト”全開の自己プロデュースですが、これが意外と効いている。

思い返せば昭和の時代、日本中には“顔で語る広告”があふれていました。大村崑さんのオロナミンC、都蝶々さんのオロナイン軟膏──いずれも、表情ひとつで「元気」「安心」「信頼」といったメッセージを伝える顔面広告の代表格です。

こうした文化の延長線上に、現在の“横分け+顔出し戦略”も位置づけられるのかもしれません。そして、笑ってしまいそうになりつつも、その姿勢にはある種の「覚悟」と「戦略」が透けて見えるのです。


横分けとは、思想である

現在のビジネスヘアは、マッシュ、センター分け、オールバックなど多様ですが、看板戦略で知られるあの院長も、Web発信で知られるドクターも、一貫して横分けです。しかも、前髪はしっかり流して少し立ち上げ気味。まるで“昭和の責任者”のよう。

この髪型には、たんなる懐古趣味ではないメッセージが込められています。

「俺がやる」「俺が責任を持つ」──そう言わんばかりの潔さと存在感。

医療者にとって、「信頼される」というのは何よりの武器です。
そして、患者が求めているのは「正確な技術」と同じくらいの「安心できる感じ」。
横分けとは、その“安心”を提供する、最古にして最強のビジュアル戦略なのかもしれません。


ゼロサム戦場では、“顔”が武器になる

看板で存在を訴える院長が掲げるのは、街中に広がる何百枚もの看板。
一方、Webを駆使するドクターが掲げるのは、画面いっぱいに広がる「顔」。
この“顔面広報”は、特にインプラント・審美・矯正といった自由診療の分野で強力に機能します。これらは価格競争・技術比較・実績の見せ合い──つまりゼロサムな戦い。
誰かが患者を得れば、誰かが失う。そんな世界では、「印象に残った者」が圧倒的に有利です。

そこで彼らは、言葉ではなく顔でこう語るのです。

「まずは、俺を覚えろ」
「次に、俺を信じろ」

ここに、ゼロサム戦略としての“顔出し+横分け”の説得力が成立します。


プラスサムの時代は、すぐそこにある

とはいえ、時代は確実に変わりつつあります。

2040年には、すべての団塊世代が後期高齢者となり、人口減少・高齢化・通院困難といった社会課題が加速します。これまでのように「治療の椅子を取り合う」ゼロサム型の市場には限界があるのです。

そこで注目されるのが、予防・歯周病治療・訪問歯科といった、“患者を育て・支える”プラスサムな分野。

  • 予防に取り組めば、患者は健康になり、医院は信頼され、社会保険財政も軽くなる。
  • 歯周病管理が進めば、全身の健康も改善し、QOLが向上する。
  • 訪問歯科を行えば、「通えなくなった瞬間に受療を失う」という構造に風穴があく。

誰かを蹴落とすのではなく、みんなが少しずつ得をする構造。
これが、今後の歯科医院経営に求められる“プラスサム戦略”です。


顔面広報 × 中身のある医療=最強

看板で印象を残す院長も、Web上で存在感を放つドクターも、“派手な入口”を構えながらも中身は実にまじめです(たぶん)。

  • 初診時の説明が丁寧
  • 術後のフォローもしっかり
  • スタッフ教育にも力を入れている(らしい)

このバランスこそが、実は最も強い。

「顔面広報」は戦略、でも中身が伴ってこそ。

患者は最初、「派手さ」で興味を持ちます。
でも、最終的にリピートや紹介につながるのは地道な診療の誠実さです。

一人は“地上の看板王”、もう一人は“HTMLの中の看板王”。
しかしその根底には、共通する“覚悟”が見えるのです。


あなたの医院は、どこに向かっているか?

このブログは、単に「目立てばいい」と言いたいのではありません。
“顔で語る”スタイルは、戦略として非常に優れているということ。
そして、それを真似るかどうかよりも大切なのは──

  • 自院の強みをどこに置くか
  • ゼロサムで戦うか、プラスサムで育てるか
  • そして、その覚悟をどう伝えるか

という「設計」の部分なのです。

もしあなたの医院が、「何を出せば患者に伝わるか」を迷っているなら、
まずはそっと鏡を見てみてください。

オッと、その前髪、横に流れすぎてはいませんか?

※本ブログで紹介するスタイルは、特定の人物ではなく、歯科業界に見られる象徴的なマーケティング手法の一例です。

テスラとプリウス、そして予防歯科──医療の公共性を問いなおす

テスラとプリウス、そして予防歯科
─医療の公共性を問いなおす

クルマと医療の意外な共通点

今、環境問題の文脈でしばしば比較される2台のクルマがある。完全電気自動車のテスラと、ハイブリッド車の先駆けとして世界中に普及したプリウスだ。前者は「理想」、後者は「現実」として語られることが多い。

実はこの構図、歯科医療──とくに予防歯科の制度的位置づけに驚くほど似ている。

テスラのように理念を体現する“自費型の予防歯科”と、プリウスのように制度内での最適解として広がる“保険内SPT”。この二つの「選択肢」は、単なる技術やサービスの違いにとどまらず、制度設計や医療の公共性といった社会の根幹に関わる問題を含んでいる。

 

理想としてのテスラ=自費予防歯科

テスラは、走行時にCO₂を排出しない理想的なモビリティとして注目されている。一方で、その導入には高額な費用と充電インフラの整備が必要で、現状では限られた層にしか手が届かない。

自費型の予防歯科に代表されるように、高度な診査・支援・専門性を備えた理想的な医療モデルである。しかし多くは制度に支えられておらず、自由診療として患者の自己負担に委ねられている。理念としては美しいが、それだけでは社会全体を変えるには力不足である。

 

現実に根ざすプリウス=保険内SPT

プリウスは、従来のガソリン車の利便性と、モーターによる高い燃費性能を両立した「現実的なエコカー」として世界的に普及した。

保険制度下で行われるSPT(歯周病安定期治療)も同様に、歯科衛生士による定期的なケアを制度として保証し、「予防的支援」が国民皆保険のもとで一定の水準で提供されているという点で、極めて重要な存在である。ただし、点数主義や審査制度の下では、形式的・処置的な対応にとどまりやすく、生活支援や行動変容といった本来の目的にまで踏み込めないという課題もある。

 

予防の“商品化”と社会的共通資本という考え方

日本における予防歯科は、制度上は多くが自費診療として扱われている。しかし実際には、制度の理念から乖離した形で、保険診療の枠組みの中でも“予防らしきもの”が日常的に提供されている。これは、「受けるかどうかは本人次第」という形で提供され、「できる人だけが受ける医療」へと変質しつつある。結果として、医療の“商品化”が加速しているのが現状だ。

経済学者・宇沢弘文は、医療・教育・自然環境を「社会的共通資本」と捉え、それらを市場原理に委ねてはならないと述べている。

予防歯科もまた、経済格差に左右されることなく、社会全体で支えるべき共通財産として再定義されなければならない。そうでなければ、「健康は自己責任」という冷たい構造が固定化されてしまうだろう。

 

