コンサルブログ

過労死症候群の歯科医院

コンサルブログ | 2017年11月14日

電通の新入社員の高橋まつりさんが(享年24)、過労のためうつ病を発症し、「働くの、つらすぎ」「眠りたい以外の感情を失った」と言葉を残して昨年の11月に自殺してから1年が経ちました。

この事件をきっかけに厚労省で過労死防止対策白書なるものが毎年発表されていることを知り、平成28年度版の過労死白書の数字を追ってみました。過労死ラインとされる1ヶ月の残業時間80時間越え、つまり週労働時間60時間以上の雇用者数は、2015~2016年をピークに穏やかに減少しています。それでも週60時間以上働いている雇用者は全体の7.7%に当たる429万人もいます。

それ以上に私が着目した点は、週労働時間60時間以上働いている法人役員が9.3%、自営業者は13.6%いることです。この13.6%に含まれる歯科院長も少なくないはずです。労働時間だけを見れば、雇用者よりも雇用主の方が日本では過労死の瀬戸際に追い込まれているように思えますが、一概にそうとは言えません。

電通の高橋さんの自殺前のツイッターの書き込みにも「男性上司から女子力がないと言われるの、笑いをとるためのいじりだとしても我慢の限界である」とあるように、上司からのパワハラやセクハラなど職場での人間関係のストレスが、雇用者の長時間労働の疲労感を増幅させているのです。その結果、雇用者は長時間労働に加えストレスが、過労死へと追い込まれていく一因になっていると考えられます。

この点、雇用主の歯科院長は自分の裁量で仕事ができるために、長時間労働を避けられる立場にいます。また、過労死のもう一つのファクターである労働環境も自らの才覚で変えることができます。そのため、週労働時間60時間以上の割合が雇用者(7.7%)よりも遥かに多いの雇用主(13.6%)が、過労死ラインに存在しているにも関わらず、問題化されないのでしょう。しかし、最近の歯科医院を見ていると、そうとも言えない自縄自縛の状況になってきています。

医業収入が停滞する現在、歯科では予約サイトや内覧会業者を導入しなければ、経営が不振になるという風潮から、利便性を求める患者を受け入れるサービス体制にコストを投下して、医院が疲弊していくケースが散見します。集患のための経営計画が、知らず知らずのうちに過剰サービスとなり、労働環境の悪化を招き、雇用が不安定となる傾向が目立ちます。その結果、院長自身の雑務も増えるというオウンゴールによって、医院全体に過労のシグナルが点滅しています。それにも関わらず、利便性に突き進む医院は、まさに思考停止状態の過労死の前兆に踏み込んでいるように思えます。

過剰サービスが労働問題に発展した事件として記憶に新しいところでは、宅配便業者の当日配送や時間指定配送、無料再配達などによるセールスドライバーの労働環境の劣悪化です。「年々苦しくなってきて、あと30年これを続けることが想像できなくなった」と、宅配便ドライバーは吐露しています。「働くの、つらすぎ」と言って亡くなっていった高橋まつりさんと同様に無気力状態に追い込まれているわけです。歯科院長の思考停止状態は歯科を宅配便業界と同じような道に貶めるように思えてなりません。

宅配便業界と同じ轍を踏んでいる一例が、キャンセルする患者の際限のない再予約です。さらには一定のキャンセルを見越して、同時間帯にネット予約枠を入れたりすることで、アポイントは過密になり、予約時間通りに診療が始まらない、すると今度は予約時間通りに始まらないことを見越して患者が来院してくる。こんな歯科医院だからキャンセルするのも気にならない患者が増えてくる、といった悪循環に陥るのです。それもこれも便利さを求めるコンプライアンスの低い患者を、コストをかけて集める過剰サービスに端を発しています。集荷率を上げるため時間指定配送と無料再配達をすることで、自社ドライバーは過労死寸前にも関わらず、不正をして事業を存続させた宅配便業界と、歯科医院の集患計画は同じ次元と言えます。

過剰サービスに慣れた生活者が患者に変わる時、歯科医院は電通や宅配便業界のようになり得ることを学ぶべきです。生活者にとって当たり前になった過剰サービスをそのまま歯科医院に呼び込むことは、院長・スタッフ全体で過労死症候群への第一歩を踏み出すことになります。医療の本質とは関係のない過剰サービスによって、歯科医院が乗っ取られるような過酷な働き方を当たり前にしてしまっているのです。また、医療の本質以前に利便性ばかりが優先されることは、歯科医院そのものが自殺するに等しいのではないでしょうか。

高橋まつりさんの自殺の後、元電通のコピーライターの前田将多さんは、「恐ろしいのは電通でもNHKでも安倍政権でもない。どこにでもいる普通の人たちだ」と、言っています。戒めにしたいものです。

獣医栄えて歯医者廃る

コンサルブログ | 2017年10月13日

最近、居抜き譲渡されている歯科医院を見る機会がありました。譲渡理由は「院長の病気のため」とのことですが、多くの場合のそれは建前にすぎません。

居抜き医院の外壁はひび割れ、待合は薄暗く、古いユニットが4台並列に置かれ、壁紙は黄ばみを帯びていました。この陰鬱な雰囲気を好んで通院する人はいないのでは、と思いながら一度外に出ると、ガムテープで補修された医院看板には、かすれた文字で「健康保健医療機関」「新患随時受付」と書かれていました。

フッと歯科医院の前方道路の向こうを見ると、車庫入れしているメルセデスと駐車中のレクサス。その背後のコンクリート打ち放しのモダンな建物には、大きなフィックスガラスからこれ見よがしにアルフレックス風ソファのあるロビー広がっています。動物病院です。

一方ひび割れた看板さえも新調できずに廃院していく歯科医院、通りを挟んで犬猫が高級車に乗って運ばれてくる動物病院との格差は、以前では想像すらできませんでした。しかし、人を診る歯科医院が廃れペットを診る動物病院が栄える理不尽な構図は、起こるべくして起こっている現実と捉える必要がありそうです。

その理由の一端は、動物病院は自由経済のビジネスであり、歯科医院は統制経済のビジネスだからです。動物病院の獣医は、ペットの健康のためならば支出を惜しまない飼い主に快適な施設と医療の品質を提供する一方で、治療費を払えない飼い主のことなど気にとめる必要もないわけです。

それが、治療の対象が動物から人に変わると、すべての国民は安い費用で医療サービスを享受できる国民皆保険制度に規制され、自由よりも平等が優先されるようになります。その結果、多くの歯科医院は健康に関心のない人を診療していても生計はなんとかなるために、医療の品質や快適な環境のことなどに関心が薄れていきます。考えるだけ無駄だからです。それでもなんとかやっていけてしまうことで、医療者としての成長と人生設計の思考が停滞することが、国民皆保険制度の怖さです。

50年前は最新鋭空母カールビンソンだった皆保険制度は、今では中国空母遼寧にそして将来は泥舟になりつつあります。国民の高齢化により労働人口が減れば保険財政の歳入も減る、さらに高齢者が増えれば一人当たりの医療費の増大が加速化し、このまま行けば国民皆保険制度の財政破綻が避けられないのは自明の理です。皆保険制度破綻の先延ばし策として、国は歯科医療機関への支払いを渋り、買い叩き、財源減少の調整弁としてきたわけです。

劣位の調整弁から優位な歯科医師になるには、今のところは自由診療を拡大していくことが順当な考え方と言えるでしょう。すると歯科医師は、保険適用外の治療や最新医療機材に関心がいきがちですが、それは二の次です。獣医のように、自由診療にお金を惜しまないペットの飼い主の気持ちを学ぶことが優先されます。

あるいは、ペットの飼い主の心理よりも「お受験」をさせる親の心理の方が、自由診療を選択する患者心理に近いかも知れません。「お受験」ならば、歯科医師も想像に難くないでしょう。その心理を整理すると、

  1. 高学歴とりわけ有名大学卒の生涯年収の高さを見込んでの「投資」
  2. 衣服やバッグのように子供の学校をブランドとする「自己実現」
  3. 公立校や底辺校での子供のヤンキー化やイジメを避けるための「安全保障」

大きくこの3か条を挙げることができます。

「投資」「自己実現」「安全保障」の3か条は、そのまま健康観の高い患者が歯科医院に求めることに当てはまり、とりもなおさず近い将来の歯科医師の人生設計の基本形になります。この50年あまりの歯科医院の経済的な問題は国民皆保険制度の含み益によって解決することができましたが、これからの十数年ですべての前提が劣化する可能性が高くなったわけです。そのため歯科医師は人生の再設計を考え、患者本位の歯科医療を捉え直す必要に迫られることになるのです。さもなければ、ひび割れた看板と共に歯科医師人生を終えていくことになるでしょう。

しかし、この状況をいたずらに悲観する必要はありません。時代の大きな変化は、歯科医師に新たな可能性を与えてくれるからです。

「診療科目を売るのが広告」?

コンサルブログ | 2017年8月30日

「こんなチラシが送られてきたのですが、どう思いますか?」と、尋ねられることは少なくありません。夏季休暇前に歯科医師から送られてきたチラシを見ると、キャッチコピーに“自費戦略で増患対策”とあり、「自費患者が月に30人以上増えました」と笑顔の写真入りで歯科医師がコメントをしていました。

この手のチラシやメールにうんざりして、効果に半信半疑な歯科医師も多いと思いますが、ネット印刷会社の調査からは需要は年々倍増していることがわかります。

このような「物売り広告」は、表現だけが騒々しく華やかですが、生活者の気持ちを動かす力はなく、実に幼稚で子供っぽい感じがします。総じて流通小売業界の二番煎じで中途半端な代物なのですが、この15年余りで何がどう間違ったのか、「診療科目を売る広告」が歯科界の主流として定着してきました。

しかし、年々増加している歯科医院の物売り広告の70%以上は、無駄遣いに終わっているように思います。70%という数字には根拠はなく、何となく大まかな予想に過ぎませんが、本心を言えば90%は無駄、としたいぐらいです。

そんなことを言えば、「現実に新患が増えた」、「増収になった」という反論があるかもしれません。確かに、そのようなことは一時的にありますが、患者の大半は他の医院で不満を持っていた、とりあえず今の不都合さえ解決すればいい、などの来院動機の低い人です。少なくとも、医院の診療方針などを理解して来院したかどうかは非常に疑わしいのです。

歯科医師に限ったことではありませんが、人はしばしば間違いを犯します。それは仕方のないことですが、色々な間違いの中で一番やっかいな間違いは、物事を始めた時の間違いです。歯科医院では、開業した時です。この時期はまだ十分な知識やチェック機能がないために、間違っている認識がないまま、いつの間にかそれが既成事実化して医院の体質となってしまうためです。このような危なかっしさが、歯科医院の広告(ウェブサイトも)には潜在しています。

大半の歯科コンサルタントや経営的歯科医師の書物を見ると、「こんな表現だと自費に繋がります」、「こんなキャッチなら患者が増えます」など、総じて広告は商品(診療科目や利便性)を売るためのコミュニケーション活動のようなことと語っていますが、それは全くの間違いです。彼らは広告(アドバタイジング)とプロモーションの違いを理解していないのです。ついでに言えば、厚生労働省の『医療広告ガイドライン』は、正しくは『医療販売促進ガイドライン』とするべきです。彼らの不勉強はさておき、これからの歯科医師には広告の真髄をぜひ知っておいてもらいたいと思います。歯科医院運営の骨格になるのが、広告なのです。

少し理屈っぽい話ですが、全日本広告連盟の『広告綱領』には、「広告は商品やサービスを正しく人に伝えるとともに暮らしを生かすアイデアを提供し、快適で充実した生活の実現に役立てる。広告はまた、企業の経営理念・活動と社会的使命を人々に知らせることにより企業への理解と信頼を増進する。広告はさらに、コミュニケーションの手段と技術を通じて高い文化性を生み出しよりよい社会の実現のため貢献する」とあります。まさに社会の中で歯科医院のあるべき姿を言い表しています。

つまり、広告は診療科目を売りにするものではなく、患者や連携医療機関、ステークホルダー、そして地域との信頼関係をつくるものです。さらには、歯科医院が長期に渡って存続していくために必要不可欠な信頼関係をつくるコミュニケーションなのです。マーケット・シェアばかりを意識するのではなく、マインド・シェアを高めることが広告の真髄です。

患者や地域のマインド・シェアを高める歯科医院って、素敵だと思いませんか。ぜひ、広告体質の歯科医院を目指して欲しいと思います。

日野原重明先生へレクイエムを

コンサルブログ | 2017年7月20日

綿菓子のような優しい笑顔の日野原先生と一緒に

著名人が亡くなると、故人の教えや思い出をblogでしたり顔で語る輩が出現し、図らずもインターネット社会の浅はかさが露見します。かく言う私も日野原先生の訃報を知り、日野原先生の社会性の高さを伝えることで厚顔の誹りを免れませんが、レクイエムの代わりとしたいと思います。

日野原先生に関心を抱いたきっかけは、当時社会を震撼させた赤軍派による「よど号事件」の人質の代表となった若き日の日野原先生の正義感の強さにあります。日野原先生を人質にして北朝鮮に亡命した事件の当事者が、日野原先生の訃報を知り弔意を産経新聞に寄せていますが、この内容を読むと日野原先生の人間力の高さが伝わってきます。

産経ニュースサイトへリンク

日野原先生の医療人として評価の高さは、常に社会に繋がりその時々の社会問題を自分の正義を持って判断し、解決してきたことにあると思います。

「よど号事件の人質代表」や「地下鉄サリン事件における聖路加国際病院の解放」などの事件への対応然り、「成人病を『生活習慣病』と改称して予防意識の普及」や「医師と患者の対等意識の喚起」然り、「総合的健康診断『人間ドック』の開設」や「看護師教育の充実と看護師業務の拡大」などの医療問題へのアプローチ然り、総てが社会正義と社会貢献に裏打ちされています。

医療人として常に社会と向き合う、“世のため人のための”実践者だったと思います。振り返って歯科界には、未だ業界利益を気にする内向き志向が蔓延しています。しかし、“世のため人のための”を本気で願う歯科医師も出現しつつあります。

日野原先生からすれば大抵の歯科医師は小学生のようなものです。濁りきった精神の私には、小学生に向けた平易な文章だけに余計に鮮烈に感じますが、本気の歯科医師の方は、日野原先生の「いのちの授業」最後の連載には勇気づけられるはずです。

「君たちのまっすぐな心で世の中をよく観察してほしいと思います。そして、正しいと思うことをしっかりと行動に移してください。自分の心に恥じない生き方をつらぬいてほしいと希望します。」

と、あります。

WELQと週刊現代から学ぶもの

コンサルブログ | 2017年7月17日

顧客website アンケートに寄せて

新聞、TV、雑誌、インターネットなどの情報媒体を通じて、私たちは健康医療情報や特集を目にしない日はありません。私たちを取り巻く情報のトレンドは、身近な交通広告からも見て取れます。駅舎からホームにかけての看板の広告主は教育産業と健康産業、そして医療機関が大勢を占めています。電車に乗れば中吊広告やデジタルサイネージから発信されているのは、政治経済・芸能ネタを制して水素水、糖質制限、芸能人のガン闘病記など、健康医療情報に数多な関連情報が加えられて発信されている状況です。こんなことからも健康医療情報は、多くの人の関心を集めるキラーコンテンツであることがわかります。

『週刊現代』歯科特集から学ぶ

健康医療情報に取り囲まれた現在、長くにわたり歯科医院現場を見てきた私からは、メディアの医療情報には、針小棒大、脚色過剰で、眉をひそめたくなる内容も少なからずあります。その最たるものが、11/5号の『週刊現代』の医療キャンペーンです。週刊誌の持ち味は、一言でいえばセンセーショナリズムですが、その前提は確かな論拠に基づき、メリットとデメリットを踏まえて報じる姿勢が求められます。しかし、『週刊現代』の歯科特集は、デメリットばかりを強調することによって、歯科医療知識の乏しい生活者の関心を煽るばかりではなく、歯科関係者をも煽動して雑誌の購買数を上げるという手練手管が、一読して見え隠れしていました。

案の定、何人かの歯科医師が自らのblogでこの記事に対し言及して、まんまと講談社の『禁じ手』に乗っかっていました。というのは、『週刊現代』の歯科批判を歯科医師自らがネットを通じ拡散して、週刊誌の販売促進にひと役買うお人好しを演じたことになるからです。全くもって気が滅入ってくる話です。話は横道にそれますが、出版社は一般人からの購買よりも全国10万人余りの歯科医師のひんしゅくを買うことで、歯科医師の購買意欲を刺激できると、そろばんを弾いていたわけです。歯科医師はblogを書く暇があったら、編集部に抗議電話の2~3本も入れて憂さ晴らしをするしかありません。翻って、歯科医院のwebsiteでも『週刊現代』まがいの「それは健康によくない」「健康保険では・・」といった表現で科学的知識が乏しい生活者をカモにしているようでは、信頼性を置き去りにしいる『週刊現代』と同じ穴の狢ではないでしょうか。

DeNAも歯科医院もSEO対策は同じ

『週刊現代』の歯科特集のような論拠薄弱な情報が、新聞・TVよりも野放しにされているのが、インターネットであることは誰もが知るところでしょう。11月に上場企業のDeNAが運営している月間ユーザー数2000万人の健康・医療情報サイトWELQが休止に追い込まれたのは耳目に新しいところです。このことは、改めてインターネット情報の危うさを浮き彫りにすると同時に、健康医療情報への生活者の関心の高さを社会に示す結果となりました。TVの視聴率、新聞・雑誌の発行部数にあたる数字が、インターネットでは検索順位になります。健康・医療のまとめサイトWELQは、掲載記事の信頼性を問う声が以前から聞こえてきましたが、今回の休止騒動で図らずも検索結果を人工的に上げるSEO対策にも非常に力を入れていたことが露見しました。私は仕事柄、医療用語などをよく検索するのですが、必ずといっていいほど、厚生労働省サイトやメルク・マニュアルよりも上位にくるサイトがWELQでした。そうするとWELQの病症説明をなんとなく読んでしまうのですが、「なんとなく」では済まない長文に出くわすことが度々でした。しかし、メルク・マニュアルでは同じ病症説明でもWELQの1/5程度に簡潔に説明されています。ですから、WELQサイトを訪れる気はさらさらないにもかかわらず、検索すると必ずメルク・マニュアルの上位にくる鬱陶しさには閉口したものです。

WELQ休止で付随して報じられているWELQのSEO対策への執着を知って、WELQの饒舌な長文説明文は、Googleの検索上位対策の肝だったことがわかりました。WELQに関する一連の記事で専門家がSEO対策に言及していますが、それをまとめると以下のようになります。

リンクの基本原則

  • ○他の多くのサイトからリンクされている
  • ○優良またはその分野専門サイトからリンクされている
  • ×関連性のないサイトからのリンク
  • ×意図的に作ったサイトからのリンク

コンテンツの基本原則

  • ○サイト内容の十分な専門性
  • ○内容に添った文章量が多いこと
  • ×他のサイトのコピー文書
  • ×文脈に関係ない単語が羅列されている
  • ×閲覧した人がすぐに退出すること

何のことはありません。誰もが知っていることばかりです。WELQはSEOの基本原則を徹底したことに加え、一般的なwebsiteでは不可能な超長文を用意した結果の検索上位だったわけです。しかし、このことによって冗長な文章を書き流して、生活者が最後まで読まない文章や理解されないようなコンテンツを作っていては、本末転倒と言わざるを得ません。言い換えるとwebに限らず世の中ものは全て、ヘッドラインではできていないためキャッチーな見出しでは信用を得ることはできないのです。つまり歯科医院でしたらコンプライアンスの高い患者に来院してもらうには、何よりも文脈が重要ということです。

顧客医院websiteアンケートへの所感としては、即時解決できない辛口のコメントになってしまいました。生涯顧客として患者に寄り添うには、科学的視点に立って、患者と歯科医院の文脈をwebsiteで展開していくことが重要です。クレセル顧客のwebsiteがwebsiteのスタンダードとなり、歯科界の主流となることを願っています。

予約制と新患随時の矛盾

コンサルブログ | 2017年7月14日

「完全予約制」と「新患随時受付」の二律背反する併記。こんな書き出しに「なぜ二律背反?」と思う歯科医は、少なくないかもしれません。そんな向きでも、「借りすぎに注意」と注意しながら「いつでもどこでも手軽にキャッシング」と謳う大手銀行の広告には、「なに都合の良いことを言って」と思うのではないでしょうか。しかし同じような矛盾が、歯科医院の受付ではまかり通っています。

歯科医院の案内やウェブサイトでは、「完全予約制」と「新患随時受付」の併記は当たり前になっています。歯科医から依頼があれば、私の事務所でもパンフレットやウェブサイトを、特に気に留めることもなく「完全予約制」と「新患随時受付」を併記して制作しています。時として「完全予約制」と「新患随時受付」も入れておきましょう、とアドバイスさえしているかもしれません。

ところがこのアドバイス、親切でも何でもありません。と言うのも「キャンセルが多い」「アポイントが守られない」「昼休みがない」「残業が多い」といった歯科医院で頻発する初歩的問題は、「完全予約制」と「新患随時受付」の併記に因を発しているからです。無自覚にも私たちは罪深きアドバイスをして、大手銀行のように抜かりなく仕事の種蒔をしていることになります。

残念なことに「予約制」や「完全予約制」の併記は歯科医院の常識となっています。常識化した背景には、「応召の義務」の名残だった「新患随時受付」が定着した歯科医院に、欧米の自由診療歯科の影響と予防の定期管理化による「予約制」が普及したことにあります。予約制が定着して形骸化した「新患随時受付」は、それでも患者獲得のため歯科医院に表示され、「完全予約制」と「新患随時受付」併記が常態化したわけです。このような矛盾は、歯科医院数の過剰とDMFT指数の向上による患数の減少を因とする医院経営のご都合主義から発生しています。

それでは歯科医院にとって、新患数はどのように経営に影響を与えるのでしょう。新患数を積み上げてきた結果、月間レセプト枚数250枚を超えて300枚に届かんとする頃、多くの院長は翌週のアポイントの埋まり具合を気にすることなく寝床につけるようになり、「一山越えた」と実感する時期です。すると次に「キャンセルが多い」「残業が多い」という問題が寝付きを悪くさせます。先に述べたように、この問題は表記しようとしまいと「完全予約制」と「新患随時受付」の両立は、成り立つ道理がないことを行う経営上の情実が原因です。「情実」と表現するのも、それが原因とわかっていても止むに止まれず「新患随時受付」を行っているからです。

