女性スタッフに嫌われる院長の未来は暗い

昨日も勤務医のことで相談を受けた。「いいDRいないですか」は、どこの医院でも挨拶代わりになっている。歯科衛生士がいなくなったと思っていたら、勤務医までもいなくなってしまったのが首都圏の歯科事情だ。推測するに、若手歯科医は研修先で青田買いされていること、首都圏での過当競争を避け、出身地近辺で開業準備に勤務するケースが増えたことが挙げられる。しかし、だ。こんな正論を言っていても、働き手を求めている歯科医院には何の解決方法にもならない。

 

歯科雑誌や求人誌に「歯科衛生士が選ぶ就職先の条件」なる記事がある。給与・福利厚生・休日と労働時間・勤務立地が良いことが上位にきている。そんな当たり前のアンケート結果に、「そんな好待遇ができれば、困りはしない」と一くさり言いたくもなる。しかし、歯科雑誌や求人誌の編集は意外と現場を知らないため、アンケートには表れない現象を見る力も洞察する力もないのだから仕方がない。幸い仕事柄私は多くの医院の求人に立ち会ってきて、歯科衛生士にも若手歯科医にも「影の求職傾向」があることを知っている。

 

若手歯科医も求職先を探す条件は歯科衛生士と大差はない。中には、技術研鑚のため丁稚奉公を大御所の医院で志願する者もいるが、これは例外的な存在だ。若手歯科医の求職先として人気がある医院は、女性スタッフがポイントとなってくる。女性スタッフには歯科衛生士とか歯科助手の別は特には関係はないが、できれば若く、それに美形が加わると就職率だけでなく定着率も良いようなイメージがある。と、言うのも若手歯科医師は、求人先ホームページで院長のコンセプトや技術的ウンチク、実績などロジカルな判断もしているが、それに加え色香に誘われて応募してくる傾向があるからだ。以前まったく勤務医の応募が来なかった医院のホームページと求人サイトの医院紹介ページに、美形若手スタッフを集め写真を実験的に並べたところ、以前と同じ求人条件でDRが殺到した例がある。このような事例は珍しいことではない。「鮎の友釣り」のようと嘆くことなかれ、色香を否定して慢性的人手不足に甘んずる理由はどこにもないのだから。

 

歯科衛生士の採用は、勤務医以上にイメージに左右されやすい。歯科衛生士としての働き甲斐を求めるのは当然のこととして、「おしゃれさ」「明るさ」「楽しさ」など自分自身のライフスタイルのイメージで歯科医院を選ぶ傾向があるからだ。歯科衛生士としての働き甲斐がわかっていても、感情的に好きになれない歯科医院には梃子でも就職しない。さらに院長が知っておかなければならなことは、歯科衛生士が就職先を選ぶ基準に「院長のイメージ」が大きなウエイトを占めていることだ。つまり、院長のイメージが悪いとその医院は、歯科衛生士に敬遠される傾向がある。院長の悪いイメージのNO1.は「不潔」で、続いて「自慢話」「ケチ」などを挙げる歯科衛生士が多い。まあ、これは歯科衛生士でなくとも同じ気がするが。

女性スタッフが集まらない医院には、優秀な勤務医も来てくれない。つまり女性スタッフに嫌われる院長の未来は暗い、と言える。歯科医院の求人は一にも二にも「院長のイメージ」にかかっている。