制度と倫理のあいだに立つ医療者たち

予防を制度に組み込むべきか。この問いには、肯定と警鐘の両方が必要だ。

制度化により公平性が担保され、予防の普及は進む。しかし、制度が点数主義に偏れば、「形式的な予防」や「算定のための支援」が横行するリスクもある。

求められているのは、制度に適応しつつ、その限界に目を向け、なお理念を貫こうとする実践者の姿である。点数の背後にある患者の人生を見つめ、制度の枠の中に“支援”の意味を取り戻す行為。それが、制度と倫理のはざまで生きる歯科医療者に求められる本質的な役割だ。

 

制度の中で理念を実践する人々へ

ここまで「テスラ=自費型予防」「プリウス=保険SPT」という構図で、理想と現実のズレを見てきた。しかし実際には、保険制度の中でもMTMを実践する歯科医院は存在する。保険制度が提供する診査・指導・SPTの枠組みを最大限に活用し、科学的リスク評価や生活支援と組み合わせた“支援としての診療”を実現している医療者たちがいる。

それでもなお、「支援」は「算定」に圧迫され、「対話」は「文書」に置き換わる。だからこそ重要なのは、制度の内にあっても理念を失わない医療者の倫理的態度である。

自由診療で理想を追求する人と、保険制度の中で支援を実践する人の間には、しばしば理念や手法の違いから対立が生まれる。しかし、彼らが目指している未来は、きっと同じ方向を向いている。

予防を“商品”ではなく“文化”とするためには、多様な実践を認め合う寛容さと、共通言語に基づく相互理解が必要だ。制度の中にいる人も、制度の外に立つ人も、「予防を社会の共通基盤にする」という志を共有することが、未来の医療を形づくる礎になるはずだ。

 

誰のための予防か

テスラの理想も、プリウスの現実も、それぞれに価値がある。だが、社会を本当に変えるのは、その「あいだ」に立ち、理念を実践する人々の選択だ。

予防を“選べる商品”から、“すべての人の共通資本”へ。

いま私たちは、医療の公共性をもう一度問いなおす地点に立っている。

「広告で患者を集める」から「信頼で患者が集まる」医院へ
〜後藤新平の思想に学ぶ、これからの歯科経営のあり方〜

最近、「Googleマップで上位表示!」「LPを変えれば自費率アップ!」「SNSから集患できます!」といった文句を掲げる歯科コンサルティングの広告をよく見かけます。

確かに、広告や情報発信は医院の存在を知ってもらうきっかけとして効果的です。医院経営においても、“知ってもらう努力”を怠ることはできません。

しかし、こう問い直す必要があります。
広告で“知ってもらった”あとに、“通い続けたい医院”になれているか?
この問いに真摯に向き合うとき、単なるテクニックを超えた、医院としての「軸」が求められます。

 

広告はきっかけ。では、「続く理由」は?

SNSや口コミで来院が増えても、初診で終わってしまったり、キャンセルが続いたり、紹介につながらなかったりする。
そんな悩みを持つ歯科医院は少なくありません。

その理由の多くは、「医院としての姿勢」が患者に伝わっていないことにあります。
一貫した理念が見えず、受けた診療と医院の雰囲気に“芯”が感じられない。だから、「何となく不安」「また行こうと思えない」という感覚が生まれてしまうのです。

 

後藤新平に学ぶ「理念経営」の原則――三決とは?

明治・大正期に活躍した後藤新平は、日本の衛生行政や都市復興を担った政治家であり、医師でもありました。彼が政策実行の原則として提唱した「三決(さんけつ)」は、医院経営にもそのまま応用できます。

▷ 一決:目的を決する

「この医院は何のために存在するのか?」
地域の子どもたちをむし歯ゼロで育てたい。高齢者が口から食べ続けられる支援をしたい。
この“存在理由”が言語化されているかどうかで、医院の軸は大きく変わります。

▷ 二決:政策を決する

目的を実現するための診療体制、運営方針、スタッフ教育を設計する。
たとえば、MTM(メディカルトリートメントモデル)や担当衛生士制の導入などがその一例です。

▷ 三決:財源を決する

その仕組みを継続するための経営体制を整える。
自費と保険のバランス、キャンセル対策、スタッフ給与の設計も含めた現実的な持続戦略が不可欠です。

 

長く通いたくなる医院には、必ず「人の三訣」がある

後藤新平が人生訓として残した「人の三訣(さんけつ)」もまた、歯科医院の組織文化を支える大切な指針です。

  1. 人の世話をしろ
  2. 人の世話になるな
  3. 報酬を求めるな

これらは医療者にとって、職業倫理の原点ともいえるものです。

・人の世話をしろ
 患者の人生を支える気持ちで診療にあたる

・人の世話になるな
 院長もスタッフも、学びを止めず、自律したチームである

・報酬を求めるな
 「ありがとう」が最大の報酬という気持ちで動く

この三訣が文化として根付いた医院では、広告がなくても患者が自然と集まります。
「ここに通いたい」「あの先生に診てもらいたい」「子どもを任せたい」――その信頼が、紹介や定着という“広告以上の力”を生むのです。

 

「本物の医院」には、発信力と理念の両方がある

広告やSNSは、きっかけにはなります。
しかし、「続く医院」「紹介される医院」には、それ以上の“理由”が必要です。

それは、理念を明確に言葉にし、それを日々の診療・接遇・教育・広報すべてに一貫して落とし込んでいるかどうかです。
理念が“外に向かって”発信されているだけでなく、“院内に向かって”共有されていることが、継続力と信頼につながります。

 

私たちが支援するのは「ブレない医院づくり」です

私たちは歯科医院の経営コンサルティングにおいて、「短期的な集患」や「見た目の数値」だけを追う支援は行っていません。

目指しているのは、以下のような医院づくりです

  • 院長の理念がスタッフ全員に共有されている
  • 患者からの信頼が口コミや紹介につながっている
  • 広告やSNSも“理念に基づく”発信として設計されている
  • 経営においても理念と現実のバランスが取れている

 

広告と理念の“両輪”で未来をつくる

「理念だけでは経営が成り立たない」
「広告だけでは信頼は得られない」

この両方が真実です。

だからこそ、私たちは理念を軸に、現実的な運営と発信を設計することを重視しています。

後藤新平が遺した「三決」と「三訣」は、まさにその道を照らす原理です。
医院を“本物”にするには、理念と行動、設計と継続、信頼と伝達。すべてが必要です。

そして本物の医院には、広告以上の力が育ち始めます。
それは「この医院に出会えてよかった」という、患者の実感です。

 


=ご相談・お問い合わせ=

  • 院長としての理念を整理し、言語化したい方
  • スタッフと理念を共有し、文化として根付かせたい方
  • SNSや広告を、医院の軸に合わせて見直したい方

ぜひ一度、私たちにご相談ください。
医院の“本質”から始まる経営づくりを、共に歩みましょう。

お問い合わせ

スタッフ依存経営は終わりだ。
自立した歯科医師だけが未来を拓く

いま、多くの歯科医院が「歯科衛生士不足」という課題に直面しています。
求人を出しても応募がない。やっと採用できても、すぐに離職されてしまう。
この状況を「人手不足だから仕方がない」と捉えていないでしょうか。

しかし、私が現場で数多くの医院を見てきた中で感じるのは、
この問題の本質は単なる「人手不足」ではありません。
実は、長年続いてきた歯科衛生士任せの経営スタイルこそが根本原因になっているケースが多いのです。