「新患数は?」「新患来た?」「新患減った?」と歯科医がラッパーのように発する新患数の実態は、いったいどの程度なのでしょうか。歯科医院の平均新患数は診療日×1.3人といったところです。この計算からすると月間20日稼働の医院の新患数は26人程度になります。この月間26人の新患数を多いと感じるか少ないと感じるかは、医院の立地や診療体制によるところになります。ちなみにGMS規模の商業施設では月間新患数は100人超が平均的ですし、10万人程度の地方都市のGP医院の場合は、月間新患数は20人を切るのが普通です。ユニット数が約4台前後の歯科医院新患数は1日約1人と思っていいのではないでしょうか。つまりかように歯科医院にとっては、新患は貴重な経営資源なわけです。ですから、「飛び込み新患」に対して受付が、「当院は予約制ですから・・・」などと、素っ気なく断りを入れる声が治療中の院長に聞こえようものなら、タービンを持つ手が震える気持ちもわかります。しかし、「飛び込み新患」は、情実入学した学生同様に出来が悪いのが常です。既往患者の診療時間を遅らせてまで診療しても、その後のリピーターになるどころか遅刻・キャンセル・中断患者となる可能性が極めて高いのが「飛び込み新患」です。

このような立地頼りの新患集めをする診療体制の象徴が、「完全予約制」と「新患随時受付」併記なのです。この体制は、受付がよほどマネジメントに長けているか、あるいは院長が患者の診療経過と予後に無関心でなければ、中長期的には成立しません。それよりも新患受け入れを制限して、既往患者をできるだけ早く完治に至る診療計画(=通院計画)を立て、既往患者が通院のたびに満足する診療体制で迎え信頼関係を築き、早期の完治から定期管理への流れを作ることが、医療者も患者も満足できる本来の歯科医療サービスの在り方です。新患も既往患者も八方美人的に受け入れて、待ち時間が長く待合室は混雑して、再診は1ヶ月後なんていう歯科医院は昭和40年代の遺跡です。こんな医院は、一見患者本位の医院で流行っているようですが、新患にも既往患者からも少しずつ満足度を奪っていって、時間とお金に不自由で健康観の貧しい患者にしか人気がなくなり、院長の体力低下に伴い衰退する歯科医院の典型です。「完全予約制」と「新患随時受付」の併記には、このような暗い未来予測しかできません。それよりも「不便な患者に便利な歯科医院」にならないために以下のことを実施してはどうでしょうか。

  • 「新患随時受付」の表記を止める
  • 最短完治を目指し予防管理を定期的に行う医院方針を伝える
  • 初診時に医院方針をきちんと伝える時間を持つ
  • 来院時の歯磨きをすることを受診ルールとする
  • キャンセルは医院方針と逆行することを伝える
  • 医療側も患者側も双方時間を守ることを伝える
  • 医院からの情報を読み保管することを伝える
  • 新患受け入れまで数ヶ月かかる評判をつくる

上記のことを徹底すれば、「完全予約制」の医院ができあがり、患者もスタッフも院長も満足度の高い歯科医院になること、間違いありません。

文京区小石川の歯の神様

弊社より徒歩4~5分のところにある源覚寺は夏目漱石の小説にも登場する「こんにゃくえんま」で有名ですが、実は知る人ぞ知る歯の神様「塩地蔵」が境内にまつられています。
その名の通りお地蔵様の周りにはもとの姿がわからないほどに”こんもり”と塩が盛られています。お地蔵様の体に塩をつけてお祈りすると同じ部分の病気が治るのだとか。
歯科の「完全予約制」が浸透することで、歯でお困りの方が減り塩地蔵のお役御免の日が来ることをお祈りしてまいりました。

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歯科の医療広告ガイドライン

コンサルブログ | 2017年7月8日

脱毛や脂肪吸引などの美容医療の受診トラブルが頻発していることは、メディアの報道からも周知のことです。美容医療のトラブル相談は、内閣消費者委員会によると2011年度約1600件から、2014年度約2600件と急増しており、このような事態を受けて、厚生労働省はホームページ(以下HP)の広告規制の検討会を立ち上げることになりました。現在は、利用者が自ら検索して閲覧するHPは広告規制の対象外となっており、医療機関の自主規制に任せられています。

次に、歯科医院HPで医療広告ガイドラインに抵触しながらもよく使われている具体的な例や表現を列挙してみます。

  • 加工修正した術前術後の写真の掲載
  • 著名人との関係の強調/○○プロダクションと提携
  • 「絶対安全なインプラントを提供します」
  • 「他院で断られた難しい症例も成功します」「1日で全ての治療が終わります」
  • 「当院は○○研究所を併設しています」「○○センター」
  • 「○○研究会最高顧問」「○○学界認定(活動実績のない)」
  • 「○○実績日本一」「No.1」「最高」「○%の満足度」
  • 「当院は県内一の歯科医数」「インビザライン、日本有数の実績」
  • 「無料相談された方に○○をプレゼント」「ただいまキャンペーン実施中」「○月までホワイトニング50%オフ」「○○し放題プラン」

上記表現以外に医療機関は、薬事法、健康増進法、不当景品類及不当表示防止法、不正競争防止法によって規制されます。

このような法規に照らして、最近ではインプラント以上に苦情件数が多いとされる矯正歯科のHPを検証してみました。検証の仕方は、HPのトップページ/コンセプト(相応)/スタッフ紹介(経歴等)/治療についての4ページに限定して、上位表示されるある矯正歯科ポータルサイトのランキング1位~3位の11医院のHPを対象としました。

11医院の広告規制抵触表現の平均数が約4.5、上位ランクのHPほど違反数が多い傾向にありました。判断は私の主観に左右される部分もありますが、4ページ限定でも多くの違反と思われる表現があり、他のページやブログ、貼られているバナーなどを検証していけばさらに違反箇所は増えることはまちがいないと思います。今回検証したHPは誘引性と誇大表現の塊にも関わらず、SEO対策を施していることから上位表示されています。このようなHPが、生活者の眼に留まることで歯科医療トラブルは増えること傾向は否めないでしょう。

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因みに最高裁の公表データによると、2010年の医療訴訟件数は896件で、そのうち72件が歯科ですから、全体の8%を占め、内科、整形外科、産婦人科につぐ多さです。医療訴訟と聞くと、「治療ミス」を想像される向きも多いと思いますが、歯科の訴訟で多いのが「説明義務違反」の事例です。よくいわれる「情報の非対称性」により、歯科医師は患者が適切な治療方法を決定するために十分に情報を提供する「説明義務」を負っています。しかし、美容医療同様に患者情報の窓口となるHPが誘引と誇大表現の塊では、真っ当な患者説明などできるはずがありません。

医療訴訟全体はゆるやかな減少傾向にあるに拘わらず、歯科は徐々に増加傾向にあります。歯科医師とともに私たち歯科関連事業者も多いにこの数字を恥じ、生活者の理解を助け深める情報発信をしていかなければ、歯科の社会的評価は凋落していくことでしょう。

内覧会を考える

コンサルブログ | 2017年7月5日

内覧会業者の実態

昨今の歯科医院開業では、ほとんどの医院が内覧会を行います。その中で、内覧会業者を使う医院は6割程度で、内覧会業者も雨後のタケノコのごとく「歯科専門」と称して存在しますが、その実態はいかがなものでしょうか?

例えば、自称リーディングカンパニーの内覧会業者の社長は、都心部の集客施設で、数件の歯科医院を運営していた医療法人に在籍していたはずです。その法人のマーケティング手法は、立地優位性の高い場所で出店すること以外これといったものはなく、最後には分院を居抜きで売却して繋ぎ資金として、約10年前に破産しています。
内覧会業者はこの会社に限らず、歯科のマーケティングや医院運営に長けているわけではありません。その多くは、マンションや介護施設向けの内覧会業者が直接、あるいは他業種の傘下で、歯科へ参入してきているのが実態です。

そういった内覧会業者の実際の内覧会現場を見ると、歯科経営のノウハウがあるように見せてはいますが、ほとんどは実態がないと感じられます。

内覧会業者の功罪

内覧会業者を使った場合の成果は、なんといっても新患の予約にあります。
多くの業者発表とは違うと思いますが、私の知る十数件の医院が、内覧会業者を使用した数字を平均すると、内覧会の参加者数は、主に土日2日間で130~200人程度、予約数は30~60件程度です。新規開業の医院にとって、この予約数が大きな魅力であることは間違いありません。

ショッピングセンターなど商業施設での開業では、内覧会業者を使用しないと、開業1ヶ月後の新患数は100人前後です。
商業施設等での開業で内覧会業者を使用すると、内覧会を開催した日に新患予約が集中しますが、開業1ヶ月後の新患数は、内覧会業者を使用しなかった場合と、ほとんど変わらない傾向があります。
このことから、認知が弱い立地の医院の方が、内覧会のメリットがあるように思われますが、立地の悪い医院は予約数もあまり期待できないことも付け加えておきます。結局は、内覧会の成否の多くは、開業地の立地に左右されているのです。

次にマイナス点をあげます。予約は取ったがキャンセルが多い、あるいは問題のある患者が多いなどの声を聞きます。このことは、誘導的に予約しているわけですから、コンプライアンスの低い患者が多くなることは、当然の結果といえます。また、内覧会開催時に、パンフレットに食べ物を添付しているなどと同業者ないし近隣から、強引に予約を取られたなどの患者からのクレームが保健所へ寄せられることも少なくないと聞きます。

内覧会の意義と価値

歯科の内覧会は20年以上前から行われており、決して新しいマーケティング手法ではありません。内覧会を行う意義は、生活者の医療機関への敷居を低くすることと、自院のあり方を伝えることにあります。

私の経験から、地域の生活者は、来院経験がなくとも4~5軒の歯科医院を認知しています。開業早々に来院してもらえなくとも、まずは地域の生活者の記憶に残ることが大切です。その後、生活者に歯科が必要になった際に思い出してもらい、過去に通院した医院と比べてもらえる契機と、自院の取り組みを伝えることが、内覧会を開催する意義です。

しかし最近では、内覧会業者が介在することで、内覧会の意義は「知って理解してもらうこと」から「予約を取ること」に変わってきています。歯科医院側が短期的な成果を求めることに、内覧会業者が呼応した結果、「予約数◯件」が業者のPRとなり、目的となったからでしょう。

20年前と比べて、内覧会の企画と内容自体は大きく変わっていませんが、成果を出すための医院の装飾が派手になり、集客手法が強引になったことは危惧されます。極論すれば内覧会業者の強みは、“客引きの度胸”だけで、その他のマーケティング的な試みは陳腐化しているように思います。

歯科医院、特にヘルスケアを標榜する医院は、その地域の景観や文化を大切にする姿勢が求められます。業者主導の内覧会の表現自体が、歯科医院の理念伝達をさまたげ、イメージを壊してしまう危険性を考えなければなりません。
ただ、業者の“客引き度胸”は歯科医院スタッフにはないもので、一朝一夕で身につくものではありませんから、内覧会業者を使う価値は、その点においてはあると言えるでしょう。逆の視点から見れば、それ以外のことは自院が主導することが、内覧会を行う価値を十分に引き出すポイントといえます。

現在多くの歯科医院では、全てを内覧会業者任せにする傾向があります。これではせっかくの1)医院組織の意識統一 2)地域エリアマーケティング 3)スタッフ研修の機会 を放棄することになります。この傾向は、内覧会を行う真の価値に歯科医師が気づいていないことによるのでしょう。
内覧会の価値は大きく分けて1)地域への自院の認知と集客 2)医院の組織固め にあります。どちらも大切なことはいうまでもありませんが、多くの医院は2)の要素をおざなりにしがちです。中期的な視点からすれば、1)よりもむしろ2)の方が大切であることを付言しておきます。

内覧会へのアプローチ

ここで内覧会の準備と手順を確認してみましょう。以下で紹介する段取りは、弊社が医院独自の内覧会を勧める時に提示するスケジュールです。

  1. エリアマーケティング 1)徒歩診療圏 2)ドライブ診療圏 3)1)2)における公共施設・幼稚園・塾・調剤薬局・商店会などの調査
  2. Webマーケティング 1)地域ユーザーの検索ワードの調査 2)地域歯科医院の診療志向調査
  3. 1・2の調査を踏まえた内覧会運営企画と広告媒体選定
  4. 内覧会運営にあたる医院の意識統一と役割分担・準備
  5. 具体的な準備
    01)開業挨拶や内覧会などのリーフレット制作(配布用)
    02)院内掲示用の、診療体制と医療機材の説明ポスター・POP作成
    03)内覧会開催認知ポスターの制作
    04)医院名刺・診察券・診療圏歯科医院への挨拶状(封書)作成
    05)患者教室と院内の催し企画
    ※食べ物の提供は保健所からは禁じられている。
    06)自院Webサイトへの内容公開
    07)患者説明会・イベント受付の手順書作成
    08)来院者の誘導・院内説明・予約までの手順書作成
    09)来院者への記念品と院内装飾品の発注
    10)補綴物など展示品の準備などを取引技工所やメーカーへ依頼
    11)新聞折り込み・ポスティングの業者への依頼
    12)所管警察への道路使用許可申請
    13)各施設・商工会などへの挨拶と説明
    14)新聞折り込み・ポスティングの実施
  6. 地域人口動態・患者特性・医院システム・機材説明・接遇の院内勉強会とロールプレイング
  7. 内覧会の実施
  8. 予約および記帳した来院者へのメールや手紙での対応
  9. 内覧会の総括
    内覧会で得た、地域特性と生活者への歯科への関心を文書化

nairankai

内覧会費用

一般的な内覧会業者の2日間開催の費用は、100万円前後のところが多いようです。これに新聞折り込み・ポスティング費用やパンフレット制作費用などがかかるのが通常のようですから、実際は130万円前後かと思います。

それでは自院開催をした場合の費用はどうでしょうか。印刷物はオリジナルで訴求力のある開催リーフレット・ポスター・診察券・名刺などを制作して、装飾品・記念品を購入し、新聞折り込み・ポスティング費用(部数による)なども含めても、総額50~60万円程度で準備できるでしょう。 内覧会業者が介在した場合との費用の違いは、

  1. 各施設・商工会などへの挨拶と説明
  2. 所管警察への道路使用許可申請
  3. 患者教室と院内の催し企画
  4. 医院システム・機材説明・接遇の院内勉強会

 

にかかる人件費と歯科材料店などへの紹介リベートなどが、上記の準備品目などに加わってしまうため高額になるのだと思います。また、内覧会業者が作成する広告材では、歯科医院の理念・質感やオリジナリティーが十分に表現できないマイナス面も指摘しておきます。

このように考えてみると、内覧会は時間があれば、自院で企画・運営し、オリジナルの印刷物も準備して、医院への誘導(客引き)は内覧会業者に依頼する形式が、最も合理的といえるでしょう。これからの歯科医院は、内覧会を自院主導で開催して、1)医院組織づくりの基礎として、2)地域患者の傾向を知る契機に、3)そして開業前の接遇の見直しの機会とした上で、地域の生活者に自院の理念・方針、歯科医療の本来のあり方を伝える場にして欲しいものです。

予防型歯科の文脈を考える

コンサルブログ | 2017年6月26日

ある歯科医院を訪問すると、“聞き流すだけで予防型定期管理のハウツーが理解できる”と、英会話教材のような宣伝文句が施されたDVDを見せられた。気が進まなかったが後覚のためと思い、件の歯科医師の勧めで一緒に聞いてはみたが、最初の4~5分でうんざりとして聞くことをやめた。

冒頭「メインテナンスが3ヶ月1回必要な理由が医院内で一貫性がないと、予防型定期管理は定着しない」と説く。3ヶ月1回のメインテナンスが必要な一貫性の根拠は、予想通り保険算定のルールに求め、患者の健康管理を根底にしない旧態依然の予防歯科そのものだった。巧妙に理由付けをして患者を納得させ、保険制度を使い金儲けするハウツーが、このDVDの全てであった。
DVDの製作者は、人はビジネス上の損得や効率だけで生きているわけではなく、医療や教育は損得や効率という用語では語りえない最たるもののひとつだという常識が欠落しているのだろう。

誰しも後戻りは、好んで行おうとはしない。歯科医師にも国民皆保険制度が施行された1961年以前に戻り、予防歯科を考えるべきとは言わない。しかし、2014年の医療施設に従事している歯科医師総数は10万965人になり、人口10万人対歯科医師は81.8人で、1970年の35.2人から大幅に増加している。国際的には必ずしも人口対比の歯科医師数は多くはないものの、現行の保険医療制度の下では、歯科医師数の増加に準じた歯科医療費の増加は、現在も将来も見込めないことは明らかなことである。然るに、患者の健康を踏み台として健康保険制度の蛇口を全開にするようなDVDを疑問に思うこともなく必要とする歯科医師の姿勢は、社会ビジョンに逆行しており世の中に認められるわけがない。

現在の保険医療制度の状況からすれば、遠からず予防歯科の文脈を替えるしかない。過剰な保険請求をして、その余沢で医院経営を潤すといった価値観を、予防歯科の本義へ価値観自体を変更するしか予防歯科の存在する方向はないと思う。このことは社会正義といった高所からだけではなく、むしろ経営的視点からも自明の理であると思う。

果たして保険医療制度に浸かりきった歯科医師は、その価値観を変更できるだろうか。たぶん、価値観を変えることも、自らの生活を変えることも難しいだろう。そして最後まで難問として残るのもこのことだと思う。

歯科医師が自らの価値観を変える一助として、栃木県鹿沼市で開業されているチョコレート歯科医院の加藤大明先生が、デンタルハイジーンに寄稿した小論を一読することをお勧めする。
http://www.sat-iso.net/message/index09.html

メッセージのある勉強会

コンサルブログ | 2017年5月31日

バブル経済が崩壊して、株、土地、個人金融資産など1千数百兆円が失われたといわれていますが、私は、年功序列という日本的経営の根幹が失われて、長幼の序や仕事への誇りが失われてきたことの方が、大きな社会的損失だったと思います。

この影響は歯科にも顕著で、従来の年功序列的な人事システムに代わって、にわか仕立ての実力主義の導入が広がりました。元来、歯科ではスタッフの在籍年数も短く院長の寿命が組織の寿命のため、年功序列はあってないようなものでした。そのためか、スキル、マネジメント、コミュニケーションなどで給与待遇を決める能力主義を通り越し、一足飛びに年功の関係しないアウトプットを評価するふんわりとした成果主義が主流となりました。

ものの本には、成果主義は数字を正しく評価して賃金に反映させることで、スタッフのやる気を引き出し、組織を活性化させるとありますが、歯科での現実はどうでしょうか。成果主義を導入する歯科の眼目は、人件費の抑制とスタッフ教育の放棄にあるようで、スタッフのやる気や医院の活性化よりも、「スタッフ教育などの無駄を省き効率よく稼いでもらうこと」という本音が透けてみえます。それは、成果主義にした医院の人事システムから明らかです。医院の成長を前提として、頑張れば頑張っただけ給料が上がるシステムではなく、誰かの給与が増えれば誰かの給与が減る、ゼロサムゲームが殆どだからです。

このような成果主義の医院の勉強会には、「患者心理を踏まえたカウンセリング」とか「ユニット○台でナン億円稼ぐには」などという営業研修のラインナップが揃う傾向があります。医療人のモラルと科学的思考を学ぶのではなく、商人(アキンド)精神をスタッフに注入する勉強会の趣です。働いて金を稼いで生活するという経済的側面だけを掘り下げていくのですから、スタッフの患者や医療に対しての思いも、院長の生活のためだけの医療感が自ずと反映されないわけがありません。

最近の歯科雑誌などで取り上げられる医院や盛況なセミナーのモデルケースは、成果主義から派生した金権体質な医院を範としていることが多いようです。こういった金儲けに成功する勉強会とは一線を画す勉強会を見学させてもらいました。
志を一つにするアップルデンタルセンターOPひるま歯科 矯正歯科鶴見歯科クリニックの合同勉強会です。
病因論などを各医院の院長が教授する座学、カリエスに対しての概念形成の過程を各医院の歯科衛生士の代表が発表し、それに対してのグループワーク、さらには歯科分野に限定されない「学び方の方法論」ともいうべき特講などを朝9:00から昼食を挟んで17:00まで行われ、その後に懇親会というスケジュールです。

アップルデンタルセンター 畑慎太郎院長

詳細は3医院のオリジナルのため割愛しますが、この勉強会の特徴は、スタッフが医院から引き継ぐべき考え方を、全体構成を通じてメッセージしていることです。技術や経営論議よりも、まず医院の考え方、医療のあり方をやんわりと伝えているところが、各医院の院長の人柄が表れていました。

「何を思う?」OPひるま歯科 矯正歯科 晝間康明院長

鶴見歯科クリニック 鶴見和久院長

グループワークの様子

勉強会全体を通じて「人は働くことによって築かれていきます。それは働いて金を稼いで生活するという経済的な意味だけではなく、働くことで自己実現を果たしたり、働いて社会の役に立つことで、生きる悦びや実感を見出しましょう。」といったメッセージが発信されているようでもありました。「人は働くことで人生を生きるのです。あなたはなぜ当院で働くのか、そしてどんな働き方をしたいのかを考えてください。」と、問いかけている感もありました。成果主義医院の勉強会とは、スタッフの能力の引き出し方の濃淡が全く違い、「これぞ本気の勉強会!」のあるべき姿でした。

勉強会に参加した3医院の先生・スタッフの方々と伊藤

入れ歯の大御所からの葉書

コンサルブログ | 2017年5月3日

村岡秀明先生から季節の葉書が届きました。
笑っているような筆跡の軽妙な文章と入れ歯をモチーフにしたイラストが相まって、村岡先生から季節の葉書を頂く度に、思わず「クスッ」と笑ってしまいます。

村岡先生のイラストの特徴は、アイロニーな感じは全くなく、初代林家三平の落語のようなナンセンスさにあります。しかし今回のイラストは、金属床レンジャーらしき者が予防歯科の象徴の歯ブラシを武器に持ち、「入れ歯大好きの敗者」と自虐的なコピー、実にシュールな仕上がりです。

思えば、村岡先生にお会いしてから25年余りが経っています。当時、歯科界では「補綴を制するは歯科を制す」などと言われ、予防歯科も関心が高まりつつありましたが、まだまだ入れ歯全盛の時代でした。今でこそ私は予防歯科の普及に取り組んでいますが、当時、新参者の私は補綴を入り口にして歯科界へのネットワークを広げていました。同時期に歯周病の勉強会を企画し、日本大学歯学部教授の伊藤公一先生にスピーカーとして何回もセミナーをお願いしましたが、村岡先生の入れ歯セミナーの方が歯科医師の関心度が高かったと記憶しています。

村岡秀明先生からの葉書

当時の私は医療マーケティングが関心事のいわゆる広告屋に近い存在ですから、売って欲しいと言われた診療科目の価値や社会性などは問うことはありませんでした。それは職責の内に入っていないし、広告屋に倫理など無かったわけです。今、流行の内覧会業者と同類項でした(もう少し真っ当でしたが)。人々の欲求や欲望を読み解き、それに添って医院の広告戦略を考え付随して医院シシテムを構築するのが仕事なわけですから、有権者の歯科医師が関心の低い歯周病や予防では仕事にならなかったわけです。

ですから当時は、入れ歯の大家といわれた歯科医師には、多々セミナーをお願いしていましたので、門前の小僧よろしくデンチャーにはかなり詳しくなり、受講者のサクラとして質問もしたことがあったくらいです。それから約25年経ち、今では予防は歯科医療の基盤となり、私は予防歯科の普及に取り組んでいます。入れ歯のセミナーも約20年前に一切やめて、予防セミナーしか開催しなくなって20年経ちます。全ては約20年前に聞いた熊谷崇先生の講演がきっかけでした。ひょっとして「入れ歯大好きの敗者」のコピーは、裏切り者の私に対する御年70歳になられた村岡先生の20年振りのカウンターパンチなのでしょうか?

