2011年6月アーカイブ

新潟のある市での開業プロジェクトに携わって1年近くになる。開業は数ヶ月先だが、この医院は必ず成功すると確信が持てる。その理由は一点のみ、開業歯科医が機会損失をしないスピード感を持っているからだ。これは歯科以外でも、経営者ならば誰しもが感じることだが、ビジネスをしていて何がストレスになるかといって、機会損失以外にない。失敗でも構わない。スピード感がない人は、失敗することにも時間がかかる。

停滞気味の歯科医院を見ていると、じわじわと成功のステップを踏んでいるつもりで、じわじわと失敗していくことに安心しているだけの医院もある。経営に延命処置を持ち込まないのが、私の主義だ。早く失敗して、失敗を繰り返す機会が多いことが、経営はもとより人生設計において大切と思うからだ。

私は、教員、サラリーマンを経験して、現在は零細な会社を経営している。これまであらゆる「できない人」を見てきた。「できない人」の共通項は機会損失を繰り返すことだ。では、機会損失をしないためにはどうすれば良いのか?当たり前のことだが、スピードをあげることだ。スピードアップは、仕事時間×集中力の結果だ。人の能力には大きな違いはないと思っている。私の知る「できない人」は、単にスピード感を持って働いていないだけの場合がほとんどだった。「できない人」の時間消費方法は、仕事もどきに使う時間が長いことだ。つまりは仕事をしていないのだ。

停滞気味の医院の院長は、自己啓発セミナーや訳の分からない経営セミナーに参加して、仕事をした気になって、肝心な診療に携わる時間が少なくなっている。やはり「できない院長」も単に仕事をしていないだけである。「できないスタッフ」の特徴は、歯科医ならばやり直し治療に時間を使い、DHならば取り残しの歯石のためのメンテナンスに追われる。つまり「やり直し」をすることが仕事になって、機会損失をしているのだ。

経営とは、機会損失を無くすスピードを手に入れることだ。







歯科医院のパンフレットやホームページの文章を読む機会が仕事柄多い。時として、この先生はカウンセリングの時どのような言葉を使っているのだろうか、とても気になる。それというのも、患者が読むホームページなどに難解な医学用語を平気で使っているからだ。気がつかないというよりは、医学用語や専門用語を使うことで、ある種の権威付けを意識している節もあるのだから考えが浅い。

ドアノブ•クエッションという言葉がある。初診患者が最初の診察と会話を終えて、医者の説明が理解できずに帰り際ドアノブのところで立ち止まり、先生、私は「○○○」でないですよねと、不安げに訪ねる様を指していう。誰しも経験していると思うが、医者の診断を受けて、はやりの「風邪」を「感冒」などと言われると、何かタチの悪い病気にかかったのかと思う時さえある。さすがに歯科の場合は、専門用語の羅列で深刻な気持ちにはならないであろううが、重い気持ちには変わりない。

私が経験した例で、若い歯科医師が、患者に対してスタディーグループで使いまわされる「予知性」「侵襲的」「審美性」「進行性」「不可逆性」などの言葉を連発して患者にカウンセリングをしていたが、患者の表情を見ると、いかにも不思議そうな顔をしながら、最後に「良くわかりませんが、保険でやってください」で終わった。こんな空しい思いをしないためにも、パソコンに入力する文字が正しく変換されない専門用語は、患者には通じないと思い対話するべきである。

以前、コピーライターの糸井重里氏が、「この香水はウンコのような香りはしない、すばらしい香りです」という文書があったら、論理的にはこの香水はとてもすばらしい香りと伝えているのは理解できても、生理的に「ウンコのような」ばかりが目や耳に入ってきて悪いイメージしか残らないでしょうと、話していた。歯科医師の専門用語の連発もこれに近いものがあり、平易な言葉で話さなければ、意図するQOLやホスピタリティーの向上も生理的に伝わりづらくなる。

歯科医師は文書を書くとき、言葉を発するとき、「意味で考え、生理でチェックする」ことが
大切である。


杉並区の顧問先コンサルティングが昼過ぎに終わり、駅に向かっていると雲間から薄日が漏れてきた。急遽、千葉郊外の開発地域のマーケティングに向かう。現地調査は、お天気次第の進捗になるので、梅雨時の晴れ間は特に貴重だ。予定外のため、電車で最寄りの駅まで行き、レンタカーを借りる。

1980年代終わりから90年代にかけて、大手ディベロパーから総合スーパーへの歯科医院への出店のオファーがあり、多くの歯科医院を紹介した。当時は商業施設としては、総合スーパーは先端をいった存在であった。しかし、20年あまり経過した現在、総合スーパーは衰退傾向にあり、現在はテナントミックス建屋とスーパー本体で構成するSCが全盛だ。調査地の千葉市北東部もSCと中規模スーパーの出店が目につく。高齢化社会になって、東京の都市圏が10キロ程度縮小して30キロになった現在、この地は旧都市圏の40キロとの中間に位置する微妙な商圏ではあるが、平日の昼間で商業施設の駐車場は30%程度埋まっている。まあまあイケル感触だ。

しかし都市圏の縮小が進む状況で、郊外出店による「立地独占」という戦略はいつまで続くかわからない。SCのマスマーケティングに相乗りする歯科開業も、その効力頼みでは立ち居かなくなる日は遠くはない。経済条件の高いSC内での歯科医院経営はどうして行けば良いのだろうか。答えは、既存患者の活性化に集約される。つまり、いかに既存患者との関係を強化し、自院医療サービスを繰り返し提供していけるかにかかっている。今後、商業施設内歯科医院経営は、①ブランド構築による認知度向上のため広告宣伝と②一度来院した患者に対して継続的かつ適切なアプローチを行い、自院医療サービスの継続的利用を働きかけていかなければならない。

現実、顧問先のSCのレジ通過数は減少傾向にあり、それに伴い医院の新患数も減少してきている。商業施設のマスマーケティングに頼った医院経営や焼き畑農業的な経営手法から脱却する時期が、高齢化社会とともに医院経営にも押し寄せて来ている。






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