予防医療を丸投げしてきたツケ

かつて技量の高い歯科医師は、スケーリングもルートプレーニングも、メインテナンスも自ら行っていました。 予防医療は、自由診療を主体とする歯科医師にとって、医療者としての基本的な責務でした。

しかし時代が進む中で、「予防は歯科衛生士がやるもの」という意識が定着し、
歯科医師自身が予防の現場から距離を置く医院が増えていきました。
その結果、院長自身の予防リテラシーが低下し、
患者リスク管理や予防計画設計への関与も薄くなっています。

この「予防を他人任せにする体制」が、医院全体の医療の質を下げ、
優秀な歯科衛生士ほど医院を見限り、去っていくという悪循環を生んでいるのです。

▼悪循環ループ

歯科医師が予防に関与しない →予防リテラシー低下→歯科衛生士任せ → 教育も外注 → 歯科衛生士が失望・転職 →さらに人手不足・医院衰退

歯科医師が予防に関与しない →予防リテラシー低下→歯科衛生士任せ → 教育も外注 → 歯科衛生士が失望・転職 →さらに人手不足・医院衰退

▼好循環ループ

歯科医師が予防を理解・実践 →自立型リーダーシップ確立→歯科衛生士と共に学び・育つ→信頼と定着→ 医院文化が成長・発展

歯科医師が予防を理解・実践 →自立型リーダーシップ確立→歯科衛生士と共に学び・育つ→信頼と定着→ 医院文化が成長・発展

自立できない院長に教育はできない

さらに問題なのは、歯科衛生士教育まで外部に丸投げしている医院が少なくないことです。
フリーランス衛生士に任せる。外部講師にOJTを依頼する。
もちろん、外部講師の活用自体が悪いわけではありません。しかし、
教育を「任せておけばいい」という姿勢では、医院の理念も文化もスタッフに根付きません。

教育とは、時間と労力のかかるプロセスです。
それを外注に頼るのではなく、院長自身が向き合う覚悟が必要です。

今、歯科医師に求められる「自立型リーダーシップ」

これからの歯科医院経営に必要なのは、

  • たとえ一人でも医院を運営できるだけの技術と覚悟
  • 歯科衛生士と共に「予防医療」を育てる土壌
  • スタッフを育成し、リスペクトする本物のリーダーシップ

この3点です。

  • 自ら予防リスクを評価できる
  • メインテナンスプログラムを設計できる
  • 患者への健康教育をリードできる
  • 歯科衛生士に任せるのではなく、共に高め合う

こうした院長のもとには、スタッフも患者も自然と集まります。
医院文化が強く、安定的に成長していくのです。

「依存」から「共育」へ。未来を変えられるのは院長ご自身です

スタッフに依存する医院経営は、長期的に見れば必ず行き詰まります。
「できないから任せる」のではなく、 「できるからこそ、託す」。

これが、組織を強くする唯一の道です。

歯科衛生士不足を嘆く前に、 院長ご自身が、自立型リーダーとして立ち上がること。
外部に教育を任せる前に、 自らスタッフを導き、医院文化を育むこと。

未来を変えられるのは、誰でもありません。
院長ご自身です。

丸投げをやめたとき、真のチームは生まれる。
院長が立てば、医院も、スタッフも育つ。

自由診療と保険診療

自由診療と保険診療
〜規制と理想のあいだに立つ自由診療〜

歯科医療において、自由診療とは何か。
それは、周囲の空気に流されることなく、自らの理想を追い求める姿勢に他なりません。
保険診療では実現が難しい最先端の治療、時間をかけた対話やオーダーメイドのケア。
こうした理想を掲げ、日々実践に取り組む歯科医師たちは、時に「富裕層対象の歯科医療」と揶揄されることがあります。

しかし私たちは知っています。その裏側には、深い葛藤と使命感が存在することを。
自由診療に踏み出すとは、保険制度という後ろ盾を離れ、自らの理念と技術によって真っ向から医療を提供することを意味します。

それは、経済的リスクや社会的批判をも引き受ける覚悟に支えられた挑戦です。
彼らが目指すものは、単なる利益ではありません。
「もっとできるはずだ」「もっと丁寧に診たい」「もっと患者さんの人生に寄り添いたい」
—— そんな強い想いが原動力となっています。

一方で、現代社会においては「規制は進歩の敵だ」という声も根強く存在します。
テクノロジー業界の一部では、ピーター・ティールやイーロン・マスクのように、国家や制度を超えて挑戦を推し進める動きが見られます。

しかし、医療はそれとは異なります。
人の命や生活に直結する医療においては、個人の理想だけで推し進めることはできません。
社会全体の安心と信頼を支える「公共性」という視点が不可欠です。
日本の保険診療制度は、誰もが経済的背景にかかわらず一定水準の医療を受けられる仕組みを提供しています。この制度による「規制」は、単に自由を縛るものではなく、社会の公正と安心を支えるための重要な枠組みです。

自由診療は、その外側にある挑戦的な選択肢です。
だからこそ、保険制度の意義を十分に理解し、また、その制度の中で医療を支える歯科医師たちにも敬意を払うべきだと考えます。

保険診療か、自由診療か。
そこに優劣はありません。
あるのは、それぞれの理念と責任、そして果たすべき社会的な役割です。

医療において本当に求められるのは、自由と公共性のバランスを取ること。
理想を掲げる勇気と、社会の中でその理想をどう実現するかという成熟した視点。
その両方を併せ持つことによって、歯科医療は、個人の理想を超えた社会的価値を生み出していくと、私たちは信じています。

カニとカニカマ
~偽物がもてはやされる時代に、カニは何を思う~

本物と偽物。 その違いなんて、誰が決めるんだろう。
「本物は素晴らしい」と言いながら、手が伸びるのはスーパーのカニカマ。
気づけば、どこでも幅を利かせてる。

「味、似てるよね」って。
いやいや、似てる“だけ”なんだけどね。
「え、でもウマくない?」
「……うん、うまい(泣)」

でもまあ、そんな時代だ。
努力と中身より、パッケージとコスパ。
中身の詰まったカニは高いし、食べにくい、手も汚れる。
だから出番は激減。

一方カニカマは、取り出しやすくて、誰にでも好かれるよう設計されていて、
しかも「カニに似せてます♡」と謙虚なフリも完璧。

カニカマは常に考えている。
「あの人に近づきたい」「本物になりたい」ってね。
身を細くしてまで、赤く着色されてまで、カニになろうと必死。

でも肝心のカニはというと―― どこ吹く風で、
黙って湯にくぐらされ、殻ごとドヤ顔で鎮座している。

カニは、カニカマになろうなんて1ミリも思っちゃいない。
そりゃそうだ。カニだもの。
自分が“本物”であることに、疑いすらないんだから。

でも…なんということだろう。 その“本物”たるカニよりも、
“偽物”のカニカマのほうが人気を博してしまうことがある。
大量生産され、均一化され、スーパーで手軽に買える、あのカニカマが。

――あぁ、なんて理不尽。なんて無情。

世の中が求めているのは、もはや“本物”じゃないのかもしれない。
“それっぽくて、わかりやすくて、消費しやすいもの”。
これは食卓の話?
いや、たとえば医療現場でも、教育でも、広告業界でも――
あらゆる場面で見かける光景だ。

歯科業界のセミナーも然り。
本物の臨床家――つまり“カニ”たちは、多くを語らない。
プライドあるし、診療第一だし、そもそもSNSでバズるテンションじゃない。

でも、“それっぽいことを話すカニカマ”は違う。
喋る。映える。拡散される。
「成功しました」「自費が上がりました」「患者が感動しました」
とにかく見せる。魅せる。押し出す。

そう、“カニカマ系歯科医師”である。

講演会はキラキラ、パワポはグラフとキーワードで満載。
「予防の時代!」「MTMが臨床を変える!」 語られるのは、
どこかで聞いたような美しい言葉。 その構図、用語、ストーリー――
……あれ?これ、レジェンドの資料とそっくりじゃない?