イヤイヤそうではないでしょう。村岡先生が日吉歯科診療所に伺い熊谷先生にインタビューする歯科雑誌の企画がありましたが、雑誌掲載後、熊谷先生に村岡先生の印象をうかがったところ「彼はとにかく人柄が素晴らしいから」とお話しされていましたから。

求人条件は「建物」を基準に

コンサルブログ | 2017年5月2日

歯科医師の話を聞くことが私の仕事ですが、1日に4人の歯科医師と会って、2時間おきに求人難についての相談となり辟易とした覚えもあります。それほどまでに、どこの医院でも求人には苦労しているわけです。

ほとんどの求人企業が、

  • 社会保障があること
  • 公定休日が診療日でないこと
  • 18:00終業

を、求職者が歯科へ集まる3要件としています。その他の条件として、残業が少ない、駅近、家族経営でないことなどが続きます。要は、丸の内OL待遇を低学歴でも認めてあげなさいと言うのが、求人企業の言い分です。

仮に低学歴高待遇を認めたとしても、このアドバイスに合点のいく歯科医師が何人いるでしょうか?超売り手市場の歯科労働環境の中で、丸の内OL待遇は既に当たり前となり求人のプロの答えとしては、お粗末にすぎる感は否めません。それと言うのも、不承不承認めざるを得ない高待遇でさえも、求職者の琴線に触れることはないことを、求人がルーティーンとなった歯科医院では、身を以て感じているからです。

話は横に逸れますが、先の3要件全てを満たすことのない歯科医院こそが、実は中小企業の一員として真っ当な判断をしているわけです。しかしその結果、求人費用はドブに金を捨てるが如くのアンビバレンツな状況に歯科界はなっています。その結果、事業内容と規模に準じた健全な雇用条件で求人活動する医院が、求人広告を出す以前に、医院の存続も含めて体制を考え直す時代を歯科界は迎えていることになります。

話を戻します。それでは求職者が求める最上位の雇用条件とはなんでしょうか?院長の人柄がよく、学べる環境が備わっていて、給与も良いなどと言うユートピアな話ではありません。

おおよそ千数百人の歯科スタッフから聞き取りした経験から、求職者は先の3要件よりも職場の「建物」に潜在的に惹かれ、最上位の就職条件としています。こんなことを言うと、「そんなことはない、やはり待遇がポイント」と、たいていの歯科医師から反論されます。しかし、待遇といっても、よっぽど悪かったり飛び抜けて良かったりする歯科医院は、情報化社会の中ではほとんどなく、たいていはある一定範囲に入ってくるため待遇は第一条件にはなりません。それよりも、求職者の感性に訴える建物がポイントになるのです。

明るくて清潔で少しオシャレな建物であったり、都市部のインテリジェントビルの中に存在していたりして、少し歩けば商業地域に出られる場所にある歯科医院ですと、先の3要件なんかは霞んでしまうのが求職者の習いのようです。
地方の医院でも同じことで、理想的な建物がその地域での理想的な場所にあって、ある程度以上の規模(ここが肝心)の歯科医院であれば求人には断然有利になります。

これは経験的にも言えることなのですが、特に若い頃は規模の小さな組織(会社)で、少人数で狭い場所で働いていると、世間の風に吹きさらされているような気分になってくるものです。そういう気分を救ってくれるのが建物の魅力なのです。会社の10年後を信じていない求職世代が、それでもなぜ大企業志向かと言えば、毎日来て働く場所の建物(と立地)の雰囲気を潜在的に重要視しているからに他なりません。あまり大っぴらに「建物が気に入って就職しました」とも言えないだけのことです。

歯科医院も企業と同じです。築35年の雑居ビル4階にある25坪の歯科医院に、求職者が「毎日来てもいいや」って気持ちなるでしょうか?平均給与より1~2万円高い報酬であっても、若い人ほど、そんな気持ちにならないのが自然なのです。

今までの地域歯科医院の給与水準を基準に求人条件を考えていては、歯科医院はいつまで経っても茹でガエル状態を抜け出すことはできません。
医院方針、待遇、教育環境も大切な条件ですが、それらすべては建物(インテリア・立地)に大きく影響されることを前提に求人条件と広告を考えてみてはいかがでしょうか。

むし歯0から1の価値を生み出す

コンサルブログ | 2017年5月1日

デフレからの脱却を謳うアベノミクスから4年、雇用指標は改善傾向にあるものの依然として消費拡大に繋がる気配がありません。総務省の資料を見ると、食料品や衣料品などの個人消費が停滞し、モノが売れないデフレ状況に変化はありません。

歯科はどうかと言えば、国民総医療費に対する歯科医療費の割合は、平成28年は前年を下回り、平成12年以降の横ばいトレンドが続いています。生活の基本である食品と衣料の消費が低下する中、とりわけ国民医療費に含まれない自由診療に活路を見出すことは、下りのエスカレターを駆け上がる程度の運動神経と体力が必要になってきます。

それでも、歯科医療費の総枠拡大が見込めないために、個々の歯科医院が自由診療に突破口を見出さざるを得ません。このような状況を反映して、歯科医院では「顧客満足」というスローガンを呪文のように唱え、「ネット予約」と「自費の安売り」が織りなす“量”の拡大の狂想曲が響きわたっているように感じます。

どうでしょうか、「ユニクロ栄えて国滅ぶ」という論考がありましたが、デフレや歯科医院の過剰をエクスキューズにして、「便利さ」や「安さ」ばかりから顧客満足を追求すれば、歯科医院はますます劣化していくように思います。

本来顧客満足度を高めるためには、徹底的に生活者の側に立ち“質”を追求する必要があります。簡単そうですが、これほど難しいことはありません。数多の理由の一つとして、この20年余りで口腔内の状態は向上し、12歳児のむし歯は1歯を切り、これから先に生活者が歯科医院に何を欲しているのかがわかっていないことが挙げられます。

しかし、確実なことは歯科医院も社会の中に存在している限り、顧客満足の在り方が量から質への変化が訪れていることです。これは感覚的な言い方ですが、歯科の仕事は1本のむし歯治療を膨らませて10の仕事を作ることから、むし歯0から1の価値を生み出すことに変わってきているのです。

人は人が集まる様子を見て集まってきます。「便利さ」や「安さ」に満足を求める人の集まりには同じような人が集まってきます。健康な人の周りには生活の“質”を大切にする健康感の高い人が集まってきます。感情は目に見えませんが、健康感の高い人が集まる歯科医院は、健康な人と穏やかに繋がり、人々に健康の連鎖を促し、「便利さ」や「安さ」がなくとも社会と繋がっていくように思います。

現在、歯科には穏やかな淘汰が起こっています。淘汰の時代、歯科医院はむし歯0から1の価値を生み出す仕事をするべきではないかと思います。

歯科衛生士の賃上げ1万円時代に突入か!?

コンサルブログ | 2017年4月14日

会社から歩いて数分の播磨坂さくら並木の河津桜は満開です。しかし暦の上では立春を過ぎましたが、まだまだ寒い日は続いています。さてアベノミクスは、暦通りに暖かさを日本経済に運んでくるのでしょうか。今のところ輸出主体の企業は満開の様子ですが、円安の恩恵に無縁な歯科には、芽吹きの気配さえ感じません。これから春闘本番を迎え、歯科も従業員の昇給に頭を悩ます季節になりそうです。

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昨年末、安倍首相は「最低賃金を年3%程度引き上げ、全国加重平均で時給1千円を目指す」と表明しました。現在の全国平均最低賃金は798円で、安倍首相の表明通りに賃上げが進むと23年には1千円に届く計算になります。衛生士不足の歯科で、戦力とされる助手の現在の全国平均時給は900円程度、地方では800円程度ですから、阿部首相の言うところの時給1千円を達成すると、助手の全国平均時給は1130円程度に上がる計算になり、現在の衛生士の全国平均時給とあまり変わらなくなります。

さらにデフレ脱却を目指す安倍政権では、「2%の物価上昇目標」を掲げているため最低賃金を3%程度引き上げしなければ、実質賃金は減ることになります。歯科でこの賃金3%アップを達成することができるでしょうか。15年の医療経済実態調査によると、賃金の3%アップをクリアできたのは衛生士だけで、前年と比べて3.3%アップで平均年収2,748,568円でした。因みに院長が−2.2%で12,715,798円、勤務医が2.4%で6,016,058円、助手が0.8%で2,587,178円です。歯科医院の従業員平均賃上げ率が約2.16%対して、医業収入の伸び率は0.4%です。その穴埋めの一端が、院長収入の−2.2%減に現れています。歯科の収益伸び率からアベノミクスの賃上げ率を達成するには、収益増が見込めない現在、院長収入(法人利益)減と設備投資期間の長期化といった経費減で賄っていかなければ、他の産業と伍して人材を確保することは難しくなる計算です。

かくして歯科従業員の賃金アップを支えたとしても、所得税や住民税についての定率減税が半減され、さらに廃止されていきますから、従業員には毎月数千円も増税になります。様々な所得控除が廃止されることによって、収入の中で課税される金額が増えています。年収300万円の衛生士の場合を試算してみると、ひと月約7,000円以上の増税になります。さらに厚生年金の保険料も毎年値上がりしていますから、衛生士の生活水準を維持していくためには、毎年約8,000円の賃上げが必要になります。

15年の「中小企業雇用状況調査」によれば、中小企業全体の40.9%が2,000~5,000円の賃金上げ、11.6%の企業が2,000円未満でした。この数字に対して昨年の衛生士の平均賃上げ金額は約7,000円と高くなっています。平成28年度から「かかりつけ歯科医機能強化型診療所」の新設によって、衛生士の配置は医業収入に関わる比重が高くなってきます。衛生士はますます争奪戦となり、賃上げは毎年10,000円程度しなければ衛生士を確保できなくなるかも知れません。これからの安倍政権下での「賃金」「税金」「保険改定」では、予防型歯科医院は今まで以上に経営力が問われることになるでしょう。

患者診療情報のイノベーション

コンサルブログ | 2017年2月7日

日吉歯科診療所「土蔵」から富士通「クラウド」へ

日吉歯科診療所の訪れた人ならば誰しもが、3万人のカルテを保存した『土蔵』を前にして、「オッ」と声を漏らすような素直な驚きを覚えることでしょう。私も「これがカルテ庫か!」と驚きを禁じ得ませんでした。この土蔵の存在が、「酒田市民の口腔の健康状態を世界一にすること」という途方もない夢のような日吉歯科診療所の理念を、現実的で酒田市民にとって求心力のあるものとしてきたのです。その理念は、患者診療情報のクラウド化を通じて、各地域で予防型歯科医院による企業の健康経営支援への取り組みへとつながり始めました。

予防型歯科の知的資産の価値

多くの歯科医師が、日吉歯科診療所の理念に魅せられて予防歯科を志し、その基盤作りに着手してきました。そして、口腔内情報を得る機材を揃え技術を修得した途端、一端の予防型歯科医院になったと錯覚する傾向があります。この段階で忘れていることがあります。目の前の患者診療情報を生きた情報とするには、過去の患者診療情報の蓄積と管理が重要です。エビデンスという言葉を予防型歯科医院では頻繁に耳にしますが、エビデンスとは過去の患者診療情報が素になっていることは言うまでもありません。エビデンスを得るには、予防型歯科医院としてのそれ相応の年月の積み重ねが要るのです。日吉歯科診療所では、過去36年の患者診療情報を蓄積してきた土蔵の存在が、エビデンスという知的資産を生み、生きた患者診療情報を患者に提供することを可能にしたのです。その知的資産が患者にも歯科医師にも求心力を発揮し、類まれな予防型歯科医院となったわけです。知的資産の求心力とは、ブランド力と置き換えてもいいでしょう。
予防型歯科を自称する多くの医院には、レセプトという財務資産はありますが、未だ知的資産を生み出すまでには至らないようです。その理由は、歯科医師の意識と予防型歯科としての年数の問題もあるでしょうが、過去の患者診療情報を蓄積する環境の問題もあるのではないでしょうか。過去の患者診療情報が、古新聞同様の扱いや法規に則り5年で処分されているケースさえ見受けられます。片や日吉歯科診療所の土蔵は、36年分の患者診療情報を財務資産から知的資産へと価値転換させています。
日吉歯科診療所の土蔵は、耐震性・堅牢性・高度なセキュリティーを有する現代のクラウドと言って良いかもしれません。

図書館のように患者診療情報を管理する

患者診療情報がどれほど予防型歯科医院に価値を与えているのか、図書館に例えてみると理解しやすいでしょう。図書館の管理方法には開架と閉架の方式があり、開架の場合は、一般利用者が自由に書籍を取り出すことができる書架に並べられています。これは歯科医院の現在来院している患者診療情報に当たります。閉架の場合、蔵書は一般利用者が立ち入れない書庫にあり、利用者が依頼すると司書が書庫にある数十万の蔵書の中から「日本分類十進法」に拠って速やかに持ち出してきてくれます。これが歯科では現在動いていない過去の患者診療情報に当たります。図書館の価値は、開架・閉架の蔵書数と管理に有り、利用者に評価されることになります。
一般的な予防型歯科医院では図書館でいう開架は機能していますが、閉架は機能していない傾向があります。日吉歯科診療所の価値は、閉架も開架同様に機能しているところにあります。熱心な利用者が、古い書籍を5年で処分したり、読みたい本の取り出しに時間がかかったりする図書館に価値を見出すでしょうか。このことは、歯科医院に対する意識の高い患者にも当てはまります。
数十万の蔵書の蓄積と管理には、確立された分類方法と何よりも広さが必要とされています。歯科では「患者を生涯顧客とする」といわれて久しいですが、例えば1万人の生涯に渡るカルテ・X 線画像はもちろんのこと規格性のある写真、各検査結果を管理できる広さが、歯科医院にあるでしょうか。
あるいは十分に保全されたサーバー環境で管理することができているでしょうか。特に都市部の100㎡程度の歯科医院では、過去の患者診療情報の蓄積と管理は物理的に不可能なため、収益を生まない患者診療情報は古新聞扱いされることになり、真の予防型歯科医院へと展開できない理由の一つになっています。繰り返しになりますが、レセプト(財務資産)が多く盛業していようとも、規格性のある患者診療情報を長期間に渡り管理して知的資産化できていなければ、真の予防型歯科医院とは言えないのです。

クラウドが変える患者と医院の関係

患者診療情報を知的資産とするために、日吉歯科診療所のような土蔵を造ることは現実的ではありませんが、クラウドを利用することで解決することができます。しかもICT(情報通信技術)によって、患者コミュニケーションには不可欠な即時性と直接性といった強みも加わります。生活者が自分の欲しい情報を即時に直接得られることが常識となりつつある現代社会で、医療だけが例外とされる理由はどこにもありません。
クラウドで患者診療情報を管理することは、コミュニケーションを創り出すイノベーションと言えます。従来の院内で患者診療情報を管理し提供する方法は、歯科医院が患者に情報を一方向で提供していたにすぎません。一方、患者診療情報をクラウドで管理することは、歯科医院のクラウドへ患者自身が情報を取りに行ける双方向のコミュニケーションが可能になるのです。さらに患者診療情報がその人に対していつでもオープンにされるということは、歯科医院が自院の診療とメインテナンスに対して自信がなければできないことです。それは自院の予防型歯科医院としての矜持とも言えます。
情報がオープン化される社会になると、生活者の学習機会が増え評価力が上がってくるために、情報に求められる質が高くなってきます。従来の予防型歯科医院ならば、患者診療情報を画一的に並べておけばよかったものが、そこに患者にとってどれだけ的確な『提案』が盛り込まれているかが、患者にとっての価値となってくるのです。
患者が求めているのは、患者診療情報という媒体ではなくそこにある『提案』そのものになってくるのです。

予防型歯科に求められる「提案力」

そういった成熟した患者に対してクラウドの仕組みから得られたデータをもとに、患者診療情報をプロファイリングしていくことで、的確な提案ができることまで将来的に視野に入れておくことが必要になってくるでしょう。
ごく限られた予防型歯科医院でしか適切な予防処置やメインテナンスができないようでは、国民の口腔の健康は遅々として進みません。ある地域の優れた予防型歯科医院の存在は、手の届く範囲の生活者にとっては素晴らしいことですが、その恩恵に浴することができない生活者が多すぎるのです。
その解決のためにも予防型歯科医院の『提案基準』(図書館でいう分類・安全衛生でいうリスクアセスメント)がオープンリソース化すれば、多くの生活者の口腔の健康は向上し、健康寿命を延ばすことが可能になるでしょう。予防型歯科医院のイノベーションをさらに進めたいと思うのは、QOLの向上、地域と企業の活性化につながると信じるに足る日吉歯科診療所という根拠があるからです。
『土蔵』から始まった患者診療情報のイノベーションは、富士通のクラウドサービスを通じて、QOL向上、地域活性化、企業の健康経営に還元できることが、予防型歯科医院の存在意義ではないでしょうか。

幡野先生、成功を祈ります。

コンサルブログ | 2017年1月10日

日吉歯科診療の勤務医をしていた幡野先生が、静岡市の駿府城のお堀端で5月9日開院しました。
医院名は「このは歯科医院」http://www.223-ohc.comです。
開院前の4月下旬、幡野先生の陣中見舞いに向かう車中で読んでいた日経新聞「大機小機」の「教育国債の摩訶不思議」の解説文に、少し引っかかりを覚えましたので引用してみます。

「戦争もない平和な時代に日本は借金をここまで積み上げてきた。少子高齢化が原因といっても、それは急におこったわけではない。時間があったのに、ほとんど何の対策も取られなかった」とあります。

駿府城公園のお堀

この一文、どなたも自らを省みて、思い当たる節はあると思います。
歯科界もそうです。
50年後まで見通した将来人口推計で人口減が明白で、社会保障の危機をわかりながらも、歯科医師数を増やし続けてきたわけですから、無策の謗りを免れないでしょう。

開業する歯科医師も同様です。
ほとんどの地域で患者減少がわかりながらも、従来通りの開業をする思考停止。
修復補綴処置が少なくなったと感じながらも、従来通りの診療を続けている頑迷さ。
転職率の高い年齢の女性スタッフを抱えていながらも、事が起きるまで対策を打たない優柔さ。

歯科医師に限らず、優秀とされる日本の官僚ですら、将来起きると予測される社会問題に対して、平穏な時には何も対策を取らないのですから、人は往々にして不穏な動向を考えたくないものなのでしょう。
我が身に危機は起こらないと信じたいのかも知れません。

しかし、祈りのような先送りを続けていては、展望は開けていきません。
どうしてこのような決断の先送りは起こるのでしょうか。
物事を決断する「知識」と「思想」が無いからだと思います。

リーダー(歯科院長)には、情報・知識・思想が必要です。
日々の出来事である「情報」、情報がある程度、整理・普遍化された「知識」、それらを素材にした大きな方針である「思想」。
これらを獲得、更新するためには、歯科医師は学生時代、勤務医時代をいかに過ごすかが重要と思います。

SNSの普及により、熟慮したものでなく思いつきの情報が氾濫している時代。「情報」が「知識」「思想」まで修練されることなく、小手先の方策で将来展望を図る歯科医師が増えたように感じます。

「情報」を取捨選択して「知識」に、そして「知識」を反復して「思想」にまで修練した歯科医師を社会が必要としていることを、業界外の人と会うたびに感じています。

幡野先生、社会に求められる歯科医師としての成功を祈ります。

幡野先生(左)と伊藤

夢も希望も年の暮れ

コンサルブログ | 2016年12月30日

正月まで後2日。例年、新年の挨拶を考えるこの時期になると、きまって登場してくるのが、成田山、佐野厄除け大師、川崎大師といった初詣での寺院のCM、そしてデパートや商業施設の福袋の広告です。この2つの広告宣伝を見聞きしていると、新年を前になぜかうっとうしい気持ちになってきます。最近の歯科も「何か似てきたなあ」と感じることがあります。

人の信心の中にずかずか入ってくる宗教CMの無神経さは、患者の中に歯科の価値観を押しつけがちな最近の歯科界に一脈に通じるものを感じます。もう少しゆるやかに歯科の価値観を育てて欲しいですよね。正論は押しつけられるとうっとうしいものです。

次にゆゆしきことは、福袋。

実は福袋しか売るモノがなくなったデパートの状況にも、歯科は似てきました。福袋は具体的なモノを売っているわけではなく、お客さんには「何かいい『コト』があるに違いない」と期待させて、『モノ』ではなく『コト』を売っているわけです。歯科医院も同様で予防や自由診療に対して、患者は、「これできっと快適になる『コト』だろう」に期待して(買って)いるわけです。決して白いつめ『モノ』を買っているわけではありません。デンタルショーは、売る『モノ』がなくなった歯科を象徴しています。デンタルショーに行けば、「何かいい『コト』があるだろう」と福袋化しているわけですから。しかし、実際はどうでしょうか。2016年もこんなたわいもないことを考えながら終わろうとしています。

