日野原重明先生へレクイエムを

綿菓子のような優しい笑顔の日野原先生と一緒に

著名人が亡くなると、故人の教えや思い出をblogでしたり顔で語る輩が出現し、図らずもインターネット社会の浅はかさが露見します。かく言う私も日野原先生の訃報を知り、日野原先生の社会性の高さを伝えることで厚顔の誹りを免れませんが、レクイエムの代わりとしたいと思います。

日野原先生に関心を抱いたきっかけは、当時社会を震撼させた赤軍派による「よど号事件」の人質の代表となった若き日の日野原先生の正義感の強さにあります。日野原先生を人質にして北朝鮮に亡命した事件の当事者が、日野原先生の訃報を知り弔意を産経新聞に寄せていますが、この内容を読むと日野原先生の人間力の高さが伝わってきます。

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日野原先生の医療人として評価の高さは、常に社会に繋がりその時々の社会問題を自分の正義を持って判断し、解決してきたことにあると思います。

「よど号事件の人質代表」や「地下鉄サリン事件における聖路加国際病院の解放」などの事件への対応然り、「成人病を『生活習慣病』と改称して予防意識の普及」や「医師と患者の対等意識の喚起」然り、「総合的健康診断『人間ドック』の開設」や「看護師教育の充実と看護師業務の拡大」などの医療問題へのアプローチ然り、総てが社会正義と社会貢献に裏打ちされています。

医療人として常に社会と向き合う、“世のため人のための”実践者だったと思います。振り返って歯科界には、未だ業界利益を気にする内向き志向が蔓延しています。しかし、“世のため人のための”を本気で願う歯科医師も出現しつつあります。

日野原先生からすれば大抵の歯科医師は小学生のようなものです。濁りきった精神の私には、小学生に向けた平易な文章だけに余計に鮮烈に感じますが、本気の歯科医師の方は、日野原先生の「いのちの授業」最後の連載には勇気づけられるはずです。

「君たちのまっすぐな心で世の中をよく観察してほしいと思います。そして、正しいと思うことをしっかりと行動に移してください。自分の心に恥じない生き方をつらぬいてほしいと希望します。」

と、あります。