そう、彼らは本物を「再現」している。
しかも、本人よりも“売れる”かたちで。
手軽に消費できるように、味も食感もチューニングして、
“カニカマのMTM”として提供しているのだ。

参加者は「なるほど!予防ってこうやるんですね!」と満足げにうなずく。
でもそれ、レジェンドが40年かけて育てたコンセプトを、
3時間で「消化しやすく加工」しただけ。
まるでカニの出汁を1ミリも使っていないのに「カニ風味」と書かれたスナックのように。

そして、その“加工”で稼いでいる。
講演料、オンラインサロン、教育プログラム、教材販売―― 全部、
「本物の味」を使って、でも中身は薄いまま、しっかりマネタイズされていく。
日本の得意技、加工業は、歯科でも健在だ。

いや、商売するなとは言わない。
でもせめて、カニのフリをして「俺が考えた」みたいな顔をするのはやめてくれ。
カニカマのように「カニに似せてます♡」と謙虚な姿勢を見せて欲しい。

レジェンドたちが、山のようなエビデンスと失敗の上に築いた知識を、
見栄え良くスライドに詰め込んで、「〇〇〇〇」と名前をつけて売る。
それって、もはや“再現”じゃなく、“盗用”では?

そして、講演受講者は“カニ”じゃなく、“カニカマ”に殺到する。
だってカニカマの方が、話がわかりやすいから。
面白いから。経営的に使いやすいから。

でも、その講演を聞いて、真面目な若手歯科医師が
「よし、自分もカニになるぞ!」と意気込んだとしたら……それが問題だ。
なぜなら、会場の8割が“カニカマをカニだと信じて帰る”から。

つまり、“偽物が本物のフリをする”だけじゃなく、
“偽物が本物として扱われる”時代になってしまっている。
誰も嘘をついていないのに、全体として真実からズレていく。

……これ、ちょっと怖くない?

だけど、業界はカニカマで潤う。
講演ビジネス、歯科雑誌、SNSバズ。ぜんぶカニカマが得意とする分野だ。

じゃあカニはどうするか? 静かに黙って、今日も臨床。
脚をちぎられながらも、黙って湯に浸かる。

わかる人にだけ、わかればいい。
そんな潔さすら感じるけれど―― でも、
その“わかる人”がどんどん減っているとしたら?

それは、ちょっと笑えない話かもしれない。

ベストか、安全か

C案を選ぶ歯科医師のジレンマ
〜医院改革の幻想と現実〜

「手軽に変われる」と言われても、本当にそれで医院の未来は変わるのか?
日本の歯科業界では、医院改革に向けたさまざまな手法が提案されています。
中でも、多くの歯科医師が選ぶのは「無理なく導入できるC案」。

「現場に負担をかけず、今すぐ始められる」
「とりあえずできることから取り組もう」

こうした言葉は、一見前向きに聞こえます。しかし、その選択が本当に医院の成長につながるのか、それともただの現状維持なのか——。
本記事では、「変わりたい」と願う歯科医師が直面するジレンマ と、業界の停滞を生むC案ビジネスの実態、そしてC案が選ばれる背景にある日本の出来高払い型の健康保険制度と、歯科産業がC案を後押しする構造的な問題 について考察します。


  1. A案・B案・C案——歯科医院の改革の選択肢

医院改革の手法には、大きく分けてA案(抜本的改革)、B案(折衷案)、C案(手軽な改革) の三つの選択肢があります。

A案:本気で変わるための選択肢

A案は、医院の診療体制、経営戦略、スタッフ教育、患者対応を根本から見直し、持続可能な成長を実現するための改革 です。
これを選択する医院は、短期的な負担や混乱を受け入れる覚悟を持っています。
しかし、そのハードルの高さから、実際にA案を選ぶ医院はごくわずかです。

B案:変わったふりができる折衷策

A案とC案の中間に位置するB案は、一定の改革効果を目指しつつ、現場の負担を軽減する妥協策 です。しかし、これを選んだ医院の多くは、やがて「やはりC案のほうが無難だ」と流れていくのが現実です。

C案:最も選ばれ、最も変わらない道

そして、最も多くの医院が選ぶのが、C案。
「スタッフの負担を増やさず、患者対応も変えず、医院の現状を維持しながらできる改革」
このコンセプトは、医院にとっては魅力的に聞こえます。
しかし、これは本当に「改革」なのでしょうか?


  1. C案ビジネスの実態:「やっている感」だけを売る市場

「A案は大変ですよね。でもC案なら今日からできます!」
「無理なくできる改革から始めましょう!」
こうした言葉でセミナーやコンサルティングを売る歯科業界のビジネスモデルが存在します。
本当に医院のためになる提案ならば、なぜ業界全体は変わらないのでしょうか?

答えはシンプルです。
C案を選んだ医院は、「やっているつもり」 にはなれても、実際には何も変わらないからです。C案を提供するコンサルタントや歯科医師にとっては、「変わらないこと」こそがビジネスモデル です。C案を売ることで、歯科医師の「改革意識」を満たし、表面的な安心感を与える。しかし、その結果、医院の本質的な変革は先送りされるのです。


  1. C案を選ばせる「出来高払い型」医療制度の影響

日本の歯科医療は出来高払い型の健康保険制度 によって成り立っています。
この制度では、提供した処置の回数や種類によって報酬が決まるため、「質の高い医療を提供したから報酬が上がる」わけではありません。
つまり、診療の質ではなく、処置の回数が収益を左右する のです。

この仕組みの中では、A案のように時間をかけて予防歯科を導入し、患者教育を進めるよりも、従来通りの診療スタイルを維持したほうが経営的に安定する という現実があります。
そのため、多くの医院が**「経営リスクを冒してまで改革する必要はない」** という結論に至り、C案を選択してしまうのです。


  1. C案に群がる歯科産業と「低きに合わせる構造」

そして、C案を後押しするのは医院だけではありません。
歯科関連の産業界もまた、C案を推奨し、市場を支えているのです。

C案には人が集まりやすく、企業側にとっても商機が生まれます。
なぜなら、A案のような本格的な変革には専門知識と投資が必要 ですが、C案ならば「手軽に導入できるツール」「すぐに結果が出るマーケティング施策」といった形で、多くの医院にアプローチしやすいからです。

結果として、C案を選ぶ医院が増えるほど、業界全体が「変わらない方向」に向かって進んでいく。この構造が歯科業界に根付いたことで、「できるだけ変えないまま、それっぽく見せる」文化 が形成されました。

その結果、
・業界全体の停滞感
・抜本的改革を試みる医院の孤立
・世界標準な予防歯科の潮流との乖離
といった負の連鎖を招いているのです。


  1. A案を選ぶために必要な4つの要素

本気で医院を変えるためには、「覚悟」だけでは足りません。
以下の4つを揃えてこそ、A案を選択し、成功へと導くことができます。

  1. ビジョン:医院の未来像を明確にする
  2. 戦略:計画を立て、実行し続ける力
  3. リーダーシップ:院長が「変化の象徴」になる
  4. 環境:A案を実行できる土台を作る

A案を選ぶのは決して簡単ではありません。
しかし、本当に医院を成長させたいなら、C案ではなくA案を選ぶしかない のです。

本気で変わる医院と、変わるふりをする医院——あなたはどちらを選びますか?