今年一番感動したことはオバマ米大統領の広島訪問、反対に嫌な感じだったことは安倍首相の真珠湾訪問でした。

2017年は、業界から離れた第三局から歯科に光りを当てることに全力投入していきます。どうぞご期待ください。

熊谷崇先生に見るリーダーシップ

コンサルブログ | 2016年11月24日

『プロフェッショナル』『カンブリア宮殿』とTV放映に続き、ついに熊谷崇先生のノンフィクション本が発刊されました。これ程までに社会ネタとして取り上げられた歯科医師は、熊谷先生をおいて他にはいないでしょう。その本のタイトルは『歯を守れ!予防歯科に命を懸けた男』と、ドキュメント番組のようで期待感が高まります。

本著を斜め読みしてみると、歯科医師熊谷崇を知る上で目新しいものはないように感じていました。しかし、改めて熊谷先生が何を考えて行動してきたかを確認しながら本著を読み進めると、歯科医師の器を超えたリーダーとしての熊谷崇像が鮮明に浮かび上がってきます。歯科医師の中からリーダーらしき人を探すのは難しく、さらに真のリーダーを挙げるとなると困難を極めます。それは、優れた臨床家や研究者、小粒なカリスマ的歯科医は数多存在していますが、社会ネタとなる幅を持ち合わせた歯科医師がいないからです。その結果、歯科医師で社会に影響を与えたリーダーとなると、「熊谷先生をおいて他にはいないのでは」と、思いを深くするわけです。

リーダーを選ぶ基準に確たるものはないのでしょうが、私は、「何を成し遂げ社会にどのような影響を与えたか」によって、真のリーダーかどうかが決まると思っています。いくら志が高くどんなに人格が立派でも、道半ばで倒れて何も成し遂げられなければ、真のリーダーとはいえません。真のリーダーは「結果と影響力」が全てだからです。歯科界になぞらえてみましょう。臨床家としても優れ誠実な人柄でも、自院の経営が赤字続きでは、医院のリーダーとして認められることはありません。あるいは、学会の中心的存在でも、社会に対して影響力を持ち合わせなければリーダーとはいえないのです。反対に、技量や言動に多少難があったとしても、何事かを成し遂げて社会に影響力を持っている人は、真のリーダーとして評価されるのです。

熊谷先生はどうでしょうか。歯科界で予防歯科の概念を一新し、予防歯科の潮流を確たるものとしたことには異論を挟む余地はありません。さらに前述したようにマスメディアにとりあげられ、広く社会に影響を与えている歯科医師として唯一無二な存在です。また、歯科医師としての力量に加えリーダーとしての魅力が、各界の人を惹きつけてやまない事実からしても、熊谷先生が真のリーダーであることは明らかなことです。

歴史上のリーダーは、たいてい過去のリーダーのなし得たことを実によく学んでいたように、熊谷先生も北米やスカンジナビアの歯科データや先人の成功事例をロールモデルとしてよく学んでいます。その学びは理念となり、自院の患者から地域へ、歯科界から社会へと広まっていきました。そして最近では企業の健康経営と結びついて、大手企業にまで広がりを見せています。本著では酒田市の成長企業(株)平田牧場の社長とのやりとり、ITサービス国内首位の富士通の武久氏との取り組みが描かれ、他業界の人を巻き込んでいく様からも熊谷先生のリーダーとしての真骨頂が伝わってきます。

最後に本著では深く掘り下げられていませんが、リーダーのカリスマ性だけでは国が長続きしないのと同様に、歯科界から社会へ流れ出た予防歯科の潮流も熊谷先生のカリスマ性と力量だけで成し得たわけではないことを付言しておきます。熊谷先生を慕う山形県の有為な歯科医師たち、日吉歯科を巣立っていった俊英な勤務医たち、全国の意欲的な歯科医師たちといった取り巻きが、ある種のボランティア組織となって予防歯科の潮流をつくり、熊谷先生の言動が社会に影響を与えるまでになってきたのだと思います。

著名な歯科医師を取り巻く集団をいくつか知っていますが、熊谷先生の集団の歯科医師は、「誠実・知性・夢」この3要素を他の集団の歯科医師に比べて格段に高いレベルで持ち合わせています。その一例として、本著にアップルデンタルセンターの畑先生が描かれています。しかしその反面、前述した3要素が高い集団だけに、離脱していく歯科医師も少なくないことは事実です。それにも関わらず、「世界水準の歯科医療で患者利益を追求する」という目的を達成するために、優秀な歯科医師がボランティア組織化して「誠実・知性・夢」といった規範性の高い集団を形成していくのです。その集団のリーダー熊谷先生の考えと行動は、歴史書の中のリーダーを見るような思いにかられます。

本著は熊谷先生の達成してきた「結果」を縦軸に、その「影響」の広がりを横軸にして、リーダーシップ論として読むのも一興かもしれません。

“自由診療の値付け”高くする努力をしよう

コンサルブログ | 2016年10月31日

患者にとっても歯科医師にとっても“本当の利益”をきちんと追求する姿勢が求められる

インプラントや補綴処置などの自由診療の値付け(価格決定)は、材料費・技工料や人件費などの原価計算をして決定することが一般的です。しかし、材料も技工料もほとんどかからないメインテナンスとなると、健康保険診療報酬を基準に自由診療の“値付け”がされている場合が多いようです。

特に自由診療メインテナンスの場合は、単に名目だけは自由診療といった感じは否めません。その内容たるや保険診療のSPTそのもので、患者データとチェアタイムに少しばかりのお愛想を加算されて現金での支払いが求められます。要は、同じ内容で健康保険であればSPT、自由診療だとメインテナンスと呼び方が変わるだけです。補綴の場合は原価計算による一応の合理性で、“値付け”への納得感を得られることはできます。しかし、自由診療メインテナンスの場合は、求められるものが納得感から満足感へと高くなるにも関わらず、未だに歯科医院の“値付け”は健康保険を基準にしている状況です。

このような健康保険基準の“値付け”は、歯科医師の高度経済成長期の頃から引きずる古びた価値観によるものだと思います。高度経済成長期の初期に発足された国民皆保険制度は、広く国民に健康を安価に向上させてきました。それ以前は国民の1/3が無保険者だったため、皆保険制度の普及により健康な労働力が増えて生産性が向上し、高度経済成長の一端を支えてきたことは容易に想像できます。歯科医師の価値観は、この時期まで遡り現在の“哲学なき値付け”へと繋がってくるのだと思います。

健康保険制度が国民生活に広く定着すると、“よい品をどんどん安く、より豊かな社会を”を企業理念とするダイエーを始め薄利多売の流通店舗が台頭して発展してきました。時を同じくして歯科医師も黄金時代を迎え、歯学部・歯科大が16校(学部) も増えた時期です。健康保険制度の発足→国民の健康増進→生産性の向上→経済の活況→飽食な生活→齲蝕の増加→歯科医師増員政策といった流れがこの時期にできあがりました。医療も経済も日本全体が量の拡大に躍起になった時代。「大きいことはいいことだ」とチョコレートのCMが流れる時代背景の中で、大量のむし歯を健康保険で安価に治療する歯科医師が、国策として大量に作り出されたわけです。連続経済成長率10%以上を背景に、国民も歯科医師もそして国までもが、健康保険制度の財源は尽きることない泉のように思っていた時代です。この時期から“健康保険でより良い治療をより安く”といったダイエー同様な価値観が、自然と国民にも歯科医師にも染みついたとしても不思議ではありません。

安売りによる大量消費をスローガンにしたダイエーの崩壊は、時代の先行きを読み間違えた“哲学なき値下げ”が原因といわれています。このことは、歯科医院の“哲学なき値付け”に対しても示唆的です。患者のむし歯は減り、増えたのは歯科医院ばかり、予防予防と言われても歯科衛生士は集まらない、経済成長率の鈍化で社会保障は危ぶまれる。こんな時代に“健康保険でより良い治療をより安く”だけでは、歯科医院が存続する道理がないことは、歯科医師ならば誰しもが、うすうす気がついているはずです。

しかし、それでも歯科医師は変われないのです。経営を健康保険制度に依存しているために、健康保険制度の変更によって変わることには慣れているものの、歯科医療の価値観を掲げて自らの意志で変わることには臆病なのです。ダイエーは “より良い品をより安く”という古びた価値観に縛られ破綻しました。歯科医院も制度設計が古くなってきた健康保険制度に縛られていては、ダイエーと同じように時代の“茹でガエル”状態になることは明らかです。

現行健康保険制度の価値を認めない人はいないでしょう。しかし、健康保険制度を基準に自由診療の“値付け”をすることは、古びた価値観で、未来を切り開こうとしているようなものです。高度経済成長期を通過して量が充足された現在、さらに「より良い品をより安く」というスローガンは、「何かおかしい?」と感じるはずです。良いものは価値が高いから値段も高いというのが、市場経済の原理原則です。

歯科も同様です。むし歯洪水は遠い昔となり、市場経済の中で位置づけされる歯科医院の価値は、“健康保険でより良い治療をより安く”ばかりではないはずです。歯科医師は、健康保険制度に合わせて治療やメインテナンスをする無理な努力からそろそろ脱するべきです。市場経済の中で高い価値を自由診療として提供し、その“値付け”に気持ち良く応じてもらう努力をしていってはどうでしょうか。大切なことは、古びた価値観に縛られることなく、目先の金銭的な価値に流されずに、自由診療の“値付け”をすることです。それには、歯科医師が、患者にとっても自分自身にとっても“本当の利益”をきちんと追求する姿勢を持つことが求められていることは言うまでありません。

手抜きスタッフのMI治療とホープレス処置

コンサルブログ | 2016年10月7日

「医院は手抜きで満ちている」と、感じている院長は多い。一旦スタッフがサボっていると思い込んだ院長は、どんどん疑心暗鬼になり、組織崩壊まで行き着くケースさえあります。スタッフへの過剰な期待が、院長の心をかき乱すのです。スタッフに接するときの肝は、最初は60点程度で目をつぶることです。良く知られている「2・6・2」の法則があります。どんな組織でも、良く働き優秀な集団が2割、普通の集団が6割、仕事をしない不良な集団が2割といわれています。不良集団の2割は不測の事態に備えた遊軍と考えることです。マネジメントする立場の院長にとって、目をつぶることは大切な技術なのです。不良集団の2割を戦力にしようとするよりも、“腐った林檎”となり組織全体が腐敗しないように段階的に手抜き対策を実践することがスタッフマネジメントの技術です。

処方箋1~手抜き人材の傾向を知る~

歯科医院でのスタッフ採用は、面談と職務経歴書で行うことがほとんどです。要は勘に頼った選考です。これでは手抜き人材を排除することは難しいでしょう。手抜き人材は「勤勉性」「協調性」「共感性」が低い傾向があると言われています。このような性格特徴、能力、職務適応性などの判断材料を面接だけで判断するのは経験の浅い院長ほど難しいものです。そこでリクルート社の適正検査テストSp13 などは、人材判断のデータサイエンスとして1名から利用できるため歯科医院でも活用するといいでしょう。クライアント先の中規模歯科医院6件で、Sp13を実施したところ、すべての院長が採用後に感じていたスタッフ個々の特性を客観的に示しているとの評価を得ています。

処方箋2~罰を与える時は能力を見極める~

「罰を与える」ことが、スタッフの不良行為を防ぐのには効果的と思っている院長も少なくありません。しかしそれは罰を与えるスタッフのレベルによって効果が違ってきます。学習習慣がなくパフォーマンスの低い人材には、努力評価の罰が効果的に作用します。一方、能力と自尊心の高い人材にとって、努力評価の罰は不安や無力感、疑念などのネガティブな情動を触発し、意図しない悪い結果をもたらす傾向があります。能力と自尊心の高い人材には成果評価の罰が効果的です。スタッフ個々の能力とは無関係に与える罰は、組織全体のモチベーションを下げる結果になってしまいます。採用の段階で能力の標準化を図れない歯科医院では、スタッフ個々の能力を把握して罰を与えることが鉄則です。

処方箋3~全体評価だけでは“できるスタッフ”が腐る~

運動会の綱引きは経営の綾を表しています。自分は力一杯頑張っているのに、いつの間にかズルズルと引かれ負けてしまったり、逆に自分は適当にやっているのに、グイグイと引き寄せて勝ったりします。このように綱引きは個人の貢献度が見えない競技です。歯科医院経営も綱引き状態の場合が多く、個人の貢献度を可視化しづらいのです。この状態が続くと、一生懸命なスタッフのモチベーションは下がり、手抜きスタッフがはびこる組織になります。そのため歯科医院の中で個人がどの部分を担っていて、全体の目標達成にどの程度貢献できたかをわかるようにする内発的動機を高める仕組み作りが必要です。

処方箋4~スタッフ数と売上は比例しない~

1人の引く力が10kgの人が10人集まれば合計の引く力は100kgになるはずですが、10人の集団で引く力が90kgにしかならないケースがあります。リンゲルマン効果といわれ、集団全体のアウトプットが個人のインプットを加算したものより少なくなり、集団が大きくなるほど両者の差が大きくなることを明らかにした社会実験です。スタッフを増やしても、残業時間も減らず売上も上がらないことは、歯科医院ではありがちなことです。医院の中でリンゲルマン効果が発生しているのです。リンゲルマン効果が発生するメカニズムは、1)自分以外の誰かがやるだろうという動機の低下 2)仕事のチームワークや引継ぎの不全、綱引きでいう「オーエス」というかけ声を出すタイミングのズレが発生。このような医業収入の低下の大部分は、スタッフ個々の無意識のメカニズムに基づいているため、売上の低下や手抜きの存在を組織全体に意識化させることが必要です。

処方箋5~集団目標を叩き込む~

歯科医療サービスの質を右肩上がりにしていくには、メインテナンス率の設定や5Sから顧客満足の達成など医院全体の目標設定をする必要があります。活力がみなぎっている歯科医院は、医療者だけの力量を測る目標ではなく、医院全体の力量を測る目標が設定されているケースがほとんどです。全体目標を設定することで、歯科助手・受付の目線を上げ、医院全体が上方比較する集団になるのです。反対に全体目標がない医院は、スタッフ同士の下方比較が始まり、コ・デンタルスタッフが“腐った林檎”になる土壌を抱える傾向があります。

処方箋6~リーダーシップの型をつくる~

リーダーシップには、「業務処理型」と「変革型」に分けることができます。業務処理型のリーダーは、スタッフが高いパフォーマンスを示せば多くの報酬を与え、不良の場合はペナルティーを与えるといった外発的に動機を高める手法で組織をマネジメントしていきます。変革型のリーダーは、スタッフの内発的動機を高め、将来を見通してさらに高い目標に向かっていく組織づくりに向いています。そのためには、院長自身がスタッフの尊敬を集める言動と結果が求められ、スタッフを鼓舞してやる気を引き出し、スタッフの創造性や知的な面を刺激する、時には個々のスタッフを思いやる姿勢が求められます。早い時期に、院長は自分のリーダーシップのスタイルを確立することです。

処方箋7~“腐った林檎”の早期発見早期処置~

不良スタッフが1人でも出たら直ぐに排除することです。箱の中の一つの林檎の腐敗は、より悪質で連鎖的な腐敗を招きます。歯科医院の集団サイズによりますが、下方比較するスタッフが全体の1/3を超えてしまうと、その医院は手抜きで満ちて、顧客満足どころか通常の業務さえおぼつかない状況になります。“腐った林檎”を見つけたら、早期に取り除かなければなりません。その時は、いきなり解雇するのではなく、不良スタッフと話し合い、訓告などを重ねコンプライアンスに準じて進めることは言うまでもないことです。この時忘れてならないことは、他のスタッフも院長の対応の仕方を観察しているということです。

使えそうな人材は採用しない

コンサルブログ | 2016年9月7日

相変わらず歯科医院の求人は困難を極めています。複数の求人媒体を利用しても効果が上がらないという院長の声を日常的に聞くようになっています。こういう状況で医院側ができることは、安易に採用して悪循環の基となるスタッフを採用しないことです。

スタッフ採用時の基準を「即戦力」「見た目」「感じのよさ」などをポイントにして、いわゆる「優秀に見える・使えそう」を基準にしている歯科医院が一般的です。このような求人側にとって「優秀に見える・使えそう」といったイメージは、転職を繰り返す人は経験と共に処世術として身に着けていき、採用後一変して不満分子の急先鋒になるケースもあります。

このような不満分子は、時として社外労働組合や弁護士法人と結託して、禿鷹のように歯科医院を食い尽くしていきます。そこまでいかなくとも、医院の労働体制やコンプライアンスの不備を逆手にとって、労働監督暑や所轄保健所などに通報を繰り返して、外部の圧力をもって自らの権利を守ろうとします。院長の身から出た錆なのですが、外部から指導によって組織体制を変えられた院長とスタッフの溝は、なかなか埋まるものではありません。

院内の不満分子と院外の圧力から自院組織を守るために、院長はスタッフ採用、労務、評価を再考する必要があります。トラブルを防ぐ採用ポイントは、優秀な人を雇おうとしないことに尽きます。随分と後ろ向きな姿勢と思われるでしょうが、優秀な人材は優れた組織に自然と集まるものです。平均的賃金より多少上げてみたところで、賃金にしか動機がない人材が集まるのが関の山です。そんなことよりも医院の採用基準を「問題を起こしそうな人」を雇わないことに軸をおくことが肝要です。

1.人手不足の時に採用しない

職場でトラブルメーカーになる人の多くは、退職者の入れ替えなど人手不足の時に採用した人が多い傾向があります。採用を焦るあまり、つい応募者の気になる悪い部分に目をつぶってしまったりするからです。また、採用選択をスタッフに任せる医院も見受けられますが、よほど医院文化を理解しているスタッフでないと、そのスタッフに都合の良い人を採用して、不満分子を増やすために採用したなんていうことになりかねません。以下2~4に該当する求職者を採用しないだけでも大方の雇用問題は未然に防げるものです。

2.健康な人を採用する

スタッフ=労働力を買う以上、健康な労働力かどうか確認するのは当たり前のことです。持病のあるスタッフを雇ってしまい急な欠勤を繰り返されて医院が混乱するケースもあります。病気があることを知らずに採用することは、スタッフにとっても医院にとっても不幸なことです。現在、採用時にメンタルヘルスに関する質問をすることに国は何の規制もかけていません。直近の1~2年に限って病歴を確認することは合理的なことです。

3.転職3回以上は採用しない

女性の場合、結婚・出産などの時期に退職・転職するケースが多いことを念頭にして、退職・転職をしている時期を確認します。結婚・出産以外の時期に転職を繰り返す人は要注意です。また、同業種の職場を1~2年短期間で転職している人は、本人はキャリアアップのつもりでも、社会性に問題を抱える人が多い傾向がありますので、採用を見送る方が無難です。

4.職歴照会を積極的に行う

労働法では、経歴詐称を理由に解雇を認められることがあります。特に医療関係など学歴や資格などを重視される職種ではなおさらでしょう。このことは採用する時に職歴を重視してもよいという司法からの示唆と言えます。歯科医院にある経歴書を見ると、“○○歯科医院勤務~退職”とだけあって、所在地がはっきりしない場合が多く、まずこの点を質すべきです。また、職歴照会をためらうケースが多いのですが、同業者の歯科医院の場合、親身に応じてくれる場合が大半です。そして退職した経緯、前職場での勤務態度、人間関係などの経歴書や面接ではわからない情報が入手できることもあります。職歴照会によって、前職場で組合活動をしていたスタッフを採用しないで済んだこともあります。


(本ブログは弊社発行「UPDATE」のリライトです)

自由診療を勧める前に保険診療を考えてみよう

コンサルブログ | 2016年9月2日

自由診療を患者に勧める前に、なぜ歯科治療費が高いと思われているのか? 保険診療とは何か?を考えてみる必要があるのではないでしょうか。

最近はトリートメントコーディネーターと称するスタッフが在席する医院が増えてきました。トリートメントコーディネーターの協会もある時世になり、歯科コンサルタントも自由診療の導入を仕事の糧としています。事の是非は別として、その内容たるや、操作心理学まがいなことをコミュニケーションの教材として、歯科材料の質や耐久性の違い、審美性や機能性が優れていること、そして治療時間や精度が保険診療に比べて優位であることを強調する手法は浅はかとしか言えません。

その様は90年代の金属床を勧める常套句と同じで、対象が予防処置や根管治療へと変わっただけです。歯科医院のこういった患者説明は、歯科材店の歯科医院へのセールストークであって、患者に向けてのものではないはずです。100歩譲って材料店トークを是としても、患者説明の根底に保険診療ではカバーできない医学的な見地からの臨床が、自由診療という確信が歯科医院には必要です。全ての診療を健康保険でまかなうことが良心的な歯科医療ではなく、患者の状況に合わせて医学的見地から自由診療を提供することは、良心的な歯科医療であること。保険診療に比べての自由診療は「ぜいたく治療」ではなく「良心的治療」という確信をもって治療説明をすれば説得力も増すと言うものです。

歯科治療費が高いと思われている一因は、確信なき歯科医師の自由診療説明と厚労省の現在まで至る一連の保険歯科診療に対する発言にあります。歯科医師側の問題としては、同一医師が同一症例にいくつかのレベル別治療法を提示することをインフォームドコンセントとする傾向です。それも材料店トークに偏していては、患者は寿司の松竹梅と変わらない説明を受けるわけですから、歯科治療費は時価=高いと思うのも致し方ないことです。風邪の治療に松竹梅は存在しないように、本来歯科医療もインフォームドコンセントの根底には最善の歯科診療をするための患者への説明と患者の理解がなければならないはずです。

歯科医師の非医療的な患者説明の背景には、過去、公式非公式に伝えられる厚労省の「家の造りにプレハブもあれば木造も鉄筋も総檜もあるように・・・・歯科なら木造でまあまあだ」発言から端を発して「通常必要な歯科診療は健康保険ですべてまかなえる」へと通じてくるわけです。「通常必要な歯科診療」の「通常」とは、「歯科なら木造でまあまあだ」の「まあまあ」を意味し、「保険歯科診療=木造=まあまあ診療」で「自由診療=鉄筋=ぜいたく診療」という図式が歯科医師に植えつけられてきました。そして「歯科治療費は高い」という患者意識は、一連の厚労省発言と歯科医院の自由診療説明の仕方によって最終的に日本社会の常識と化してきたのです。

