OP倶楽部発足会レポート

初島に志とエネルギーの高い歯科医師が集まる

OP倶楽部とは

歯科界の次世代を担う”知識と技術・心と感性”を備えたリーダー輩出するために、各界の有識者やリーダーをゲストに迎えての対話集会、Oral Physician 歯科医同士の意見交換の場として熊谷崇先生の発案で栃木県開業チョコレート歯科医院院長加藤広明先生が代表となりOP 倶楽部(おーぴーくらぶ)が発足しました。そのOP 倶楽部リーダー・ミーティングの発足会が、熱海のグランドエクシブ初島倶楽部にて、代表者の加藤先生、熊谷先生はじめ60名が参加し、開催されました。

私の挨拶

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倶楽部設立の趣旨を私が簡単に説明しました。少し長くなりますが、「歯科界の過去の繁栄は、経済成長と国民皆保険が原動力になってきたもので、歯科界や歯科医師会の努力の結実というよりは時代の産物であったことは、この20年間の低迷に手を打てていない状況を見れば明らかです。この膠着状態を打ち破るには、歯科村を飛び出して”強いリーダーシップと早い決断”ができるリーダーを輩出する会になって欲しい」といった内容のお話をさせていただきました。


詐欺師化する歯科界に一石

昨今の歯科界には、マイケルポーターの亜流のそのまた支流といったマーケティング手法が跋扈しています。流行の手法は「自由診療への誘導」「ITを使った集患」「キッズのビジネス化」などのアプローチで、いかに巧妙に患者を騙すかに執心しています。こういった狡知を考え出すコンサルタントも確かにワルには違いありませんが、それを加速させたのは本質を見失った歯科医師かもしれません。

コンサルタントの片棒を担ぐ歯科メーカーや出版社も含め、歯科界全体が詐欺師化の方向へ進んでいます。詐欺的なマーケティング手法の横行は、縮小した市場を前時代的意識と臨床体制で患者獲得競争に一石を投じるリーダーが歯科界にいないからだと思います。縮小市場に新たな市場を創造することは、歯科界の命題であることは自明のことですが、そのリーダーとなるべき人材の見極めが肝心なことは言うまでもありません。

しかし、価値をお金だけに置き、オレオレ詐欺のように巧みな心理操作で自由診療への誘導が上手い歯科医師を、勝ち組と賛美しているのが現在の歯科界です。こんな恥ずかしい状況を鑑みても、今回の次世代のリーダーを養成するOP倶楽部の発足は意義深く、期待は膨らむばかりです。そんな煮詰まった気持ちがあったからでしょうか、当日の演者と集まった歯科医師の声を聞いていると、澱んだ歯科村に涼風が吹き込んだような思いでした。(余談ですが、私のシニカルな発言にいくら批難を浴びても避難しないで歯科村に残る覚悟も涌いてきました)

ようやく予防の価値が歯科臨床に根付きつつある現在、マーケティングと歯科医療の本質を見極めることのできるリーダーを輩出して、歯科界はパラダイムシフトの1丁目1番地に立ったと言えるのではないでしょうか。

日吉歯科診療所理事長 熊谷崇氏のお話し

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歯科医師でない私から見た熊谷先生の魅力は、”強いリーダーシップと早い決断”、そしてダンディズムに尽きます。当日の挨拶も熊谷イズムを発散して、会場の歯科医師の気持ちを一気に高揚させていました。

その挨拶の中で印象的だったのは、「改革を促す者はその当事者と膝を交えて話し合い経過をフォローしなければならないが、その点が私には欠けていた」と仰っていたことです。

また、「予防を広めることはできたが、保険で行ってきため予防そのものの価値を上げることができなかった。

今年から予防を自費に切り替えてみて、今まで保険で予防を提供してきたスタッフの意識の在り方が変わった」という趣旨の発言は、健康保険制度の方向性を見極め、先件の明があると感じました。

30分程度のお話しでしたが、歯科医師を世知辛い歯科の現状に染まることなく、歯科の現状を高みから見る気持ちに導く様は、流石です。

OP倶楽部代表の歯科医師加藤大明氏の紹介

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軽妙洒脱な進行の中にキラリと光る一本どっこの精神。チョコレート歯科と命名する覚悟は決して甘いものではないことが、日経ビジネスオンラインの慶應義塾総合政策部教授上山信一氏との対談“歯科治療で始まるコペルニクス的転換”を読めば一目瞭然です。

今後の会の企画、運営には加藤氏の存在は欠かせません。当日の自己紹介で、MTMを都市部で実現することが大変と発言していた参加者(実は私もそう思っていましたが)に、間髪入れずに反論していた姿は印象的でした。

当日の演者・芳賀歯科矯正歯科クリニック院長芳賀剛氏

演題 「近況報告 ~改善と改革~」

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歯科大生の頃ユーラシア大陸放浪の旅をしながら”何でも見てやろう経験してみよう”とする沢木耕太郎ばりの学生時代の経験が、歯科医師芳賀剛さんの歯科医師としてのバックボーンになっています。東京に居る私からすると、郊外というよりは人がどこにいるのだろうと思う田舎で開業して、今では総勢16人のスタッフ体制の中規模歯科医院に発展。開業=場所と考えるステレオタイプな歯科医師には、ぜひ芳賀さんの話を聞いて欲しいものです。

当日の演者・岡山大学歯学部4年宇野修平氏

演題「なぜ私は年収1200万円をすて、歯科医師の道を選んだか」

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外資系大手企業での年収1200万と安定した将来を捨てて、歯科医師になった動機に、私たちの希釈された仕事魂は、打ちのめされました。忘れかけていた仕事の価値を見直す契機になった歯科医師も多いはずです。

宇野さんのような人材が歯科界に今後増えれば、既存の歯科医院の危機は単なる歯科医師過剰から、市場からの力量評価にステージが上がること間違いありません。

当日の演者・つきやま歯科医院理事長築山雄次氏

演題 「つきやま歯科医院の歩みと改革」

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いわずと知れた西の予防歯科の雄の築山先生が、「過去の私の予防はコミュニケーションの予防でした。もっとエビデンスを明確にした予防歯科が大切です」

と、仰った時は何とも言えない感動が押し寄せてきました。十分根拠のある歯科臨床を展開してこられた築山氏の謙虚に学ぶ姿勢には敬服です。

講演の内容では、産業歯科医として予防に取り組み、医療費を削減したお話は、秀逸でした。医療経済を考えるお役人を相手に、ぜひ講演をしていただきたいものです。