情報の氾濫と、正しい判断をする力

承認欲求に溺れる歯科業界
――評価という幻影に踊らされる現場
SNSが歯科医療を変えた今こそ、本当に価値のある治療とは何かを問い直すべとき。

歯科業界は、いつから「市場の評価」を過剰に気にするようになったのでしょうか。本来は、歯科医師の判断基準は科学的根拠に基づく診療技術と経験にあるべきです。しかし、SNSや口コミサイトの普及により、その軸は急速に揺らぎ始めています。

情報の流通速度が加速し、歯科医療に対する評価の基準は、かつての「医療的適切性」から「患者満足度」へとすり替わってしまいました。治療の正当性よりも、「利便性」「おしゃれ」「感じが良い」といった表面的な価値が求められ、それが市場での成功を決める指標になりつつあります。まるでSNSの「バズる」現象と同じ構造です。


歯科医院経営の落とし穴――「評価主義」に振り回される医療者

この傾向を加速させたのは、患者だけではありません。むしろ、歯科医師自身が「評価されること」に快楽を見出し始めたことこそが問題の本質です。検索アルゴリズムが、患者の関心に合わせた情報を優先的に表示することで、異論や慎重な議論は影を潜めます。「最新技術」「革新的治療」と称されるものがもてはやされ、それを導入しない歯科医院は遅れているかのような錯覚を抱かされます。


短期的なトレンドより、本当に求められる歯科医療とは?

しかし、流行の治療法や見た目の改善を優先するこの風潮は、歯科医療の根本を揺るがしています。本来、歯科医療は治療よりも 予防 にこそ価値があるはずです。それにもかかわらず、派手な広告戦略や「すぐに効果が見える」施術が持てはやされ、MTM(メディカルトリートメント) のような地道なリスク評価に基づいた診療システムは注目されにくくなっています。歯周病管理やリスクコントロールこそが、長期的に患者の健康を守る最善の方法であるにもかかわらず、「即効性」や「劇的なビフォーアフター」が求められる市場の中で、その重要性はかすんでしまっています。

SNS上では、「ホワイトニングですぐに歯が白くなる」「たった○回の治療で歯並び改善」などの即効的な成果を強調する投稿が溢れています。それに対し、「MTM による歯周病の進行抑制と治療」「定期メインテナンスによる健康維持」といった地道な努力は、どうしても見劣りしてしまいます。患者が「目に見える変化」にばかり意識を向けることで、歯科医療の本来の目的である 「生涯にわたる口腔の健康維持」 という視点が失われつつあるのではないでしょうか。


予防歯科の価値を再認識する時代へ

かつて、歯科医療の中心は「治す」ことにありました。しかし、時代とともに予防の重要性が認識され、「治療中心」から「健康管理」へとシフトしてきました。しかし今、SNSによる評価競争の中で、本来の歯科医療が再び「見た目の変化」や「即効性」といった短期的な満足に振り回されているのです。

これは、治療中心の時代に逆戻りしているのと同じではないでしょうか。むしろ、現代の歯科業界は、評価や市場競争を優先するあまり、せっかく築き上げてきた「予防歯科」の本質を見失いかけています。

今こそ、「痛くなったら治す」ではなく、「痛くならないように管理する」という本質的な医療の価値を再確認すべき時ではないでしょうか。技術の進化や情報の広がりが、歯科医療を単なる消費活動に変えてしまわないよう、歯科医師自身が判断基準を取り戻す必要があります。


情報の氾濫と、正しい判断をする力

新型コロナウイルスの流行期には、SNSを通じて「この歯磨き粉がウイルスを防ぐ」といった怪しげな情報が拡散されました。さらには、感染対策の是非をめぐって歯科医師の間でも激しい議論が繰り広げられました。これは、情報過多の時代において「何が正しいか」を見極める力が鈍っていることの証左ではないでしょうか。

この状況は、まさに明治時代の文明開化と重なります。当時、新技術の流入に戸惑う民衆を前に、福沢諭吉は「民情一新」の中でこう述べました。

「結局、我社会は、この変化とともに進むしかない」

しかし、それは単なる技術の受容を意味しません。むしろ、無批判に流されるのではなく、新技術が本当に価値あるものかを吟味し、適切に活用することが求められているのではないでしょうか。


歯科医院経営の未来――本質的な価値を見極めるために

今、歯科業界は大きな転換点にあります。SNSの評価に一喜一憂し、患者の「いいね!」や高評価を追い求めるのか、それとも、医療者としての倫理を守り、本当に良い治療を提供することに徹するのか。

SNSが歯科医療を変えた今こそ、本当に価値のある治療とは何かを問い直すべき時です。

―― それは、派手な治療ではなく、予防と継続的なケアの重要性を再認識すること。 承認や評価を他人に委ねない「弱い自立」ではないでしょうか。

評判の力
歯科医院が抱える口コミ依存の実態

評判の力:歯科医院が抱える口コミ依存の実態

「口コミ」という言葉に踊らされる現代社会。しかし、評判が人から人へ伝わる仕組みそのものは決して新しいものではありません。ただ、それを過剰に持ち上げ、すべての成功要因を口コミに求める風潮は、歯科医院においても例外ではありません。この現状は、歯科医療業界における課題や限界を浮き彫りにしています。

日本の医療法により、医療機関が広告で自由にアピールすることは厳しく制限されています。治療効果を保証するような表現が禁じられているため、患者同士の口コミが新規患者を呼び込む主要手段となっているのが現状です。しかし、これは本当に健全な仕組みなのでしょうか?口コミという名の「評判」に過度に依存し、実質的な医療の質や独自性が軽視されているのではないでしょうか。


選ばれる歯科医院になるために:本当に必要なことは何か?

患者が慎重に歯科医院を選ぶ現代、口コミの影響力が強いのは事実です。特に都市部では、過密な競争環境の中で医院が差別化を図ることは容易ではありません。しかし、口コミに依存する現状は、選ばれるための本質的な努力を怠る言い訳にも見えます。

ネット上の口コミは便利な情報源ではありますが、その匿名性は信頼性を著しく損ねる要因でもあります。多くの患者が参考にしている口コミ情報が、本当に医院の価値を正確に反映しているとは限りません。それにもかかわらず、歯科医院が口コミの「表面的な評価」にばかり目を向けているのは問題です。成熟した消費者社会において、歯科医院が本当に注力すべきなのは、口コミという「外向けの評判」ではなく、患者に選ばれるための根本的な実力ではないでしょうか。


口コミ対策としての院内改善:本質を見失う危険性

口コミによる評判を高めるために、院内のサービス向上を目指す取り組みが推奨されます。会計時のヒアリングやフォローアップの実施、患者との信頼関係の構築など、どれも一見すると正論に聞こえます。しかし、こうした対策は本当に患者のためになっているのでしょうか?それとも、口コミ評価を「操作」するための見え透いた手段に過ぎないのでしょうか?