内科に「まあまあの保険診療」が存在しないように、歯科にも「まあまあの保険診療」は存在しないことが、本来あるべき歯科医学的診療です。しかし、現在では常識となったMI治療をしようとすれば、「定期検診」「予防処置」といった医療行為がなければ成立しないわけですが、どれも健康保険内で行うことはできません。健康保険内で行えば「痛い」「腫れた」「穴があいた」といった手遅れになった患者にしか対応できなくなる原始的な歯科医療に近いのが歯科保険診療になります。歯周病も歯内療法も然りでほとんどの歯科治療が、制度上これを「仕方ない」とするのが保険歯科診療で、それは歯科医学的に肯定されるものではないわけです。

こういった保険診療の不備と厚労省の見解(財源論はさておき)の矛盾を解決するものが自由診療です。自由診療は歯科医師の矜持です。歯科医師の矜持が、健康保険制度が空気のようになってしまった60歳以下の患者に、自由診療の価値を理解させるのだと思います。機材を介在させて患者心理を操作して、自由診療の価値を高めることはできません。

歯科医院の自由診療化は、保険財源からしても必然で、歯科医学的な見地からも必要なものと思います。しかし、それにはトリートメントコーディネーターが展開する表層的なものでは、自由診療の価値は上がることはなく、とりもなおさずその歯科医院の価値も上がることはないのです。「保険診療とは何か?」という原点回帰こそが、自由診療と歯科医院の価値を上げることになるのではないでしょうか。

勤務医は岡崎慎司を目指せ

コンサルブログ | 2016年8月8日

「『下手でも必ず点を取ってくれる選手とうまいけど点をとれない選手どちらがいい?』クラマーコーチ(日本サッカー界初の外国人コーチ)が聞くと、『下手でも必ず点を取る選手』釜本邦茂選手(元サッカー日本代表エースFW)は応える、クラマーコーチは頷いた。」(「朝日新聞・人生の贈り物」から改変)。この朝日新聞のインタビュー記事を読み、私の“岡崎慎司好み”も欧州サッカーの一流どころから晴れてお墨付きをもらった気分です。

と言うのも、サッカーには贔屓チームもなく、海外で活躍する日本人プレーヤーを知っている程度ですが、その中でも大向こう受けしないレスターシティーFCの岡崎慎司が好きだからです。素人目からも彼の技術は海外で活躍する日本人プレーヤーに比べ華がなく、フィジカルも平均的日本人とそう変わらない、足も速くは見えない、そして容姿も地味でスター性はないように感じます。その対極に位置する海外日本人プレーヤーはACミランの本田圭佑でしょうか。人気やマスメディアの露出では本田に軍配はあがるのでしょうが、使いたくなるプレーヤーは岡崎です。

サッカーの監督ならずとも組織の長ならば、本田ではなく岡崎を使いたい(部下に持ちたい)はずです。それは、下手でショーマンシップがなくとも、結果を出し組織に貢献できるのが岡崎だからです。岡崎はメディア受けするプレーヤーとは一線を画して、地道に監督の信頼を糧にして成長してきたプレーヤーのように思えます。私はそんな岡崎の職人的気質に惹きつけられます。

岡崎のプレーヤーとしての魅力を挙げてみます。

  • ボールを持った相手DFを小学生のようにしつこく追いかけまわす
  • セーブできそうもないライン際のフリーボールを必ず追いかける
  • 味方がボールを持ったら一目散にパスが出そうなスペースに走る
  • 味方のシュートには必ずゴール前に詰めてこぼれ球を狙う
  • ゴール前のどさくさには必ず顔を出しボールに絡む

一言では言えば「愚直」、この徹底した愚直さが、監督には「一途」と評価され信頼を生むのではないかと思います。こう書くと岡崎は技術も人気もないようですが、そういった評価では計りえないワールドスタンダードプレーヤーが岡崎なのです。日本での鈍臭いプレースタイルを海外でも押し通し、日本では下積みも長かった岡崎が海外のスポーツビジネスの世界で実力も評価も上がったことが何よりもの証左です。

翻って、歯科勤務医はどうでしょうか?海外での本田圭佑のように表層的に見えて勝負弱い勤務医が多いように感じます。医療ですから勝った負けたではありませんが、院長や患者の信頼や評価を勝ち取るよりも、患者に愛想よく対応する術や先端的技術や知識を持つことが主眼になっているような気がします。
そういった類の歯科医師は、CTもあるマイクロスコープも揃え、接遇セミナーも受け開業したけれど、経営は上手くいかない。こんな話は巷に転がっているのが現在の歯科界です。こんな歯科医は、勤務医時代に医院に数字を残すには何が必要か考えてこなかった人です。院長に「まじめだけど頼りない」と思われていたことに気がつかずに勤務医時代を過ごしてきた人です。

院長や経営者が求めるのは、クラマー氏曰く「下手でも必ず点を取ってくれる選手」です。技術も知識もあるけれど数字を上げることができない、患者からの信頼も少ない勤務医は、院長からすれば本田圭佑みたいな存在なわけです。院長から信頼される勤務医でなければ、技術を研鑽する機会も減ってくるでしょうし、将来開業医として必要とされるビジネスセンスも磨かれることはありません。医療ですけれど、開業は実業として数字を上げながら医療サービスを提供することです。臨床家として成功するためには、勤務医は岡崎慎司を目指すべきでしょう。

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勤務医が上手くなるには何が必要か

コンサルブログ | 2016年7月21日

先般、「失敗から学ぶ35歳からのキャリアプラン」と銘打った歯科医師の経営勉強会のセミナーに参加する機会がありました。講師の歯科医師が独立開業して現在の成功に至るまでに重ねてきた失敗談を、開業前の歯科医師と歯科大学生に講演形式で話して、そこから何かを学んでもらうという企画です。バラエティー番組「しくじり先生」を模倣して歯科版に仕立てたセミナーです。実は、歯科D1グランプリのようで、講師として参加するのは、なんだか気恥ずかしかったのですが、参加して新たに学ぶことがありました。

当日、私は一番手で登壇したため、その後に続く各講師(開業医)の話をじっくりと聞くことができました。各講師それぞれ失敗談を熱演(?)され面白可笑しく話を聞いていたのですが、この内容がどれほど開業予備軍の歯科医の胸に響くのか、フッと疑問を感じていました。しかし、セミナーで居眠りしている歯科医師の姿を見慣れた身には、真剣に話を聞き入る受講者の姿は、実に新鮮でもあり意外でもありました。

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会場の真剣さから、受講者の関心は捕まえていると思ってはいましたが、この内容が本当に開業予備軍にとって学びになるのかは、まだ半信半疑でした。しかし、セミナーアンケートからは、受講者の真剣さを反映するかのように、ほとんどの歯科医がセミナー内容に対して高評価なのには、改めて驚かされました。この上々の結果を突きつけられると、開業予備軍歯科医師のレベルに対しての私の認識は甘く(もっと意識も力量も高いと思っていた)、主催者の認識が的を射ていたと認めるしかありません。私が数多くの開業疑似体験をしてきて耳年増になっているからでしょうか、それにしても今回の内容から学ぶことがあるようでは、「まだまだ幼い、開業なんか考えてはいけない」と悔し紛れに一くさり言いたくなります。

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このセミナーで、私は開業予備軍と歯科大生のレベルを再認識することができたことは、先に述べたように新たに学び直すことができ、主催者には感謝しています。と感謝しながらも、受講者の「どうすれば上手く(技術)なれますか?」という幼稚な質問には、頭痛がしてきました。この質問はナイでしょう。開業前とはいえ、同じ国家ライセンスを持った立場、プロがプロにそんな質問をするべきではないのです。例えて言えば、2軍のプロ野球選手が1軍のプロ野球選手に「どうすれば打てるようになりますか?」と聞くでしょうか。少なくとも「内角球をさばくにはどのように左肘を畳んで打つのですか?」と聞くのが、2軍とは言えプロのレベルの質問です。また今回のセミナーでのことではありませんが、勤務医がよく「モチベーションが上がらないよね」などと口にするのを聞くたびに思うのは、プロ野球選手が打てなかったことを、いちいちモチベーションを理由にしていたら、翌年の契約は解除されるでしょう。かように今の開業予備軍の歯科医師は幼いのです。

話は戻ります。「どうすれば上手くなれますか?」というストレートな質問に対して、不意を突かれたのか気後れしたのか、講師の歯科医師たちも、セミナーやスタディークラブの活用法といった類の回答が目立ちました。しかし、この答えには少し物足りなさを感じます。歯科医師が臨床家として上手くなる(一角の歯科医になる)には、テクニカルスキルとヒューマンスキルがバランス良く向上することが大切なのは言うまでもないことです。セミナーなどのデモ用画像を座学することは、ドライビングシミュレーターを操縦しているようなもので、実際の公道を走るのとは次元が違う話です。ハンズオンセミナーも作られた環境で行われるドリル効果を求めるものです。歯科医師が上手くなるには、公道を走ることです。つまり名医でなくとも社会性のある院長の元で最低5年は勤務することが、上手くなることの最短距離だと思います。

5年は長いと感じる向きもあるかも知れませんが、自分の治療結果の3年・5年経過を知らずして、治療の成否を知ることができるでしょうか?また1~2年の在籍期間で、自分の技量の何を評価できるのでしょうか。それこそ痛みをとって被せて目の前の結果ばかり求められる便利屋的歯科医になるのが関の山です。一般企業では勤続10年がなんらかの役職につく目安とされます。一つ所で、それだけの職務経験と人生経験を積むことが、技能と良識を身につけるには必要とされているからです。

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このことは歯科医とて例外ではありません。しかし、勤務医の労働契約は2~3年を基本にしていることから察するに、年々勤務医の在籍年数は、短くなっているように思います。これではいくらセミナーやスタディークラブに参加したところで、上手くなるのは難しいのです。なぜならば、繰り返しになりますが、生活医療である歯科はテクニカルスキルとヒューマンスキルが一体となって、初めて患者から評価されるからです。テクニカルとヒューマンは補完し合う関係で、車のタイヤの空気圧と同様に左右前後適正でなければ機能しないものなのです。開業予備軍が、技術と良識(社会常識)を一体で学べる場は、一般開業医の診療所しかないのです。勤務医にとって勤務先歯科医院こそが最高のセミナー会場なのです。

本セミナーのテーマ「失敗から学ぶ・・」ことで一番大切なことは、勤務先選びではないかと思います。開業予備軍の歯科医師は、給与や院長の有名無名、そして立地で選ぶのではなく、院長の社会性と通院している患者さんの傾向を見て判断することを勧めます。

アマゾンの長老に学ぶ

コンサルブログ | 2016年6月1日

月末は地方の歯科医院や歯科医師との仕事が多くなり、移動時間に本や資料を読み過ごす時間が多くなります。5月末の移動では、十数年前にスクラップした経済学者宇沢弘文氏(故人)の「地球問題の論理的意味」を再読して、当時印象に残った一文が、十数年経ってさらに身にしみて感じ入ることになりました。

この小論は全体として、近代的科学技術を盲目的に信頼する生き方と資本主義経済を批判的な視点で捉えており、アメリカの製薬会社が開発する新薬の75%がアマゾンの熱帯雨林の周縁に居住する小数民族部落の長老やメディシィマンからの伝承的医療を基にしているエピソードを通じて、現代文明(主に資本主義)の病理的現象を見事に浮かび上がらせています。とりもなおさず、この現象は近年の歯科医院経営のあり方への警笛のように聞こえてきます。

そのエピソードを要約すると、長老やメディシィマンの中には、アマゾン熱帯雨林の中に生息する動植物・微生物や土壌・鉱物などを材料にした疾病・傷害の5千種類におよぶ治療法を知っている人もいるといいます。製薬会社の専門家は、これらのサンプルを持ち帰り、ラボラトリーで化学分析をして、人工的に合成し、新薬として売り出すそうです。近年、アメリカの製薬会社の多くは巨額な利潤を享受していますが、その大部分は、このようにしておこなわれている新薬開発によるものといわれています。

この状況を知ったブラジル政府は、製薬会社からアマゾンの長老たちに特許料を支払う制度をつくったそうです。資本主義経済にどっぷりと浸かった私たちからすると、当たり前の制度であり、新薬の開発情報をネコババ的に搾取している製薬会社の姿は、大航海時代のヨーロッパ人が、未開地から香辛料などの地産品を搾取していた時代の写し絵のように見えてきます。

話を戻しますと、現代の私たちなら当然の権利として特許料を受け取るでしょうが、アマゾンの長老たちはこぞって、特許料を受け取ることを拒否したそうです。それは、自分たちの持っている知識が、人間の幸福のために使われることほど嬉しいことはなく、その喜びを金にかえるようなさもしいことはしたくないとの理由からだったそうです。

翻って見て、利潤を追求してやまない資本主義的企業の末端にある歯科医院とそれに関わる流通小売・情報産業・コンサルティング業などのあり方と、アマゾンの長老たちの清々しい生き方とのあまりに鮮明な対照に、恥じ入るばかりです。実のところ利益を追求するためにホスピタリティーという言葉を頻発したり、患者利益としたり顔で語ったりする私たち医療関係者は、アマゾンの長老たちに医療の真髄を学び直さなければならないでしょう。

メンテナンスを勧める理由を30あげられますか?

コンサルブログ | 2016年5月23日

生活者の本質を知ることなく「メンテナンスは常識」と思っている歯科医院のスタッフでは、「メンテナンスを勧める30の理由」を考えることは、困難なことでしょう。10個程度まではスラスラと口をついて出るでしょうが、そこから先は「メンテナンスは常識」と思っているスタッフほど難しいと思います。さらには、予防歯科に真剣に取り組んでいる医院であるほど、門外漢である患者さんに対してメンテナンスの価値を理屈ではわかってもらえているけれど、腹の底から納得してもらえる説明ができない傾向があります。そして、そんな衛生士が「よく磨けています。このままがんばってくださいね」と常套句をメンテナンス毎に伝えていると、メンテナンス4回目頃には、約50%の患者は自然と離れていきます。

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生活者が歯ブラシ代にかける年間費用は500円弱です。歯科医院で販売している歯ブラシ代金からすると、「そんなに少ないはずがない」と思うでしょうが、これが一般人にとっての常識なのです。年間500円程度しか歯ブラシを消費しない生活者に、健康保険であれ自由診療であれメンテナンスの費用と時間を年間3回余り負担してもらうことは、歯科医院側が考えているほど容易なことではありません。その結果、メンテナンスの価値をなかなか理解できない患者に対して、「あの患者さんはデンタルIQが低いから」と患者側の意識に「解」を求めるとすれば、その医院は歯科の風土病に感染しています。

歯科医院側が生活者の実態を知っていれば、患者さんに「メンテナンスを勧める30の理由」を持つことは比較的容易になってきます。画像ソフト・口腔内写真・位相差顕微鏡・唾液検査など、患者説明や動機付けをする道具はたくさんありますが、それだけでは患者さんの生活背景や意識にまでメンテナンスの価値を結びつけることは難しいでしょう。

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「メンテナンスを当たり前にする コミュニケーション」セミナーのご案内

今回のセミナーの目的は、「メンテナンスを勧める30の理由」を参加者相互から学びとり、患者さんとのコミュニケーションを豊かにしてもらうことです。来る6月12日(日)のセミナーは都心の飯田橋駅から徒歩3~4分の距離に位置した歯科医院を会場として、チェアサイドで実際の現場に即して歯科スタッフにメンテナンス時のコミュニケーションを経験してもらいます。きっと、座学での学びをチェアサイドでの行動に移すことによって学びの深さを実感できることと思います。

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詳しくはこちらから

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看板は歯科医院の文化

コンサルブログ | 2016年4月26日

都内某所を歩いていると「痛くない歯科」と銘打った看板が目に飛び込んできました。この看板を見た瞬間、なぜか郷愁を覚え、「中国人の気持ち良い耳そうじ」と書かれた古びた床屋の看板を、不思議な思いで見ていた子供の頃にタイムスリップしていました。

そして、医療法広告云々以前に、その歯科医院に“切なさ”を禁じ得ない思いに到りました。少し離れたところに目を移すと、「CT・マイクロスコープ完備」とデカデカと書かれた看板。ここまでくると痛みとか技術は問題ではなく文化が違い、コンサバティブな私には、その医院に入るのはずいぶんと勇気がいります。

歯科医院の設備水準が向上しているのと同様に、都市の街並みや施設の整備も進み、床屋の看板を不思議に見ていた60年代東京オリンピックの頃とは都市の景観が違ってきています。もはやサイン計画は都市空間の公共性が問われるのが普遍的になった現在、この歯科医院のサインはいかにも自らの医院の価値を下げていると同時に歯科界の評価を貶めているように感じます。

「景観とは人間を取り巻く環境の眺めに他ならない」という東京工業大学名誉教授で景観工学者の中村良夫氏の定義があります。私流に解釈すると「人が感覚や置かれている立場によって環境を検証し、文化によって解釈するシステム」となります。したがって人は景観を都市美の視点で解釈したり、人が違えば、件の歯科医院のように経営の観点から景観を構築したつもりで破壊したりするわけです。

そういえば、この歯科医院「審美歯科」とも、ことさらに表記していました。なるほど、恐いもの見たさに一度は来院したくなる歯科医院かも知れません?!これが歯科雑誌に取り上げられる看板マーケティングの力(恥?)というものなのでしょう。

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「歯周病の拡大解釈」とは

コンサルブログ | 2016年3月23日

去る17日NHK「クローズアップ現代」が終了しました。キャスターを務めてきた国谷裕子さんの健全な批判的視点からのコメントが聞けなくなり、とても残念な思いです。前後して高市総務相の放送局への電波停止命令発言には、唖然とさせられました。中国政府のようなことを言ってのけ、「自由主義政権の総務相とは思えない見識の低さ」とノンポリティカルな私でさえも思った次第です。高市発言と「クローズアップ現代」の終了は、時代の綾でなければ良いのですが。

さて、「クローズアップ現代」での国谷裕子さんと菅官房長官の「集団的自衛権」のやり取りを記憶されている向きもあるかと思います。菅官房長官は「集団的自衛権」の解釈変更の正当性を、「外的要因の変化」と「国民の生命保護」を拠り所としており、その説明に釈然としない私は、あろうことに健康保険制度下でのメンテナンスの保険適用を正当化する歯科医を思い浮かべていました。

「集団的自衛権限定的変更」と「歯周病メンテナンスの保険適用=予防」は、事例解釈を持ち込むことで、どちらも論拠の原理原則が見えなくなっている点が同じです。「集団的自衛権」ならば、憲法9条の理念を前提に解釈されるべきですし、「予防歯科」でしたら健康保険制度下で適用の可否を判断することが真っ当な論理だと思います。

4月からは、歯周ポケット4ミリ以上の限定的算定要件とSPTⅡの新設に加えて「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の施設基準が設置され、本来ならばこれで今まで以上に保険のSPTと自費メンテナンスの使いわけが可能になると思います。これを契機に以前のような保険制度下での歯周病の治療とメンテナンスの意図的な混同をやめることが、今後の予防歯科の患者理解と国民的拡大へと繋がるはずです。

話しは前後しますが、時の政権が電波停止命令をチラつかすのであれば、精神的自由権の中でも最も高次の「信教の自由」がそれ以前に制限されて然るべきですし、「集団的自衛権」を解釈変更するならば憲法9条を改正することが、国民に大義を説くことになると思います。論拠の原理原則を曖昧にして話しを進められると、浅学非才の私には、事の是非以前に、高市さんや管さんの件の発言に“胡散臭さ”を感じてしまうわけです。

予防歯科も同様です。
メンテナンスが保険か自費かで汲々としている歯科医の説明が、「集団的自衛権の解釈変更」さながらメンテナンスは「歯周病の拡大解釈」のように国民に感じられて、理解が深まらない元凶となっているのではないでしょうか。

この事態を見て国谷裕子さんでしたら、「メンテナンスは疾患でないので自費治療になるのが原理原則、このことを初診時に患者にはっきりと伝え納得してもらわないから、国民に予防歯科が浸透しない」とコメントされるのではないでしょうか。

国谷さんの再登板を期待します!

