いま、多くの歯科医院が「歯科衛生士不足」という課題に直面しています。
求人を出しても応募がない。やっと採用できても、すぐに離職されてしまう。
この状況を「人手不足だから仕方がない」と捉えていないでしょうか。
しかし、私が現場で数多くの医院を見てきた中で感じるのは、
この問題の本質は単なる「人手不足」ではありません。
実は、長年続いてきた歯科衛生士任せの経営スタイルこそが根本原因になっているケースが多いのです。
予防医療を丸投げしてきたツケ
かつて技量の高い歯科医師は、スケーリングもルートプレーニングも、メインテナンスも自ら行っていました。 予防医療は、自由診療を主体とする歯科医師にとって、医療者としての基本的な責務でした。
しかし時代が進む中で、「予防は歯科衛生士がやるもの」という意識が定着し、
歯科医師自身が予防の現場から距離を置く医院が増えていきました。
その結果、院長自身の予防リテラシーが低下し、
患者リスク管理や予防計画設計への関与も薄くなっています。
この「予防を他人任せにする体制」が、医院全体の医療の質を下げ、
優秀な歯科衛生士ほど医院を見限り、去っていくという悪循環を生んでいるのです。
▼悪循環ループ
▼好循環ループ
自立できない院長に教育はできない
さらに問題なのは、歯科衛生士教育まで外部に丸投げしている医院が少なくないことです。
フリーランス衛生士に任せる。外部講師にOJTを依頼する。
もちろん、外部講師の活用自体が悪いわけではありません。しかし、
教育を「任せておけばいい」という姿勢では、医院の理念も文化もスタッフに根付きません。
教育とは、時間と労力のかかるプロセスです。
それを外注に頼るのではなく、院長自身が向き合う覚悟が必要です。
今、歯科医師に求められる「自立型リーダーシップ」
これからの歯科医院経営に必要なのは、
- たとえ一人でも医院を運営できるだけの技術と覚悟
- 歯科衛生士と共に「予防医療」を育てる土壌
- スタッフを育成し、リスペクトする本物のリーダーシップ
この3点です。
- 自ら予防リスクを評価できる
- メインテナンスプログラムを設計できる
- 患者への健康教育をリードできる
- 歯科衛生士に任せるのではなく、共に高め合う
こうした院長のもとには、スタッフも患者も自然と集まります。
医院文化が強く、安定的に成長していくのです。
「依存」から「共育」へ。未来を変えられるのは院長ご自身です
スタッフに依存する医院経営は、長期的に見れば必ず行き詰まります。
「できないから任せる」のではなく、 「できるからこそ、託す」。
これが、組織を強くする唯一の道です。
歯科衛生士不足を嘆く前に、 院長ご自身が、自立型リーダーとして立ち上がること。
外部に教育を任せる前に、 自らスタッフを導き、医院文化を育むこと。
未来を変えられるのは、誰でもありません。
院長ご自身です。
丸投げをやめたとき、真のチームは生まれる。
院長が立てば、医院も、スタッフも育つ。