患者の不満を「その場で解決する」と謳う取り組みは、ネガティブな口コミを防ぐための表面的な手法でしかありません。そもそも、質の高い医療と信頼できる治療結果を提供することが最優先であるべきです。その基本すらおろそかにして、口コミ評価の上昇に固執する姿勢は、患者本位の医療とは程遠いと言わざるを得ません。


ネット上の口コミ対応:応答が信頼を生むとは限らない

ネット上の口コミに対する対応も、賛否が分かれるポイントです。ネガティブな口コミに真摯に向き合い、ポジティブな口コミには感謝を示すことが推奨されていますが、それがすべての答えとは限りません。


対応しない場合のリスクは本当か?

  1. 信頼構築の機会を失う
    ネガティブな口コミに返信することで透明性を示せる、とされますが、その透明性が患者にどう評価されるかは未知数です。むしろ、過度に反応する姿勢は、医院が口コミに振り回されている印象を与えるリスクがあります。
  2. ポジティブな口コミの活用不足
    好意的な意見に感謝を示さないと、投稿者が軽視されたと感じる可能性があるといいます。しかし、それもまた患者に媚びを売る行為に映る可能性があります。医院が堂々とした姿勢を保つことが、信頼を築くもう一つの方法ではないでしょうか。
  3. 印象が一方的になる
    ネガティブな口コミが目立つことで評判が悪化するという指摘もありますが、本当に信頼される医院であれば、表面的な評価だけで選ばれるわけではありません。


改善に向けた真の課題

口コミを活用して医院を改善することが推奨されていますが、そのためには情報を精査し、本当に改善すべき点を見極める必要があります。患者が感じる不満の背後にある原因を分析し、医院の根本的な運営方針を見直すべきです。


まとめ

口コミは歯科医院にとって重要な要素ではありますが、その影響力を過信することは危険です。本当に必要なのは、口コミという「外向けの評判」を追い求めるのではなく、患者にとって信頼できる医院であり続けることです。

  • 短期的な評判操作ではなく、長期的な信頼構築を目指す
  • ネガティブな口コミへの過剰な反応を控え、医院の方針を明確にする
  • 質の高い医療サービスを提供し、患者自身が自然と医院を支持する環境を作る

これこそが、地域に選ばれる歯科医院の本当の姿です。口コミに依存しすぎる現状から脱却し、本質的な価値を高めることが、これからの歯科医療に求められる姿勢と言えるでしょう。

 

新年のご挨拶
~歯科業界におけるSNS活用とその影響~

新年あけましておめでとうございます。

旧年中は格別のご厚情を賜り、心より感謝申し上げます。2024年は、国内外で多くの変化があり、皆さまとともに新たな課題に取り組む一年となりました。
本年も引き続き、皆さまのご期待にお応えできるよう一層努力してまいります。皆さまのご健康とご多幸、そしてさらなるご発展を心よりお祈り申し上げます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

昨年は、ウクライナ戦争やイスラエルでの紛争、アメリカ大統領選挙、日本の首相選や衆議院選挙、さらには韓国での戒厳令など、国内外で激動の一年でした。また、日産自動車、ホンダ、三菱自動車の合併話が発表されるなど、ビジネス界でも注目を集める動向が見られました。

歯科業界においては、歯科医院数が減少する中、経営環境の厳しさが増しています。2022年の歯科医療費は3兆2275億円に達しましたが、医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や人件費の増加が経営を圧迫しています。新規開業には8000万円から1億円程度の資金が必要とされ、リスクの増大が新規参入を鈍化させる要因となっています。この状況では、業界全体の減収が懸念されます。

さらに、社会保障費の膨張も深刻な課題です。昨年の予算ベースでは総給付額が137兆円、医療費は42兆8000億円に達しました。このままでは社会保障制度の破綻や医療費負担の増加が避けられません。保険給付対象の重点化やセルフメディケーションの推進が求められています。

一方、歯科業界ではSNSの活用が急速に進んでいます。X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなどを活用し、治療法の紹介や患者体験の共有が盛んです。しかし、SNSには「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」といった偏りの問題もあります。情報が評価や同意に偏ることで、多様な視点を失い、冷静な判断が難しくなるリスクが指摘されています。

たとえば、アメリカの大統領選挙では、インフルエンサーが広めた陰謀論が混乱を招き、連邦議会占拠事件に至りました。また、日本では兵庫県議会選挙において、SNS上の誤情報や極端な議論が選挙結果に影響を与えた事例があります。SNSは迅速な情報伝達を可能にする一方で、社会に大きな影響を及ぼすツールであり、その利用には課題も伴います。

情報伝達の速度が飛躍的に向上する中、人間の知性や判断力がそのスピードに追いつかず、発信の拙速化や深慮不足が目立つ傾向があります。このような状況が誤解や混乱を招くリスクを高める中で、歯科医院経営の向上には、SNSやネットを適切に活用するだけでなく、口コミやレビューなど他者の評価に過度に依存せず、自院の強みや診療方針を分析し、独自性を打ち出す主体的な取り組みが求められます。今年は、Windows95の発売から30年という「インターネット元年」の節目にあたり、この文明の利器を最大限に活用することで、歯科業界にとっての「経営向上元年」となることを期待しています。

本年も皆さまとともに課題に取り組み、共に成長していける一年となるよう努力してまいります。引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。

【開催終了】米国歯内療法専門医によるGPのための夏期講習会
意図的再植治療の教科書
-抜歯の前の最後の1手-

抄録

2024。今年も米国歯内療法専門医によるGPのための夏期講習会がやってきます。
エビデンスが蓄積している途上の意図的再植を、米国歯内療法専門医の松浦顯先生が、自身の国内トップレベルの豊富なケースを基に、GPでも明日から結果が出やすいケースから困難なケースまで分類して解説します。

松浦先生からのメッセージ

この歯は治療が必要です! と意気揚々と歯内療法を始めたものの、患者の痛みが取れないどころかゴールが見えず、もうこれくらいで… 治らないので抜きましょう… と言う悪魔の言葉? を患者に告げたことはないだろうか?

歯科医師ならその人生で1度は経験することだろう。
が、ちょっと待ってほしい。

どうせ抜くなら、
根の先を(3mm)切断して、
逆から形成して、
逆根充して、
その歯を戻せよ(再植しろよ)!