歯科医院は壮年期女性を積極雇用しよう

コンサルブログ | 2016年3月4日

車を運転しながら国会中継を聞いていると、女性議員のいささかヒステリックな声で、保育園に申し込み落選したブロガーのブログを読み上げる声。車を止めてTV画面を見ると、件の議員が待機児童に関する質疑を安倍首相としている一幕でした。この質疑は、待機児童問題を解決する具体的内容にまで掘り下げられることなくタイムアウトになりました。待機児童が解消しない原因は、労働条件の悪さから保育士のなり手がいないこと、保育士雇用政策に問題があることは、厚生労働省資料から見てとれます。保育士の雇用は国庫からの助成金に頼る施設が圧倒的に多く、根本的に歯科衛生士不足とは様相を異にしています。

安倍内閣は女性の活躍推進を成長戦略の中核として、民間企業における役員への登用促進や、女性国家公務員の採用をより一層拡大し、積極的な登用を推進したりして、女性の社会進出のムーブメントづくりをしています。しかし、この雇用政策は、キャリア志向には厚く中間層には薄いことが、朝日新聞社が行った非正規で働く35歳~54歳の独身女性の実態調査からも垣間見ることができます。(グラフ参照)さらに2015年の総務省の労働力調査によると、働く女性の56%が非正規です。そのうち約半数が35歳~54歳で、年収250万円未満が約70%を占めています。先に挙げた保育士35歳の平均年収は約214万円(厚労省調査)ですが、都内の新卒衛生士の年収が約300万円(都内衛生士養成校調査)ですから、歯科衛生士は他業種で働く女性に比べて恵まれています。

歯科衛生士の有資格者243,377人(平成25年)に対して就業者数108,123人ですから、50%以上が未就業者になります。未就業者の全体の約53%、25歳~39歳では約70%が再就職を希望していますが、再就職は進んでいない状況です。その理由の大半は、「勤務時間」と「自分のスキルに対する不安」にあります。この点を解決できれば、再就職が可能なわけですから、他業種で働く女性に比べて恵まれています(甘えている)
(数字は日本歯科衛生士会資料による)。

いくつかの衛生士養成校で聞き取り調査をしてきましたが、就職希望事業所の順位は、社会保障と福利厚生がしっかりしている公的機関、企業歯科、大規模医療法人、さらに医療介護事業者と続きます。有効求人倍率15倍の現在、中規模歯科医院(売上約8千万まで)以下では、新卒求人はノーチャンスなのが現実です。然るに人材・転職エージェントに費用を払い、むやみにアプローチしている歯科医院がなんと多いことでしょうか。

中・小規模歯科医院の歯科衛生士・受付・助手求人は、壮年期(31~44歳)の女性にターゲットを絞り込むことが合理的な求人戦略です。その上で、

  1. 仕事と家庭を両立・調整できる職場環境の構築
  2. 復職・転職支援のPR
  3. 教育/研修の実施

を確立していけば人材確保の見通しはつくはずです。少なくとも、先に挙げた他業種で働く非正規の有能な女性、保育士を受付・助手の人材として確保できるのではないでしょうか。

中・小規模歯科医院は、国の政策や歯科医師会の衛生士復職支援、そして人材・転職エージェント、求人求職サイト頼みから脱して、壮年期女性の積極採用を今すぐにでも始めるべきでしょう。

都心患者層と受診目的の変化

コンサルブログ | 2016年2月26日

都心部の歯科医院から、この数年患者層が変わったと相談を受ける機会がありました。相談を受けた医院の立地は、80年代後半から90年代にかけて、「箱崎・八丁堀・新川」のオフィスビル開発が活発だったエリアにあります。現在このエリアは2000年代以降の湾岸開発地域「勝ちどき・月島・晴海」地域の東京駅方面からの入り口に位置しています。

開業して10年になるこの医院の患者層は、当初はオフィスビルで働くサラリーマン・OLが主体でしたが、ここ数年この地域のオフィスは、「豊洲・東雲・有明」「品川・大井町」といった2000年以降開発が進んだ湾岸エリアへの移転が目立ち、オフィスワーカーの患者が減り、地域住民と思われる患者が増えてきた感じがするとのことでした。確かにこのエリアの外部環境は、キリンビール本社跡地が高層マンションにとって変わったように、オフィスビルの立地にマンション建設が進んでいます。それに伴い患者層も変化しています。

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このような医院立地の外部環境→患者層→診療内容までの一連の変化を、医院アンケートから見てとることができます。オフィス街が住宅地化することによって、大きな流れとして「治療から予防へ」と患者の来院目的が変わってきたことが、2011年と2016年の患者アンケートの比較からも読み取れます。むし歯の治療が減り、検診やメンテナンスの目的の来院者が増えています(グラフ参照)。また、他院での治療の再治療が増えたのは、他地域からのマンション移住者による需要と予測されます。

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次に医院のPR環境の変化として、2011年当時この医院のwebサイトはスマートフォン対応ではありませんでした。しかし、デスクトップパソコンを主として使用するオフィスワーカー中心の患者層には、スマートフォン対応としていない影響は少なく、来院者の22.4%が医院webサイトを認知経路の一つとして見ていました。しかし住宅地化した同地域では、スマートフォン対応でない同医院のwebサイトを見た来院者は、5.0%に留まっています。スマートフォンの普及と同時にオフィス街と住宅地の生活者では、webサイトを見る媒体が違うと感じざる得ない数字です。もちろんこの変化は端末の問題だけではないでしょうが、大きな要因と予測されます。

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このように都市部の歯科医院は外部環境の変化によって、患者層そして最終的には受診傾向も変化してきますから、院内での“肌感覚”だけで医院経営を考えていては、見当違いの設備投資やPRになる可能性があります。

住宅地化によって治療の流れも2000年当初の

う蝕→修復→抜随(2次う蝕)→クラウン→抜歯→ブリッジ→義歯

から現在は

う蝕→修復→予防処置→2次う蝕の減少→メンテナンス

へと変化しています。

その流れに沿った設備投資や情報発信でなければ、生活者から必要とされない歯科医院になってしまうでしょう。

この地域、江戸時代は水運の中心地として栄え、江戸の経済を支えてきました。現在はオフィス街から住宅街へと大きく変貌してきたように、歯科医院の患者の気持ちも大きく変わってきたようです。江戸時代も現在も変わらないのはカモメの気持ちだけのようです。

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日吉歯科診療所汐留スタイル

コンサルブログ | 2016年2月17日

一昨日、東京汐留で3月30日に開院する日吉歯科診療所汐留を見学する機会がありました。現在、歯科界では1歯科医院の患者数は1日あたり約14人に減少し、生活者の高齢化も進み、マーケットリサーチをしないで開業は成立しない状況です。そういった点から、歯科医院のデザインはより商業建築的要素が色濃くなり「デンタルクリニックらしくない」という部分にポイントが置かれ設計・デザインすることが主流になってきています。

日吉歯科診療所汐留は、東京においても山形県庄内の本院のインテリアデザインをほぼそのまま移植するイメージと聞いていましたが、さてどうだったでしょうか。私は仕事柄、歯科医院建築やインテリアデザインを辛口に見る嫌いがあり、一定の基準を持って評価しています。

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歯科医院の平面プランニングの必要諸室・コーナーを3つに分けて、それぞれの目的と機能が明確でなければ、いくら商業デザインとして優れていても医療機関のデザインとしては評価していません。まず患者だけの動線(駐車場・階段/スロープ・入り口・待合室・手洗い洗口・トイレなど)、医療従事者だけの動線(院長室・スタッフルーム・消毒滅菌室/コーナー・技工室/コーナー・トイレなど)、そして患者と医療従事者が混在する領域(診療室・レントゲン/CT室・カウセリングコーナー・オペ室など)、このような諸室・コーナーの効率性と感染予防対策が十分に施された上でプライバシーも守られていて、照度700ルクス以上の居心地の良い空間が、医療機関インテリアデザインとしてあるべきだと思っています。このような私的な基準は、都内の歯科医院はほとんどクリアしないのですが、日吉歯科診療所汐留は軽々とクリアしていました。

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診療室は5箇所あり全て個室、個室の広さは保健所の施設基準5.4㎡(ユニット1台当たり)の約2倍あり、採光は十分で眼下には汐留イタリア街が広がるロケーション。消毒滅菌室も他の諸室から確立された個室。そして汐留診療室の眼目は医院内の通路幅の広さ、特に待合から診療スペースへ移動するスロープ幅と空間雰囲気は医院の安定感を感じられてとても気に入りました。カラーリングの基調色は白、キーカーラーは和色のえんじ、待合室とフローリングは木目調で、落ち着いた感じで仕上げられていて、平凡にして非凡といった感じです。

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日吉歯科診療所汐留の施設のインテリアデザインの特徴をまとめると、

  1. 待合室は過剰に広くはないがシック
  2. 万全な感染予防対策
  3. 十分な医療廃棄物スペース
  4. チェアユニットは広い個室
  5. 確立された患者・医療者の動線
  6. 患者のプライバシー保護
  7. バリアフリー仕様
  8. インフォームド・コンセントが受けられる

これらのことが挙げることができます。昨今、歯科医院は、サインがなければ歯科医院と気がつかないようなインテリアデザインが持て囃されています。方や日吉歯科診療所汐留のインテリアデザインは、商業建築的要素も取り込みつつ、医療機関であるプライドと清潔感、安定感にも配慮し、幼児から高齢者まで違和感なく安全に利用できるインテリアデザインでした。開院前ですから画像では紹介できませんが、これから開業や改装を考える歯科医師には、不易流行「日吉歯科スタイル」は参考になるはずです。

エマニュエル・ムホー プロデュースの歯科医院を見たい

コンサルブログ | 2016年2月2日

大寒も過ぎ明日は節分、続いて立春。寒の水よろしく寒の風に身をさらし、たるみきった肉体と精神を腐らせないように足で情報収集、エリアマーケティングの今日この頃です。

寒風の中を町歩きしていると、銀行と歯科医院は界隈の敵の様に見えてきます。街並みにおいて極めて不作法な業種は、銀行と歯科医院といって間違いないでしょう。銀行は圧倒的な資金力と財務省傘下の威に物言わせ、界隈の一等地に不作法で広告的な建築をつくったあげく、3時になれば預金者が経済活動真っ直中というのに、シャッターを下ろしても平気の平左衛門。紳士然として庶民を見下し、さらには街並みまで分断するわけです。

歯科医院はといえば、2000年当初に武富士などが経団連に加盟して、隆盛を誇ったころのサラ金の看板を彷彿させる有り様です。図体に比べてやたら大きく下品な看板を出しまくり、町歩きの気分をズタズタにされます。「何がヘルスケアだ。歯医者の看板が一番メンタルヘルスを悪化させる」と一席ぶちたくもなります。

銀行も歯科医院も広告的ファザードや看板を展開しておいて、「心のふれあい」やら「ホスピタリティー」などとよく平気で言えたものです。当の歯科医が思おうと思わざるとに関わらず、生活者から歯科は、公益性が高い職業と思われているわけです。生活者が期待するコモンセンスを大切にすれば、医院経営は成功すること間違いないはずです。

「うちの看板、まだ小さい?」そんな歯科医師の疑心暗鬼を吹き飛ばすように、コモンセンスとホスピタリティーを店舗に具現化して、繁盛している(たぶん)銀行が、巣鴨信用金庫です。歯科医院の内装もずいぶんとモダンになってきましたが、巣鴨信用金庫志村支店に比べると、まだまだ物足りません。歯科医師の間で人気のあるデザイナーのプロデュースする歯科医院を訪れてみても、エマニュエル・ムホーが手がけた建築や空間に比べると「まだ居たい。長く居たい。」といった気持ちまで高めてくれることは決してありません。

どなたか、カラフルでオープン、そしてコモンセンスとホスピタリティーを供えた歯科医院をエマニュエル・ムホーに プロデュースしてもらい、日本の歯科のカルチャーを変えてみませんか。

http://www.emmanuelle.jp/

巣鴨信用金庫志村支店

巣鴨信用金庫志村支店

巣鴨信用金庫志村支店
巣鴨信用金庫志村支店

2016年文化的歯科医院がなぜ必要なのかを伝えていきたい

コンサルブログ | 2016年1月5日

新年明けましておめでとうございます。
正月三が日は好天に恵まれましたが、なんだか目の前はもやもやした感じの歯科界です。

年末年始の休暇に入り、目を通すことなく山積みになっている業界誌を整理することが、ここ数年の習いになっています。子供の玩具整理同様に片付けの手は止まり、いつの間にか業界誌を読み入っています。ページをめくりながらこの10年余りの間、歯科医院の診療とサービスの質は格段に上がってきたと感じます。しかしその割には、歯科医院への生活者と国の評価は、一向に上がることがありませんでした。メディアに到っては常に歯科を批判の標的にしてきた10年でした。

この間を振り返るとCT、3D光学ミーリングマシーン、マイクロスコープなどに代表される医療機器と歯科材料の接着材や陶材が、歯科診療の質の底上げを先導してきました。つまり歯科理工学、大きな括りでいえば文明の利器によって歯科医院の質は向上してきたことになります。文明(歯科理工学)は、より速く・より精密に・より効率的に、歯科医師の手足に代わり良質な歯科医療をつくりあげてきたことになります。その反面、行きすぎた文明が人類を滅ぼすように、先行した歯科理工学によって、歯科医師は臨床においても経営サービスにおいても、あらゆる局面で物事を掘り下げて考えなくなり、医院文化が育たない10年間だったように思えます。

医院文化は文明(歯科理工学)とは正反対に位置して、より遅く・より深く・より非効率で、我慢や不便なものを乗り越えて成り立っています。だからこそ歯科医師は臨床力がつき、賢明になり心も豊かになり、良質な医療サービスを提供できるようになるのだと思います。こういった文化を感じることができる歯科医院が少なくなったことが、取りも直さず世間からの低評価に通じているのではないでしょうか。

そんな業界評価の中にあって、文明を取り入れながら揺るぎない文化も育ててきた医院もあります。先端の歯科医療を提供しながら、医療人としての考えや心構え、教養を深めるといった文化をしっかりと根付かせ、さらに後進の目標にもなっています。その代表格が酒田市の日吉歯科診療所と福岡市のつきやま歯科医院です。両医院は、単に職人的技術力を誇示したり、先端医療機によるサービス財をPRしたりすることなく、積み上げられたエビデンスと優秀な人材が医院文化を築いているために、生活者に留まらず同業者からもメディアからも評価されています。

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この両医院に関する仕事に、2015年から2016年にかけて多少なりとも携わらせていただいて、文化と文明のバランスの取れた医院を間近で見ることができ、文化的歯科医院の在り方を学び直す機会になりました。2016年は、この経験を多くの歯科医院に伝えていくことが、私たちの使命であり仕事の価値だと思っています。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

審美歯科には象牙色

コンサルブログ | 2015年12月18日

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ぶらり一人で出歩く時には、都心部やベイエリアにある外資系ホテルにはどうも足が向かない。クリスマスイルミネーションが煌めき出すこの時期は尚のことだ。オオクラの本館が閉館した今、立ち寄るホテルは、江戸川橋・椿山荘と神楽坂・アグネス、お茶の水・山の上ホテルと皇居の鬼門に偏っている。中でも山の上ホテルは、今では有名な『てんぷら近藤』店主の若かりし職人時代、一席分を揚げ終わる都度に油を床下の容器に流す姿を「もったいないな」と貧乏臭い了見で、カウンタ−越しに見ていた時分から通っている。

私のコンサバティブな嗜好は、歯科医院のインテリアにも一脈通じ、デザイナーズ歯科医院と称されるインテリアが、なんだか軽薄な感じがして、居ること数分で疲労感に襲われる。この手のインテリアは『商店建築』で見れば十分で、何回も通う気にはなれないのは、私だけではないだろう。定期管理型歯科医院は、避けるのが無難なインテリアに思う。

同様にゴージャスな煌めきのイルミネーションにも食傷気味で、山の上ホテルの暗闇を引き裂くようなイルミネーションの方が、格段に洒落て感じる。審美を標榜する歯科医院も真っ白なインテリアを信奉して、真っ白な歯を最上とするばかりでは、頭の中まで真っ白と勘ぐられても仕方ない気がする。デザインに余白、イルミネーションに暗闇が必要なように、日本人の審美歯科医なら、透写されるアイボリーの美しさに気付いて欲しい。外資系ホテルのようなゴージャスな歯科医院はもう充分な気がする、山の上ホテルのような文化の香りを感じる歯科医院の出現が待ち遠しい。

上野駅中央コンコースに思う

コンサルブログ | 2015年11月20日

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上野駅中央コンコースを通るたびに、今は亡き恩師の歯科医が、酔うと口ずさんでいた「ああ上野駅」が聞こえてくる。東京駅丸の内コンコースに比べ、薄暗く垢抜けない感じだが、高度成長期の昭和の匂いを残していてホッとする。
朝6時54分人影もまばらな中、クリスマスツリーと酉の市のポスターそして巨大なおかめの熊手、この異質なものが調和して存在できるのがこのコンコースの懐の深さだろう。それは、自らの存在をことさらに主張しない器の魅力ともいえる。

駅舎の売店の新聞は、一斉にパリでのテロを報じている。国家レベルの戦争も個人の喧嘩もそしてテロも、対立が形を変えたものである。
対立は自らの存在が脅かされるところに、その根本的原因がある。私たちは「差別化」という言葉を良く使う。それは「自己の存在意義」を「他者との差別化」から見出し、「他者からの承認」によって成立させている。
私たちは習いとして染みついた「差別化」を、往々にして「あなたとは違う」という言葉に代えて、自己の存在を主張しがちだ。

この「あなたとは違う」を繰り返すことで、知らず知らずに他者の存在を侵害している。
世界も組織も個人間も上野駅中央コンコースのような存在になるには、異質な者同士が優劣競う前に相互理解が必要に思う。

異質な者同士が生きるためには、上野駅中央コンコースで「ああ上野駅」を口ずさむのも悪くはない、と思いながら米沢に向かった。

落ち葉に見る組織

コンサルブログ | 2015年10月26日

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事務所から歩いて7~8分の処に全長約400m 全幅約40mの桜並木が美しい播磨坂があります。
その播磨坂を事務所へ行く途中に通ると、前日からの夜来の風、冬の到来を告げる木枯らし1号が、並木坂の端っこに桜の葉を吹き寄せていました。吹き溜まった桜の葉を見ると、まだ緑色のものもあれば、紅赤、真紅、黄金色、黄土色と様々な色が織りなしています。

最近は組織論やリーダーについての本を読む機会が多いせいか、様々な色の落ち葉の美しさは、理想の組織の在り方に見えてきます。青葉も枯葉も美しく、組織における年代ごとの輝きの様を見るようです。どの色も主役であり脇役である落ち葉の吹き溜まりのような組織、理想ですね。

織りなす落ち葉の色に触発されてか、再び荻生徂徠の為政者(リーダー)は、人材はどう選びどう扱うかという芳賀徹氏(静岡県立美術館長)の文章が頭の中を反芻し、徂徠の卓越した見解が腑に落ちました。

 “人を雇うなら暴れ馬を採れ。初めからおとなしい秀才ばかりそろえたってだめだ。どこかで抵抗してくるような度胸や野心のある人間を取り立てて、その荒馬を乗りこなせ”と徂徠は上に立つ者の力量をも問いているわけです。

およそ300年の月日を越えて徂徠から現代のリーダーに突きつけられた言葉です。
徂徠の言わんとしていることは、現在の日本のリーダーにも、歯科界のリーダーにも、そして小組織の歯科院長であっても、リーダーには不変に求められることと思います。

医療経団連(仮称)決起集会レポート

コンサルブログ | 2015年6月9日

IMG_0171.JPG去る5月31日に「病院がトヨタを超える日」などの著者で医療法人KNI理事長の北原茂美医師が主催する医療経団連の決起集会が丸ビルホールで開催されました。

当日、日吉歯科診療所の熊谷崇先生、株式会社オーラルケア代表取締役大竹喜一氏と参加してきました。

他業界からの参加者は医師、薬剤師など医療関係者に留まらず、IT関連企業、農林水産業、広告業、住宅メーカー、政界、法曹界、教育界など約250人(推定)と多岐に渡り、来賓として内閣官房医療戦略室参事藤本康二氏も出席されていました。

当初準備不足を懸念されていましたが、本会のコンセプトを共有するという基盤強化は達成できたのではないかと思います。

歯科から見た、医療経団連の意味

SKMBT_C28015060910050.jpg2030年には医療産業への就業者が944万人となり、国内最大の労働者人口になると推計されています。

しかし、国民皆保険の限界、医療費抑制政策、診療報酬制度という統制経済の縛りなど、医科・歯科が抱える問題は未解決のままです。

現在でも過重労働と低収入、社会・労働保険の未加入などの理由から人手不足の歯科ですが、今後診療報酬はさらに圧迫され、雇用状況が悪化することは明らかです。

歯科の政治的窓口の歯科医師連盟は、不透明なロビー活動により再び東京地検に摘発され、歯科への利益誘導は期待できない状況です。

この閉塞した現状に対して旧来の方法論で望むならば、歯科の収入減少には歯止めがかからず、それに伴い就業者の確保はますます難しくなり、日本社会全般に先行して歯科の二極化が進んでいくでしょう。

国も産業も格差から衰退が始まる傾向は歴史が証明するところです。

この傾向は他業界も同様ですが、労働基盤が脆弱な歯科は、各産業に先行して格差・衰退が進行していくと予想されています。

SKMBT_C28015060910061.jpgそれではこのような状況にある歯科が、医療経団連に参画するとどのような改革がなされ、どのような取り組みが求められるのでしょうか。

第一に、停滞する社会状況を歯科の括りだけではなく地域社会から見直し、歯科の立ち位置を歯科医師会や歯科流通機構といった旧体制から地域産業構造の中に移す意識が必要です。

つまり旧体制のネットワークから地域産業を主体とした広域ネットワークへと軸足を移すのです。

そして広域ネットワークを織り上げる多業種の人達(地域住民でもある)の活動を組み込むことで、歯科は国の制度で保護されている医療から独立独歩の生活産業へとシフトする環境に位置することができます。

産業化された歯科には多様な人材、進歩的な考え、先駆的なシステムが集まってきます。

同族化が進んだ旧体制の歯科では、院長の寿命が医院(会社)の寿命でしたが、多様な人材の流入による視点・環境・経営基盤の変化が、医科・歯科の企業体としての寿命を延ばします。

つまり医科・歯科の産業化の基盤が、歯科業界以外の視点から確立されてきます。

そして医科・歯科が広域ネットワークの中で医療サービスを提供する存在になると、旧来の国の加護の元での収入基盤に加え自由マーケットによる収入基盤を得ることになるでしょう。

ここで言う自由マーケットとは、例えばジルコニアをどのように説明してどのような値付けをするか、といった些末なHow Toでないことは言うまでもありません。

広域ネットワークの中で、医科・歯科はかつての自動車産業のように地域産業を取りまとめる横串になる産業に位置することが命題とされた自由マーケットです。

歯科はそこで多種多様な立場の人が集まる共感市場を形成する中核産業になることを目的とするのです。

共感市場の中で歯科は国民皆保険制度などの旧体制への依存から抜け出し、自立した医療サービス産業へと成長する道筋を得ることができるのです。

SKMBT_C28015060910040.jpg医科歯科の産業化へのロールモデルとして、医科では北原茂美先生の八王子国際病院と東京都八王子市との関係を挙げることができます。

そして既にそのモデルをカンボジア、ラオスへ『生活産業としての医療』として輸出するビジネス的な試みは、各界から注目を集めています。

歯科のロールモデルとしては、山形県酒田市・日吉歯科診療所の熊谷崇先生を挙げることができます。

酒田市民の口腔の健康を向上させたことに留まらず、旧態依然とした歯科の概念を変え、全国の歯科医院に新たな道筋を知らしめ、さらに庄内をベースに地域産業や大学などを取りまとめて地域を活性化させています。

このような取り組みは、従来の医療のイメージから逸脱しているかも知れませんが、旧体制の医療に比べて『幸せにできる人の総量』が圧倒的に多いことは言うまでもありません。

旧体制の医科・歯科に比べ、北原先生の病院、熊谷先生の診療所は、患者はもちろんのこと地域全般、周辺企業、医療関係者以外にも幸せを与えてきています。

それに比べ検察に摘発された歯科医師連盟のロビー活動に使われたお金は、歯科医師自らの幸せだけを求めた結果、歯科は反社会的な存在とされつつあることを忘れてなりません。

IMG_0172.JPGこのような先駆的な取り組みをしてきた北原先生は、医療経団連での医療の在り方を『いかにして人が良く生き良く死ぬか、その全てをプロデュースする総合生活産業』と再定義しています。