と言いたくなる。

そんな治療は大学では教わってない、と言う方は私のHPの数多くの抜歯を逃れた症例を見てほしい
まつうら歯科医院 歯内療法専門室

Intentional Replantation(意図的再植)、アメリカではLast Resortとも呼ばれている最終手段だ。
夏の講義では、Intentional Replantationを基本から復習し、症例ごとに簡単なケースから難しいケースまで分類して皆さんに伝えることを目的としている。…いまだ存在しない、Case Report的な教科書だ。

数々の症例を見て、Last Resortに賭ける臨床家になるか、見放してネジを入れ込むかはあなた次第だが、歯牙を保存する意味もこの講義を通じて伝えられればと思っている。

歯牙を本気で保存したい先生の受講を望みます。
そして講義の最後には、歯内医療に対する私の哲学をご紹介したいと思う。

今までの非常識? を常識に? 変えましょう。

 

講師:
松浦 顯先生 MATSUURA Akira

  • 2002年
    長崎大学歯学部 卒業
  • 2006年
    医療法人社団精密会 まつうら歯科医院 開業
  • 2016年
    南カリフォルニア大学歯内療法学大学院 卒業

日本に数人しかいない、米国歯内療法学会の認定専門医。福岡市博多区にて根管治療を始めとする歯内療法のみを専門で行う歯科医院、「まつうら歯科医院・歯内療法専門室」を開設。

>まつうら歯科医院 歯内療法専門室

 

モデレーター:
加藤 大明先生 KATO Hiroaki

  • 2003年
    福岡県立九州歯科大学卒業
  • 2021年
    北欧歯科こくら院長

大学院で予防歯科の研究を行った後、日吉歯科診療所で予防歯科臨床を学ぶ。北欧歯科こくら院長。
>北欧歯科こくら

 
 

開催概要

開催方式

会場+オンライン(ハイブリッド開催)

日時

2024年8月4日(日)
10:30〜15:30(10:00開場・昼休憩あり)

会場

御茶ノ水トライエッジカンファレンス >ホームページ

〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台4丁目2−5 御茶ノ水Nkビル 11階
tel. 050-1865-4512

定員

50名(会場)

特典

  • 会場参加の方もオンラインでの復習(振りかえり視聴※1週間)が可能です。配信は8/21からを予定しております。
  • 会場参加、オンライン参加の方に後日講義資料を配布いたします。
 

参加費用(税込み)

軽食費用を含みます

クレセルクライアント様は開催翌月にクレセルよりご請求します。別途の銀行振込は不要です。

お振りこみ先

三菱UFJ銀行
春日町支店 店番062
普通 0053352
クレセル株式会社

  • お振り込み手数料はご負担いただくようお願いいたします。
  • お申しこみは入金をもって確定とさせていただきます。
  • ご入金後のキャンセルになった場合は、いかなる理由でも返金は致しかねますのであらかじめご了承ください。
  • 領収書は発行いたしません。金融機関の振り込み明細書をもって領収書の発行に代えさせていただきますことをご了承ください。
 

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【開催終了】セミナー:もう一度見直したい!患者さんの「やる気」

このセミナーでは「伝えること」と「伝わること」とを区別しながら、患者さんと目的意識を共有できるように工夫してきました。その事例を紹介します。皆さんの取り組みについてもシェアいただければ、より有意義な場となるでしょう。ご自身の医院に「これはすぐに活用できる」というお土産を持ち帰っていただくことを目的に進めます。

セミナー「映画鑑賞と歯科講演で周術期の歯科医療を考える」を開催しました

2024年1月28日に御茶ノ水トライエッジカンファレンスにてセミナー「映画鑑賞と歯科講演で周術期の歯科医療を考える」を開催しました。

静岡県立静岡県がんセンター歯科口腔外科部長の百合草健圭志先生の講演「がん口腔支持療法」に続いて、映画「ケアを紡いで」を鑑賞し、がん治療の支持療法における歯科の役割について理解を深めました。
セミナー情報

 

新年あけましておめでとうございます

長かったコロナ禍を経て、皆様におかれましては、文字通り通り晴れ晴れとした気持ちで新年をお迎えのことと存じます。
私は旧年中の煩さな事でヒートアップした頭を連日の寄席通いで冷やし、心機一転、社会に予防歯科を繋げていく所存です。

寄席の空間は頭をクールダウンさせるメリットだけではなく、私たちが未来社会像の中で見落としていることに気づかせてくれます。
というのは、作年、話題作となった、多和田葉子さんの献灯使の中で描かれている高齢者が脆弱な心身の若者をケアする未来社会像が、現実のものとしてそこには存在しているからです。
内閣府が示すところの1.3人の現役世代が高齢者1人を支える未来社会とは違い、多くの高齢な落語家たちがエンタメを通じて日常生活に彩りを添える役割を果たし、現役世代の人々のメンタリティーを支えているドキュメンタリーが展開されています。
Socity5.0のフィジカル空間では年齢による従来の区分は意味をなさず、ケアできる人がケアを必要とする人にケアを届け、それを支える基盤がAIを主体とするサイバー空間である社会像がSocity5.0ではないかと、寄席の空間から想像が膨らみます。

日本ではSocity5.0をはじめとして、社会や経済の停滞を科学技術の振興によって突破しようとする考えが根強く、歯科業界もその例外ではありません。
現代史を振り返ってみると、人材育成及び活用を含めて人文・社会科学をどう扱うかという点で考えるべきことが多々残されていることが理解できます。
歯科業界でも馴染みが深いスウェーデンの予防歯科などは、その最たるもので、むし歯や歯周病の病因論や予防歯科学の研鑽と並行して人文・社会科学を基盤とした社会システム改革がスウェーデンの歯科医療の品質向上に影響を与えています。
歯科医療・処置はAIの介入を受けにくい労働集約的分野ですから、変革の基礎となるのは人文・社会科学的知識であり、そのための教育・振興にもっと力を注ぐべきではと思います。

それでは本年もどうぞよろしくお願いいたします。

クレセル株式会社 伊藤日出男

令和6年能登半島地震により被害に遭われたみなさまへ

インフォメーション | 2024年1月5日

2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」により犠牲となられた方々に心よりお悔み申し上げるとともに、被災された皆様ならびにそのご家族、関係者の皆様に対してお見舞い申し上げます。

被災された皆様の安全と被災地域の一日も早い復興をお祈り申し上げます。

クレセル株式会社代表取締役 伊藤日出男

私たちの力を削ぐ呪いの言葉「8020」と決別しよう!

年が明け、またひとつ歳をとってしまう。「人生経験を積む」と言えば聞こえはよいが、私の場合、ただ世馴れただけのようで年々物事に新鮮味が感じられなくなっていく。流行りの楽曲を聴いても誰かのパクリに聴こえるし、映画を観ればどれも旧作のリメークに思え、SNSで評判の歯科セミナーを視聴すれば「あんなのは90年代にさんざんやった・・」と、ウンチクを垂れたくなる。知らなければ楽しめたのに、知っているばかりにつまらなくなってしまう。

これを「知恵の悲しみ」と呼ぶらしい。若い頃は知恵を身につけることに喜びを感じていたが、知恵がいったんつくと、世の中に新しいものがなく、すべてが虚しい繰り返しに思えてくえる。歯科商業誌はその最たるもので、何かが変わったと感じないどころか、焼き直し企画ばかりで腹がたってくる。こうした傾向は脳の老化現象かもしれないと思い、「毎日脳活・脳ドリル」を手にしてみたが、つまらないことを通り越しセンチメンタルになってしまう。

そういえば日本社会にも同じようなことが。最近は「失われた30年」というフレーズを聞くことが多くなった。最初は「失われた10年」だった。私が歯科業界に足を踏み入れたころで、バブル経済崩壊以降に経済停滞が続いた1990年代を指す言葉だが、経済停滞も私の業界キャリアもとうとう30年まで延びてしまった。日本社会は「失われた30年」の間「成長」も「追いつけ追い越せ」のメンタリティも失ってきたが、歯科業界はさらに深刻で、良い方向に変わっていく感覚さえも失っているように感じる。

一体どうすればよいのだろうか。遠い昔、予備校の授業で、現在では万葉集研究の第一人者となった中西進先生から、万葉集の歌は「読むのではなく詠むもの」「ただ言葉を求めよ。そうすれば感情がついてくる」と教わった。そのときはまるで部活の円陣での掛け声のようだ、と思う程度だった。

感情より先に言葉を求めよということか。例えば、歌を詠もうと花を見てまず感動しようとする。が、感動しない。老化で感性が鈍くなったのか、などと思うことなかれ、感動しなくても「いとおもしろき」と声にして半ば無理やり感情を引き出すのである。おもしろいから「おもしろい」と言うのではない。「おもしろい」と定めて声にしてみれば、おのずとおもしろみを感じてくる(はず)。

さあ、ここから何を始めよう? 「失われた30年」は、AIやDXで「生産性を上げること」や「働き方を変えること」で、良い方向に変えられるだろうか。それさえも工業立国日本のJapan as Number Oneへの見果てぬ夢の匂いがする。もう私たちはノスタルジーから離れて原点に還り「生き方を変えること」、万葉集に倣い「声を出す」ことでしか、何も変わらないのではと思う。

なにはともあれ、まずは「おめでとう」。そう口にして、おめでたい気持ちで年の初めを迎えよう。続いて私たちの力を削ぐ呪いの言葉「8020」と決別し、「KEEP28」と声にして、来年こそは、歯科業界と社会が共に良い方向に変わっていく感覚をもう一度呼び覚ましましょう!

年末年始休暇のお知らせ

インフォメーション | 2016年12月1日

年内の業務は12月28日(水)までとなります。
12月29日(木)~1月4日(水)はお休みとさせていただきます。
新年の業務は1月5日(木)からとなります。
よろしくお願いいたします。

ウェブサイト運用サービスのご報告

インフォメーション | 2016年8月22日

2016年8月
クレセル株式会社

弊社では、従来のSEO対策や医院様のご要望待ちのウェブサイト運用サービスでは、患者や生活者からの支持を得られないと考え、今期(2015年9月~2016年8月)から医院様の取り組みや特色を積極的に引き出す運用サービスに切り替えさせていただきました。
弊社ではかねてから、歯科医院経営にとっては再診率・定期管理率が最も重要で、その数字はウェブサイトのアクセス数とページビューに反映される、と考えているからです。GP歯科の新患は、他院からの流出患者が大半です。自院の再診率・定期管理率が上昇すれば、競合歯科の新患率は下がり、結果として自院の新患率は維持上昇し、コンプライアンスの高い患者も増えて、自由診療率も自ずと上昇すると考えております。
このサービス方針に基づき、今期においては3ヶ月ごとに新たなコンテンツのご提案を行いました。その結果、前年同月比でクライアント医院様の平均アクセス数は806→835に、平均ページビューは2,239→2,334にアップしましたことをご報告いたします。
本サービスは、今期同様のサービス方針に基づき、引き続き来期(2016年9月~2017年8月)もクライアント医院様の管理費用・更新頻度に基づいて、公平にサービスをご提供させていただく所存です。

今期コンテンツサービス

  • 院長インタビュー(2015年9月~12月)【実施医院様数 29】
  • 歯周病イラストor求人コンテンツ(2016年1~3月)【実施医院様数 14】
  • ホワイトニングページ(4~6月)【実施医院様数 28】
  • 「お口から健康へ」ページ追加(7~9月)【実施医院様数 21】

クライアント医院様からは、各回わかりやすいイラストを使ったページレイアウトが好評でした。その反面、処置や業務の説明の例文が標準的で、かえって医院独自の文章に直すことが大変だったとの声も聞かれました。コンテンツのご提案後、医院独自の画像や動画などが送られてくることも多く、クライアント医院様と弊社が、相互で医院ウェブサイトを更新・構築していく仕組みができ、風通しの良い関係を築けたことが最大の収穫でした。

来期上半期コンテンツサービス

  • 求人ページ(2016年9月~12月)
  • ケア用品販売ページ(2017年1月~3月)

※今期実施したコンテンツサービスのご要望も随時受け付けております。

弊社では今後も歯科医院様の実態に即したウェブサイトサービスをご提供させていただきますので、ふるってご参加ください。また、ご意見等いただけましたら幸いに存じます。

来期もよろしくお願いいたします。

第13回塩田義塾総会(2016年)のご案内(2016.7.24)

インフォメーション | 2016年6月2日

講演要旨

「訪問診療を視野に入れた有床義歯臨床のチェックポイント」

超高齢社会を歩む日本では、高齢者福祉の充実が図られています。介護保険などの法整備も整い、在宅介護や在宅医療が始動するなかで、歯科界でも訪問診療は社会的ニーズとして注目されています。

厚生労働省は、要介護状態の未然防止と医療費削減という両面から、介護予防を重視する制度改正を行ってきました。歯科界では「口腔機能の向上」すなわち口腔リハビリテーションが介護予防サービスのひとつとして導入されました。そのリハビリテーションにおいて、有床義歯装着が効果的だという報告もあります。

ただ、義歯は人工物だけに難点もあります。患者さんの有床義歯に対する訴えでよく耳にするのは、「はずれる」「噛めない」「痛い」の3つであります。

今回はこのような症状を訴える患者に対する舌接触補助床等を含めた口腔機能の回復または維持・向上を図る有床義歯治療のポイントについて解説させていただきます。

20160602

日時:2016年7月24日(日) 10:00~16:00
会場:全国町村会館 第2会議室(東京都千代田区永田町1-11-35)
講義:(午前)塩田 博文 塾長
講演:(午後)岡崎 定司 先生(大阪歯科大学 欠損歯列補綴咬合学講座教授)
演題:訪問診療を視野に入れた有床義歯臨床のチェックポイント

詳しくはこちら

クレセルクライアント様向けの新サービス

インフォメーション | 2012年11月20日

先月までのメールマガジンをクライアント様へさらに拡張すべくこの度、クライアント様向けのサポートサイトを開設いたしました。

今までメールだけの情報発信でしたが、これからはWebサイトの中で皆様にさらに有益な情報を発信できるようになりました。

 

クライアント様専用のサービスサイト

現在、ご覧のサービスサイトは「ベータ版」という試験運用を行っているところです。

URLさえ知っていれば誰でもご覧いただけるサイトになっています。

サービス開始後にクライアントの皆様から使い勝手などのご要望を頂戴し、

IDとパスワードで管理された会員制サイトへアップグレードする予定です。

 

メールマガジンの内容をいつでもどこでも

インターネット環境にさえあれば、メールマガジンの内容やクレセル主宰セミナーのご案内、

その他、歯科医院経営に有益な情報をリアルタイムでお届けいたします。

外出先や診療の合間など、いつでもどこでも医院経営のエッセンスをお届けいたします。

 

患者の抱え込みの為の会員制サイト構築をお考えの先生へ

一定数の新規患者を獲得している歯科医院では、その後のリコールや再初診率など患者の

抱え込みに革新的なシステムをお考えの先生も多いのではないでしょうか?

 

患者向けイベントやノベルティなどでの抱え込みに限界を感じている医院様、

そしてモチベーションの高いスタッフがいるのにブログの更新程度しかITを活用できていない

歯科医院様へ向けて「患者抱え込み会員制サイト」のご相談を承っております。

詳しくはお問い合わせください。