歯科においても『一本の歯を守る』ことから、『一本の歯を守ることで、人が良く生き良く死ぬかをプロデュースする』まで文脈を伸ばすことで、歯科は社会性を得て生活医療から生活産業へと市場を広げることができるのではないでしょうか。

新年あけましておめでとうございます。

コンサルブログ | 2015年1月1日

歯科医師は「歯科村を捨てよ、町へ出よう」

 この数年、仕事で定期的に羽田空港発三沢行きの一便を利用しています。この便の搭乗者は、航空自衛隊と米空軍関係者、そして日本原燃などの原発関連企業関係者が大半を占め、日本の国策に日常的に関与している人の利用率では、おそらく国内便で一番ではないかと思います。だからといって離陸前後の機内は特別な緊張感があるわけではありませんが、三沢空港への着陸便から空軍兵士の敬礼のお出迎えを見る頃には、にわか国士の気分になっていきます。三沢空港の手荷物ゲートを出た右手には、ほぼ常設で寺山修司のコーナーが開設されていて、寺山の等身大のポスターの前を行き来する軍人と原発企業人の模様は、前衛と最前線が混じり合い緊張感が満ちてきます。

 寺山といえば、演劇好きでなくても「書を捨てよ、町へ出よう」のフレーズを誰しも聞いたことがあると思います。寺山や戯曲に関心がなくても、このフレーズから新しいものや人に出会い、いろいろな経験をしようという強いメッセージを感じることができます。ところが現在、こういったマインドを持つ人が私の周りには少なくなっています。それは、私自身が年をとり現状維持の意識が強くなったことも一因ですが、それにしても歯科業界関係者には、超安定志向が大勢を占めています。過去20年におよぶ業界の凋落傾向も、このあたりに原因があるのではないかと思います。

 歯科は法人といえども個人経営にすぎないため、大手企業に比べ経営は不安定で2~3ヶ月先の見通しも明るくはありません。だからこそ、いつも軍人と国策企業の最前線意識と寺山の前衛意識を内に秘めて、活気に満ちていなければやっていけないのではないでしょうか。停滞する日本経済の中で、今日でも起業家と呼ばれる人は、軍人や国策企業人同様の意識と寺山的マインドを持って試行錯誤と失敗を乗り越えて、事業を軌道に乗せています。凋落傾向の歯科業界の中にあって、もはや不測の事態などはなく、不測が常態になった環境の中で、前線・前衛意識を持って経営を楽しむぐらいの気持ちがなければ、歯科医師はとても続けられない職業になったのです。私自身も前線・前衛意識を持って、歯科医師の経営に深く関わるコンサルティングの原点に立ち返る2015年としていきます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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OP倶楽部発足会レポート

コンサルブログ | 2014年9月14日

初島に志とエネルギーの高い歯科医師が集まる

OP倶楽部とは

歯科界の次世代を担う”知識と技術・心と感性”を備えたリーダー輩出するために、各界の有識者やリーダーをゲストに迎えての対話集会、Oral Physician 歯科医同士の意見交換の場として熊谷崇先生の発案で栃木県開業チョコレート歯科医院院長加藤広明先生が代表となりOP 倶楽部(おーぴーくらぶ)が発足しました。そのOP 倶楽部リーダー・ミーティングの発足会が、熱海のグランドエクシブ初島倶楽部にて、代表者の加藤先生、熊谷先生はじめ60名が参加し、開催されました。

私の挨拶

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倶楽部設立の趣旨を私が簡単に説明しました。少し長くなりますが、「歯科界の過去の繁栄は、経済成長と国民皆保険が原動力になってきたもので、歯科界や歯科医師会の努力の結実というよりは時代の産物であったことは、この20年間の低迷に手を打てていない状況を見れば明らかです。この膠着状態を打ち破るには、歯科村を飛び出して”強いリーダーシップと早い決断”ができるリーダーを輩出する会になって欲しい」といった内容のお話をさせていただきました。

詐欺師化する歯科界に一石

昨今の歯科界には、マイケルポーターの亜流のそのまた支流といったマーケティング手法が跋扈しています。流行の手法は「自由診療への誘導」「ITを使った集患」「キッズのビジネス化」などのアプローチで、いかに巧妙に患者を騙すかに執心しています。こういった狡知を考え出すコンサルタントも確かにワルには違いありませんが、それを加速させたのは本質を見失った歯科医師かもしれません。

コンサルタントの片棒を担ぐ歯科メーカーや出版社も含め、歯科界全体が詐欺師化の方向へ進んでいます。詐欺的なマーケティング手法の横行は、縮小した市場を前時代的意識と臨床体制で患者獲得競争に一石を投じるリーダーが歯科界にいないからだと思います。縮小市場に新たな市場を創造することは、歯科界の命題であることは自明のことですが、そのリーダーとなるべき人材の見極めが肝心なことは言うまでもありません。

しかし、価値をお金だけに置き、オレオレ詐欺のように巧みな心理操作で自由診療への誘導が上手い歯科医師を、勝ち組と賛美しているのが現在の歯科界です。こんな恥ずかしい状況を鑑みても、今回の次世代のリーダーを養成するOP倶楽部の発足は意義深く、期待は膨らむばかりです。そんな煮詰まった気持ちがあったからでしょうか、当日の演者と集まった歯科医師の声を聞いていると、澱んだ歯科村に涼風が吹き込んだような思いでした。(余談ですが、私のシニカルな発言にいくら批難を浴びても避難しないで歯科村に残る覚悟も涌いてきました)

ようやく予防の価値が歯科臨床に根付きつつある現在、マーケティングと歯科医療の本質を見極めることのできるリーダーを輩出して、歯科界はパラダイムシフトの1丁目1番地に立ったと言えるのではないでしょうか。

日吉歯科診療所理事長 熊谷崇氏のお話し

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歯科医師でない私から見た熊谷先生の魅力は、”強いリーダーシップと早い決断”、そしてダンディズムに尽きます。当日の挨拶も熊谷イズムを発散して、会場の歯科医師の気持ちを一気に高揚させていました。

その挨拶の中で印象的だったのは、「改革を促す者はその当事者と膝を交えて話し合い経過をフォローしなければならないが、その点が私には欠けていた」と仰っていたことです。

また、「予防を広めることはできたが、保険で行ってきため予防そのものの価値を上げることができなかった。

今年から予防を自費に切り替えてみて、今まで保険で予防を提供してきたスタッフの意識の在り方が変わった」という趣旨の発言は、健康保険制度の方向性を見極め、先件の明があると感じました。

30分程度のお話しでしたが、歯科医師を世知辛い歯科の現状に染まることなく、歯科の現状を高みから見る気持ちに導く様は、流石です。

OP倶楽部代表の歯科医師加藤大明氏の紹介

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軽妙洒脱な進行の中にキラリと光る一本どっこの精神。チョコレート歯科と命名する覚悟は決して甘いものではないことが、日経ビジネスオンラインの慶應義塾総合政策部教授上山信一氏との対談“歯科治療で始まるコペルニクス的転換”を読めば一目瞭然です。

今後の会の企画、運営には加藤氏の存在は欠かせません。当日の自己紹介で、MTMを都市部で実現することが大変と発言していた参加者(実は私もそう思っていましたが)に、間髪入れずに反論していた姿は印象的でした。

当日の演者・芳賀歯科矯正歯科クリニック院長芳賀剛氏

演題 「近況報告 ~改善と改革~」

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歯科大生の頃ユーラシア大陸放浪の旅をしながら”何でも見てやろう経験してみよう”とする沢木耕太郎ばりの学生時代の経験が、歯科医師芳賀剛さんの歯科医師としてのバックボーンになっています。東京に居る私からすると、郊外というよりは人がどこにいるのだろうと思う田舎で開業して、今では総勢16人のスタッフ体制の中規模歯科医院に発展。開業=場所と考えるステレオタイプな歯科医師には、ぜひ芳賀さんの話を聞いて欲しいものです。

当日の演者・岡山大学歯学部4年宇野修平氏

演題「なぜ私は年収1200万円をすて、歯科医師の道を選んだか」

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外資系大手企業での年収1200万と安定した将来を捨てて、歯科医師になった動機に、私たちの希釈された仕事魂は、打ちのめされました。忘れかけていた仕事の価値を見直す契機になった歯科医師も多いはずです。

宇野さんのような人材が歯科界に今後増えれば、既存の歯科医院の危機は単なる歯科医師過剰から、市場からの力量評価にステージが上がること間違いありません。

当日の演者・つきやま歯科医院理事長築山雄次氏

演題 「つきやま歯科医院の歩みと改革」

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いわずと知れた西の予防歯科の雄の築山先生が、「過去の私の予防はコミュニケーションの予防でした。もっとエビデンスを明確にした予防歯科が大切です」

と、仰った時は何とも言えない感動が押し寄せてきました。十分根拠のある歯科臨床を展開してこられた築山氏の謙虚に学ぶ姿勢には敬服です。

講演の内容では、産業歯科医として予防に取り組み、医療費を削減したお話は、秀逸でした。医療経済を考えるお役人を相手に、ぜひ講演をしていただきたいものです。

歯科ポイント制の浅ましさ

コンサルブログ | 2014年1月27日

正月明けのネタ枯れの7日朝、朝日新聞1面に「歯科医院ポイント導入」「歯科医必死の囲い込み」の見出しが踊りました。すでにご存じのように、メディカル・コミュニケーションズ社が運営する「歯科に行こう」が、患者の囲い込みのために、口コミを書いた患者にポイントを与え商品券などと交換できる仕組みのことです。そのポイントの原資を歯科医院が買うという飲食店や小売店ではおなじみの手法を、歯科に持ち込んだわけです。

以前発覚した、国内最大規模のグルメサイト「食べログ」のランキングの不正操作を思い出します。複数の業者が特定の飲食店に対して好意的な口コミを投稿して報酬を得ていた構図と同じです。つまり、患者に気づかれないように歯科医院が集団でステルスマーケティングをおこなったわけです。これに対する朝日新聞の論調を要約すると、「来院促進して過剰診療による公的保険財源の無駄遣いをする歯科医院を許していいのか」といった内容でした。

是非論で言えば、保険医療機関の療養担当規制第2条の4″ 保険医療機関は、その担当する療養の給付に関し、健康保険事業の健全な運営を損なうことのないよう努めなければならない。 (特定の保険薬局への誘導の禁止)”に抵触し違法行為で直ちに行政指導すべきです。

さらに違法性以前に、たかだか400/10,000医院とメディカル・コミュニケーションズ社の利益のために、この口コミサイトによって、99,600件の歯科医院がアウトローなイメージを重ねられたことに怒らなければなりません。

しかし怒れる99,600医院の救いは、「携帯電話で料理の写真を撮ることをためらわない輩の品性」と同じ次元で「歯科に行こう」の口コミを書くアンダーな患者が来院しないことでしょうか。負の連鎖臭を感じる患者は、400/10,000医院に任せておいて、アッパーな患者との関係を築いていきましょう。

年賀状大賞 2014

コンサルブログ | 2014年1月27日

私の学生時代の先輩で、現在は東京のお茶の水で”さかなステュディオ”というデザインオフィスの経営者兼デザイナーの金子氏の年賀状です。金子さんはサッカーも天才肌、学力も東大まちがいなしと言われていた文武両道の生徒で校内では故・中村勘三郎さんと並ぶ有名人でした。現在はやはり早熟の才の辿る定石通り・・・子供の頃の煌めきを残しながらも堅実にデザイン事務所を経営しています。歯科のデザインもWelcomeですから、ご希望の方は伊藤までどうぞ。

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城南信用金庫に学ぶ

コンサルブログ | 2014年1月9日

9連休だった歯科医院の皆様、仕事始めが待ち遠しかったのでないでしょうか。弊社も9連休とさせていただきましたが、私は大学OB会、メンター歯科医師の忘年会、歯科関係者とのゴルフコンペ、事務所での資料整理といった具合で、まったくのフリーの日は2日間でした。

休暇中に民族学者の宮本常一さんの著書を再読しましたが、今の私たちの恵まれた生活の源流となった人々の在り方を知りある種の神聖な気持ちにさせられました。また宮本さんのフィルドワークによる資料の裏付けの取り方には、正に”行動する知識人”の凄みを学ぶことができます。

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その他に原発関連の本を3冊、中でも「城南信用金庫の”脱原発”宣言」(写真)は、企業の社会貢献、公益への取り組みを具体的に知る上でとても参考になる小冊子です。原発事故を起こした東京電力が、ぬけぬけと嘘をつき白を切り続ける法人の鉄仮面さを見せるのとは対照的に、城南信用金庫の取り組みは、法人も人の集団で血潮が通っていることを教えてくれます。

その結果、城南信用金庫に惹きつけられる人々の姿に、マーケティングの原理を垣間見ることができます。保健医療機関として公益性の高い歯科医院ですが、低迷する経営状態から商魂むき出しの現在、民間の金融機関の公益性に根ざした取り組みを描いたブックレットから、本来の医療サービス業としての在り方とその打ち出しの仕方を学ぶことが多々ある1冊でした。地域に根ざす歯科医院経営を目指す歯科医師の方にお勧めの小冊子です。

新年あけましておめでとうございます。

コンサルブログ | 2014年1月1日

今年は小社の体制も一新、有望な新人も加わりさらに皆様のお力になれることと確信しております。日々クライアント医院様には、理念と使命をうかがっています。年頭にあたっては、私の信条を明らかにすることで、新年のご挨拶とさせていただきます。写真は山形県酒田市から見た月山の夜明けです。この地はNHKの朝ドラ”おしん”にも出てきた母の生家酒田屋があり、私のターニングポイントとなった歯科医師との出会いの地でもあります。
本年もご指導の程よろしくお願いいたします。

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私の信条

  1. 死ぬ時を想い、10年先を考え、5年先を見て、行動しろ。現在に翻弄されていては未来がない。
  2. 早くやれ、失敗さえも早くしろ、できない言い訳を考えていると、チャンスは二度とやってこない。
  3. 相手を感激させろ、相手の笑顔を見たければ、相手に真に役立つことを真剣に考えろ。
  4. 仕事は自ら創れ、世に撃って出ろ、与えられた仕事をしているようでは生きる価値がない。
  5. プライドを捨て、さらに学べ、そして志を高く持てば、新しい価値が見えてくる。
  6. 根拠を持て、根拠なき主張は、賢者には通用しないばかりか、再挑戦の意志さえ生まれない。
  7. 取り組んだら離すな、最後まで手を抜くな、手抜きは自らの達成感とともに周囲の信用さえも失う。
  8. 努力に満足するな、結果に歓喜しろ。

市川浦安地区セミナーとフィアー広告

コンサルブログ | 2013年2月1日


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先般、市川浦安地区の歯科医師会の先生方に、「歯科医院成功のレシピ」といういささかビジネス書もどきの演題でお話をさせていただきました。このように”成功”というフレームで話をすることは、非常に難しく不可能なことと思います。それは、歯科医師個々が人生の中心に何を置くかで、成功の在りようがいかようにも変わってくるためです。コンサルタントの常套句、”成功法則の○か条”など、まったく愚の骨頂です。と、思いながらも敢えて”成功”を銘打ったのは、同地区でこの数年

 

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個々の価値観が違えども、成功するには守るべきルールがあり、それによって実践すべきレシピが見えてくると、当日はお話ししました。常々広告には肯定的な立場でお話ししていますが、医療に携わる者が、生活者を脅かしたり不安にさせたりするフィアー広告で医療需要を喚起することはルール違反だと思っています。それに、この手の広告に一端手を染めると、歯止めが効かない覚醒剤中毒患者のごとく商人道まっしぐら、ハゲ・ダイエット・シミ・むだ毛などを扱う業者クリニックへと医院を変貌させていき、広告費を捻出するために医院経営をしているような状況に成りかねません。

 

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最近、歯科で目にあまるルール違反は、「歯周病は生活習慣病です。しかも命にかかわるかも知れない」と、フリーランス歯科衛生士が企業広告サイトでタイトル打ちをしているものです。これが循環器系医師の話ならばニュースの範疇ですが、生理学上の判断も定かでない、さらに生死の行き交う現場を経験したこともない歯科衛生士が”命”を大上段に掲げたキャッチコピーをつければ、フィアー広告になるのが広告の常識です。広告とは想像の世界ではなく、実体験に裏打ちされた表現でなければならない責任があるのです。医療サービスに携わるものならば、なおさらに守るべきルールです。

 

私が患者でしたら、この手の衛生士からメンテナンスを受けるのはごめんです。P処は薄毛対策にも効くなどと、まことしやかに耳元でささやかれそうですから。かくして、歯科医師はフィアー広告を打たないルールを守ることで、患者の信頼を集め、盛業へとつながってくるのです。とりも直さずこれが成功するためのレシピでもあるのです。な~んだ、と思われる向きもあるでしょうが、所詮そんなうまい話はころがっていません。

本年の方針

コンサルブログ | 2013年1月10日

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要件のやり取りを終え電話を切る間際、「ところで伊藤君の今年の方針は」と、K先生から不意に聞かれ、そう言えば最近は新年の挨拶をサイトに載せていない。これといった深い理由はない。言いたいことは山ほどあるが、歯科業界で話してどうこうなる話でもないし、かといって食べ物屋の料理の写真をブログに起こすほど無粋ではない。そんなこんなで新年の挨拶も含めブログに起こすことなくやり過し、新年をオーバーランしてしまった。

「そうですね。歯科医院の開業の流れを変える元年にしたいです。60歳で新たに設備投資をして、70歳で患者と設備といった資産を譲渡してリタイアできる医院経営を提唱していきます」と言った内容をお話しすると、「東京の歯科医院は元気がない。僕が東京で開業したら今の2倍の診療室にしているよ。アメリカ経営誌に歯科医師が全米NO1.の職業と評価されている記事があったから、原文で送るから読んでみて」とK先生は言われ、電話は終わった。う~む。私の新年の方針を聞きながら、最後にはご自身の意見でクロージング。

相変わらずsomething now.

この流れを作れることが、成功する医院経営の秘訣ですね。

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因に新年らしく熊手は、私のオフィスデスクの上のもの。毎年、浅草鳳神社から元の職場の後輩が届けてくれます。毎年少しずつ大きくなって、今では会社の業績を上回ってきて追いつけません。もう一つは、私の自宅デスク前の、神田明神の”勝守”、シンプルなデザインと”勝守”のコピーが好きで20年来、デスク前が定位置。今年は、私の好きな作家の焼き物の写真を露払いにしています。

それでは、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2012年9月19日 東京歯科大同窓会市川浦安支部講演会

コンサルブログ | 2012年9月21日

IMG_3585.jpg一昨日「縮小均衡市場を生きる歯科医院の原理原則」という長ったらしい演題で、東京歯科大同窓会市川浦安支部の先生方に歯科医師会館でお話しをさせていただいた。学術講演を銘打っている場で、私の街場の経営論を展開して良いものか否かいささかためらいがあった。しかし依頼主は、私が歯科界に頭を突っ込んだ頃、歯科臨床には基礎系・歯科理工学の素養の大切さを教えてくださった中村光夫先生、お断りできるはずもない。

IMG_3547.jpg当時中村先生は順天堂系列の病院で歯科部長を務めていた。その頃接着歯学の祖、医科歯科大材研の中林教授の片腕として、臨床研究に明け暮れ、数々の論文を発表なさっていた。診療後の医局には、常にサンメディカル・GC・トクヤマ・クラレなどのメーカーが列をなして、中村先生に自社の歯科材評価依頼に来ていたことが思い出される。そんな中、門外漢の私にも発表前の論文を説明してくださり、その上柳橋・日本橋・銀座などの美味しい処で度々ご馳走してくださった。

IMG_3576.jpg当時の中村先生から教えを頂いた接着歯学によって、歯科臨床評価の標準値が私の中ででき、中村先生にはとても足を向けては寝られない。予防歯科が常識になっている現在、8020の目標を大きく上回る数字は、1次予防の効果とともに、接着歯科がもたらした2次予防への貢献が大きいことはもはや常識である。予防歯科の影の功労者、中林教授、アポロニアで文筆をふるっている安田登先生、日本接着歯学会副会長 高橋英登先生、そして中村先生の論文に触れてみることが、予防を標榜する医院の良識ではないだろうか。

 話を講演会に戻すと、①少子高齢化による生産者人口の減少が問題 ②設備投資と収益バランスの悪い歯科 ③拡大成長を前提とした歯科経営は破たんする ④来院5回の壁を乗り切る仕組み作り ⑤治療終了後2年以内に患者を顧客化する 以上5ポイントについてお話しさせていただいた。

診療終了後のお疲れの中、受講者の先生方には、私の雑駁な話を最後まで熱心に聞いていただき、ありがとうございました。懇親会でも、歯科の黄金期を知る中高年の先生方から若手の先生まで、とても熱心に経営談義に花を咲かせ、明日への活力になっていたようです。それでは、来年はリクエストにお答えして市川・浦安地区での実践的経営スキームをお話しさせていただきます。

「2012年問題」と歯科経営

コンサルブログ | 2012年1月7日

昨日6日、仕事はじめでした。昨年の暮れに立て続けに3件新規開業のプランが決定、そのため大手商業施設、ハウスメーカー、不動産ディベロッパーの各担当者とやり取りをしていて、どうにか仕事を一段落つけたのが、夕方の6時過ぎ。

年末にもかかわらず各大手ハコモノ業者が、リーシングにやっきになる背景には、「2012年問題」がある。商業施設や大規模ビルの供給過剰、オーバーストアによって、今までは相手にされていなかった歯科にもお鉢がまわってきた訳です。これによって歯科の業界地図が如実に変わるでしょう。これまでは、大手設計事務所やデェペとコネクションを持つ一部の歯科医が、好立地のハコに出店して盛業してこれた。しかし、これからは10年前にくらべ2〜4割安で大手ハコものに出店する新規歯科医院が増えてくるので、立地的優位性だけで盛業を望むことはできないだろう。まあ、不動産屋みたいな歯科医ばかりが好立地を席巻して繁栄してきたことが、異常だったのですから、「2012年問題」は、歯科経営が健全に針を振れる契機となってくれるのではないでしょうか。
そんなこんなで慌ただしく仕事に一段落をつけ、学生時代の友人と、年あらたまる淑気を迎える儀式?のためサウナへ心身を清めにいった。例年なら2時間待ちのマッサージが、待ち時間ナシ、肌を通して日本経済の停滞を感じるとはこのことでしょう。年もあらたまりサウナを後にタクシーから見る繁華街は人も三々五々、心なしか暗く静か、というよりは静謐とした感じ。所々の暗闇に連なる人々の向かう先は、神社。こんな光景は数十年前の子供の時以来。3・11の影響でしょうか。
「2012年問題」でチャンス到来の普通の歯科医、しかしサウナで肌で感じタクシーから目の当たりにした光景から、歯科医院経営は依然不透明。
確かなことは 、 YES,you can. You can if you want. ということです。
それでは、今年もよろしくお願いいたします。

ランキング情報の信頼性

コンサルブログ | 2011年7月9日

「調査方法・集計処理でも、客観性を徹底的に追求。学術的にも公平性が高く信頼できるランキングです」。オリコンCSランキングに対する、慶応義塾大学で応用統計学を専門とする鈴木秀男准教授のコメントである。歯科にランクインしている医院を見ると、鈴木氏の見識を疑う。口コミサイトやランキングサイトの内実は、PRサイトである。一端の人であれば周知のことなので、批判するのは大人げないと、承知している。

しかし、この慶応義塾大学鈴木先生の論、統計学をもって医療を評価するときの、評価者と評価基準の選定の失敗例である。『ミシュラン東京版』以上のでたらめぶりだ。『ミシュラン東京版』のでたらめは、食の評論家(?)山本益博氏の暗躍によるものともっぱらだが、オリコンランキングのでたらめは鈴木准教授の後押しによるものとなりかねない。

そのでたらめぶりの一端。例えば審美歯科ランキングは、11の評価項目からなる。『治療結果』の項目を見ると「駅前で便利でした。先生もやさしく、スタッフの対応も親切。治療も早く終わりました」と体験者のコメントがある。恣意的にこのコメントを選んだわけではない、どのコメントもこの程度の散漫な感じだ。このコメントの何をもって『治療結果』10段階評価で9の医院なのか不思議である。また他の評価項目『利便性』や『スタッフ対応』とどうやって評価の選別をしているのだろうか。全く理解できない。
まあ、オリコンランキングの影響力やブランド力は、ミシュランの足下にも及ばないので、目くじらたてることはない。それにしても情けないのは、このランキングに載るために、アルバイトや業者を使って口コミを書かせる自作自演する歯科医院が少なからず存在すること。こんなランキングサイトに汲々とする歯科医院が増えるに従い、歯科大学の入学難易度ランキングは急下降している現実。某大学相撲部と変わらない偏差値の歯科大が増えて、歯科界の『玉石石石混合』状態は確実。儲かるのは広告代理店ばかりで、ますます真っ当な歯科医院の経営は難しくなってきた。

 

 

歯科医師は、街を捨て地方に行こう

コンサルブログ | 2011年7月8日

 昨日は羽田への最終便が霧のため飛ばず、青森県三沢に留まった。野球少年だった私は、空港からタクシーで三沢高校に向かった。夜8時過ぎ人影もなかったが、かつての甲子園のヒーロー太田幸司が白球を追ったグランドを見られただけで十分だった。その足で寿司屋に向かい、カウンターに座る。横から聞こえてくる津軽弁は、抑揚なく朴訥に語る作家寺山修司を思い出させる。三沢は、太田幸司、寺山修司という日本の高度成長期を代表するヒーローを生み出した土地だ。そして現在は、日本の政治経済の暗部、米軍基地と原発処理施設が地域の基盤になっている。

 この地域の歯科医院からは、これからの医院経営の在り方が見えてくる。三沢では女性専科として美を追求する自費歯科医院が成り立ち、ある医院では車で30分かけて自費治療に通院する患者も少なくない。これといった産業が無い土地だが、原発マネーの関係か?三沢に隣接する六ヶ所村の平均年収は大手企業部課長クラスである。この地域の生活者は、歯科にかけるお金は十分にあるようだ。クライアント医院もそんな市場性に準じてCTとセレックがあり全て個室だ。過疎が進む地方の歯科医院とは思えないストラクチャーである。

 三沢に限らず地方医院を見る度、都市部の自費主体医院が発する「質」には、疑問を感じる。医療の質の追求は「失敗しない質=安全性」→「ばらつきが無い質=標準化」→「卓越した質=技術力」の順で成り立つ。その中で、安全と標準化は一定の『広さ』を担保にする。『広さ』というコストを犠牲にする都市部の医院が、「卓越した質」を売りにするには無理がある。技術力は安性全と標準化の先にある質だからである。

審美歯科やインプラントなど技術を売りにする歯科医師は、今後地方で開業してはどうであろうか。2時間もあれば大抵のところに行くことができる日本、消毒滅菌も技工も在庫もスペースが混在した診療室に見切りをつけて、本来の質を追求することができる。その上、無理な誘導も過剰な広告費もいらない。

かつて寺山修司は「書を捨て街に出よ」言った。

歯科医師は、街を捨て地方に出る時代が来た。

まずはスピードありき

コンサルブログ | 2011年6月23日

新潟のある市での開業プロジェクトに携わって1年近くになる。開業は数ヶ月先だが、この医院は必ず成功すると確信が持てる。その理由は一点のみ、開業歯科医が機会損失をしないスピード感を持っているからだ。これは歯科以外でも、経営者ならば誰しもが感じることだが、ビジネスをしていて何がストレスになるかといって、機会損失以外にない。失敗でも構わない。スピード感がない人は、失敗することにも時間がかかる。

停滞気味の歯科医院を見ていると、じわじわと成功のステップを踏んでいるつもりで、じわじわと失敗していくことに安心しているだけの医院もある。経営に延命処置を持ち込まないのが、私の主義だ。早く失敗して、失敗を繰り返す機会が多いことが、経営はもとより人生設計において大切と思うからだ。
私は、教員、サラリーマンを経験して、現在は零細な会社を経営している。これまであらゆる「できない人」を見てきた。「できない人」の共通項は機会損失を繰り返すことだ。では、機会損失をしないためにはどうすれば良いのか?当たり前のことだが、スピードをあげることだ。スピードアップは、仕事時間×集中力の結果だ。人の能力には大きな違いはないと思っている。私の知る「できない人」は、単にスピード感を持って働いていないだけの場合がほとんどだった。「できない人」の時間消費方法は、仕事もどきに使う時間が長いことだ。つまりは仕事をしていないのだ。
停滞気味の医院の院長は、自己啓発セミナーや訳の分からない経営セミナーに参加して、仕事をした気になって、肝心な診療に携わる時間が少なくなっている。やはり「できない院長」も単に仕事をしていないだけである。「できないスタッフ」の特徴は、歯科医ならばやり直し治療に時間を使い、DHならば取り残しの歯石のためのメンテナンスに追われる。つまり「やり直し」をすることが仕事になって、機会損失をしているのだ。
経営とは、機会損失を無くすスピードを手に入れることだ。

歯科医の言葉と文書

コンサルブログ | 2011年6月14日

歯科医院のパンフレットやホームページの文章を読む機会が仕事柄多い。時として、この先生はカウンセリングの時どのような言葉を使っているのだろうか、とても気になる。それというのも、患者が読むホームページなどに難解な医学用語を平気で使っているからだ。気がつかないというよりは、医学用語や専門用語を使うことで、ある種の権威付けを意識している節もあるのだから考えが浅い。

ドアノブ•クエッションという言葉がある。初診患者が最初の診察と会話を終えて、医者の説明が理解できずに帰り際ドアノブのところで立ち止まり、先生、私は「○○○」でないですよねと、不安げに訪ねる様を指していう。誰しも経験していると思うが、医者の診断を受けて、はやりの「風邪」を「感冒」などと言われると、何かタチの悪い病気にかかったのかと思う時さえある。さすがに歯科の場合は、専門用語の羅列で深刻な気持ちにはならないであろううが、重い気持ちには変わりない。
私が経験した例で、若い歯科医師が、患者に対してスタディーグループで使いまわされる「予知性」「侵襲的」「審美性」「進行性」「不可逆性」などの言葉を連発して患者にカウンセリングをしていたが、患者の表情を見ると、いかにも不思議そうな顔をしながら、最後に「良くわかりませんが、保険でやってください」で終わった。こんな空しい思いをしないためにも、パソコンに入力する文字が正しく変換されない専門用語は、患者には通じないと思い対話するべきである。
以前、コピーライターの糸井重里氏が、「この香水はウンコのような香りはしない、すばらしい香りです」という文書があったら、論理的にはこの香水はとてもすばらしい香りと伝えているのは理解できても、生理的に「ウンコのような」ばかりが目や耳に入ってきて悪いイメージしか残らないでしょうと、話していた。歯科医師の専門用語の連発もこれに近いものがあり、平易な言葉で話さなければ、意図するQOLやホスピタリティーの向上も生理的に伝わりづらくなる。
歯科医師は文書を書くとき、言葉を発するとき、「意味で考え、生理でチェックする」ことが
大切である。

商業施設と歯科医院経営

コンサルブログ | 2011年6月8日

杉並区の顧問先コンサルティングが昼過ぎに終わり、駅に向かっていると雲間から薄日が漏れてきた。急遽、千葉郊外の開発地域のマーケティングに向かう。現地調査は、お天気次第の進捗になるので、梅雨時の晴れ間は特に貴重だ。予定外のため、電車で最寄りの駅まで行き、レンタカーを借りる。

1980年代終わりから90年代にかけて、大手ディベロパーから総合スーパーへの歯科医院への出店のオファーがあり、多くの歯科医院を紹介した。当時は商業施設としては、総合スーパーは先端をいった存在であった。しかし、20年あまり経過した現在、総合スーパーは衰退傾向にあり、現在はテナントミックス建屋とスーパー本体で構成するSCが全盛だ。調査地の千葉市北東部もSCと中規模スーパーの出店が目につく。高齢化社会になって、東京の都市圏が10キロ程度縮小して30キロになった現在、この地は旧都市圏の40キロとの中間に位置する微妙な商圏ではあるが、平日の昼間で商業施設の駐車場は30%程度埋まっている。まあまあイケル感触だ。
しかし都市圏の縮小が進む状況で、郊外出店による「立地独占」という戦略はいつまで続くかわからない。SCのマスマーケティングに相乗りする歯科開業も、その効力頼みでは立ち居かなくなる日は遠くはない。経済条件の高いSC内での歯科医院経営はどうして行けば良いのだろうか。答えは、既存患者の活性化に集約される。つまり、いかに既存患者との関係を強化し、自院医療サービスを繰り返し提供していけるかにかかっている。今後、商業施設内歯科医院経営は、①ブランド構築による認知度向上のため広告宣伝と②一度来院した患者に対して継続的かつ適切なアプローチを行い、自院医療サービスの継続的利用を働きかけていかなければならない。
現実、顧問先のSCのレジ通過数は減少傾向にあり、それに伴い医院の新患数も減少してきている。商業施設のマスマーケティングに頼った医院経営や焼き畑農業的な経営手法から脱却する時期が、高齢化社会とともに医院経営にも押し寄せて来ている。


現実を見切る力

コンサルブログ | 2011年5月18日

3.11震災から2カ月余り、岩手県内に来た。新幹線の車窓から震災の影響は感じられなかったが、A駅に降りると、日本赤十字のつなぎを着た40人程の男女から、非常事態の緊張感が伝わってくる。その姿を見て、「人の力では世の中を変えることはできない」と、思った。赤十字のつなぎ姿の人々の無力感を揶揄しているのではない。世の中は、人の力の及ばない力が作用しないと状況は変化しないものだ、と実感したのだ。

医院経営を変えるのも「院長の志」よりも、「人口が減った」「近隣に歯科医院ができた」という、院長の力が及ばない力が作用した場合がほとんどだ。非常事態にならないと、経営者たる院長の覚悟が決まらないので、スタッフも本気で動こうとしない。当然、支援者も現れない。院長の覚悟が決まらない最大の理由は、現実を見ようとしないからだ。コンサル先の歯科医の大半が、来院者の年齢や地域、キャンセル率、リコール率などを把握していないし、医院経営に関する数字に関心が薄い。

「なんだか患者が減ってきた」とは感じてはいる。しかし、現実を見ようとはしない。見ているつもりでも、都合の良いように見ているだけの場合が多い。何がないから、体調が悪いから、年だからと仕事のできない人間は、常に言いわけを用意しながら現実を見ている。これは、経営が悪化してきている院長が現実を見る目と同じだ。

「あるがままの現実を見る」ことは、経営者として稀有な資質である。作家の塩野七生氏は「ユリウス・カエサルが有史以来最大の政治家である理由は、彼が見たくない現実を見た唯一の政治家だからだ」と言った。反対にできない院長は、見たくない数字を直視する前に、やたらと崇高な「志」を掲げたりする。そのため、医院の経営方針がブレてばかりで、決め打ちが出来ない。

帰りの新幹線の中、今回の原発事故への対応も同様で、菅総理は一国のリーダーとして、見たくない現実を見切ってから打ち手を打たないため、後手の対応に終始しているのではなどと、「郡山」のアナウンスを聞きながら考えていた。

「見たくない現実を見切ること」が、院長が経営者となることだ。

Think global , Act local

コンサルブログ | 2011年5月12日

新潟へ向かう車窓に雨しずくが流れだした。昨日の山梨のエリア観察も雨だった。どちらの歯科医も親子継承から独立に切り替え、開業する案件である。親子継承の難しさは、親子の診療スタイルの違いに結びつけられるが、実際は親の時代と子の時代では、地域環境が劇的に変化していることが原因な場合が多い。つまり、Think の違いではなく、 local の違いだ。

どちらの歯科医もメーカーが器材選定とマーケティングをしている。しかし、だ。これが、問題な場合が多く、開業時のCTやマイクロなどへの初期過剰投資を引きずっての開業計画になりがちなのだ。開業時の初期投資の肥大が、初期経営期間に与えるインパクトの大きさがわかっていない。過大な設備投資は、歯科医が経営者として「歩けるようになる前に、全力で走らせること」を強いるようなものだ。まずは、一歩一歩を確実に歩けるようになることが優先されることは、人の子を例にするまでもない。

CTなどの設備はグローバル基準の診療を目指すには必須なものであることは、理解しているし、そうあるべきと思う。しかし、当たり前のことだが経営とは単年度があって、中長期がある。確かに開業時の短期だけを考えていては、歯科医の情熱は冷え持続的医院経営も見えてこない。だからといって、長期的展望ばかりを考えていては、短期をマネジメントできない。開業時は短期に比重を置き、患者母数の拡大を図り、2~3年目からは中長期に比重を置き、設備投資による診療の質の向上を考える、つまり「歩けるようになってから、走ること」が、医院経営の鉄則である。

グローバルスタンダードな診療を念頭に置き、地域医療のマーケティングに注力する。グローバルなスタイルは、地域に信頼が根付いていない医院では成功しない場合が多い。それは、どんなグローバルスタンダードな医療でも、それを施すのも人で受けるのも人だからである。

歯科医院経営には、Think global , Act local 、グローバルに考え、ローカルに行動することが、成功へのベストウェイだ。

開業は情熱だ

コンサルブログ | 2011年5月10日

大田区で開業して2ヶ月経過した医院のコンサルティングを終えて医院を出ると、急に雨が降り出してきた。この医院の院長のほとばしる情熱の汗のような雨だ。一見、優男風なDRだが、短期•中期•長期に目標を時限設定していて、その目標達成に全精力をかけている。開業後、毎月50〜60人の新患が来院してきて順調だが、手綱さばきに弛みはない。

そういえば、一昨日開院した練馬区の医院も新患予約が約30人と好スタートを切った。この医院の院長も長身の好男子だが、目標設定が明確で、即決即断のリーダータイプ。この二人のルーキー院長に共通していることは、40代になった時の歯科医としての自分の在り方が明確なことだ。だからこそ、情熱を胸に厳しい今を戦える。このところ開業支援をしている若手歯科医は、見かけは草食系だが実は肉食系の好漢が多い。逆風が吹く歯科界にあって、成功するには肉食系の情熱が何より重要だ。
「情熱」という言葉は今日的でなく、「情報」という言葉に取って代わられた。巷にあふれる経営書にもリーダーの条件として、「情報力」「先見性」「決断力」「行動力」「コミュニケーション力」などが挙げられ、「情熱」は後じんを拝している。しかし、院長に求められる最も重要な資質は、なんといっても「情熱」だと思う。企業再生のプロ、日本電産の永守重信氏に「能力5倍、情熱100倍」という肚に落ちる言葉がある。人間の能力は上と下では5倍の違いしかないが、情熱の違いは100倍あると解釈している。零細な歯科医院経営には、ことのほか響く言葉だ。
「情熱」に火をつけることは、開業すれば火炎の勢いは違っても誰しもがすることだ。しかし、「情熱」の火を燃やし続けることは難しい。そのために時限的目標を何段階かに持つことは必要条件だが、それより大切なことは、「情熱の火を焚きつけてくれる人」の存在だ。こういった存在の人を求め出会うことが、厳しい経営環境の中で、歯科医師をライフワークとするには絶対条件だ。歯科界にいなければ、他流試合をしてでも見つけ出して欲しい。
院長には技術や知識が必要なことはいうまでもないが、それより重要なのが「情熱の火を焚きつけてくれる人」の存在だ。その存在が、歯科医院経営の正否を決するのだから。

「千と千尋の神隠し」と歯科の看板

コンサルブログ | 2011年5月6日

連休の最中、夜のジュンク堂に滑り込む。お目当ての本、数冊を求めエスカレータを行ったり来たりする。戦後は、この書店のある当たりは、馬がガードを通過する電車の音に驚くので、ビックリガードと呼ばれたほど辺ぴな場所だったとされる。今でも、池袋の場末の空気が残されている。ところが、この地にここ数年で歯科医院が、雨後の筍のように乱立した。その歯科医院の看板が、節電モードの盛り場に眩いばかりに輝く様は、この書店のエスカレータからの不思議な景観となっている。

 エスカレータを行き来しながら、この景観はどこかで観たことがある、と感じつつ閉店を知らせるBGMを後に、書店を出た。帰りの車の中でも、いつか観た覚えのある景観を、思い出そうとしていた。そうだ、『千と千尋の神隠し』だ。

 『千と千尋の神隠し』の主人公の少女、千尋が迷いこんだ不思議な街は、奇妙な建物とグロテスクな看板であふれている。個々の建物や看板は、時代考察も混沌としていて、現実の街ではありえない不思議さだが、何か懐かしさを感じ映像に引き込まれていく。特に、「肉」「め」「むし」「生あります」といった直接的表現の看板が、目に飛び込んでくる。この看板の一群からは、「伝えたいことより、伝えたい欲望」が強く押し寄せてくる。この街は人間の欲望が渦まき、それがさらに欲望を刺激する。そして千尋の両親は、この街の主のいない店で異常なまでの食欲でカウンターの料理を平らげ、欲望の権化である豚に姿を変えられてしまう。

 「歯科」や「歯」は映画に出てくる眼科らしき看板の「め」に、「インプラント」「審美」「ホワイトニング」「予防」は、「人肉」と書かれている飲食店の看板にオーバーラップする。「伝えたいことより、伝えたい欲望」が強く前面に出ていて、歯科医の常套句である「審美性やQOLの向上」を感じさせるものではない。人々の生活が豊かになり、街並や施設の整備が進み、同時に都市空間の公共性を求められる今日、歯科の看板の下品さは、そのまま歯科医の品性や美意識を問われ、伝えたいことの「審美やQOL」は、見る影もない。

 歯科医は、社会から欲望の権化である豚に姿を変えられる前に、看板の持つコミュニケーションや公共性を考える時期にきている。

直感経営のすすめ

コンサルブログ | 2011年4月29日

連休だ。連休前日は茨城県真壁の歯科医院へ訪問し、帰宅は深夜0時を回っていた。しかし、休日は何故かいつもより早く目が覚める。一昨日、帰りの常磐高速では、連休明けにオープンする新規医院の展望を考えていた。その医院は診療日時で利便性を図るが、自費の薄利多売はしない展開を仕掛けていく。そんなことを考えていると、開業地の診療圏を再度確認したくなり、練馬区のT駅周辺に6時34分に着く。

早速診療圏を観察して歩く。ゴミ捨て場、自動販売機、コンビニのバンズ、自転車置き場、公園のゴミ箱、洗濯物、コインパーキングなどを観察していると、その診療圏の住人、労働者の生活が頭の中でリアルに再現されてくる。早朝の街を徘徊する姿は犯罪者のようだが、現地観察をしないで医院のコンサルティングができないのは、20年来の習いとなってしまった。
首都圏では定量調査から開業地を選定し、その後の展望を考えることは難しい。だからと言って、定量調査は無駄なことではない。その地での経営展開の仮説を立てるには、必要不可欠だ。ここから先の、虫瞰(ちゅうかん)的調査で差がでる。どんな診療指針を打ち立てていけば受け入れられるのか?どんなインテリア、ファザード、サインが響くのだろうか?PRの展開は?等々、診療圏の薄皮を一枚一枚はがすように見えてくるものがある。もちろん、連休明けにオープンする医院の展開は、すでに織込み済みだ。しかし、想定が下方にブレた時のことも考えなければならないため、何度でも開業地を観察したくなる。ネット社会で非効率的な事この上ないが、机上(ネット)の推論では、単なる「閃き」でありバクチでしかない。
診療圏を歩きながら、車を流しながら、「5W1H」を繰り返す。いろいろな展開がイメージできる。WHO.WHEN.WHERE.WHAT.WHY.HOWは、ビジネスを創り上げていく上で基本の「き」の字だ。これを繰り返すことで、経営のカンが冴えてくる、「直感」だ。「直感」も「閃き」も同じようなものだが、「直感」は振り返ってみて論理的に説明ができるが「閃き」は感覚的なもので説明ができない。つまり経営が下方にブレた時、修正が可能なのが「直感」、難しいのが「閃き」となる。だから診療圏を歩き、「直感」を研ぎすます。
変化が激しく即断を求められる経営環境にいる歯科医師は、様々な情報に右往左往することなく、「直感」を磨くことが求められている。

セミナー経費は,お布施だ

コンサルブログ | 2011年4月27日

以前は、スタッフに受講させるセミナー効果に対しての質問を良く受けた。そんな時は決まって「スタッフのWILL次第」と答えた。最近は、セミナー受講に対しての休日出勤とセミナー費用負担についての相談が多い。休日出勤と費用負担は相関関係にある。セミナー受講を全額医院負担にするのであれば、受講日を休日出勤扱いにして医院研修とした方がスッキリとする。その方がスタッフも「WILL BEING」になり、効果も期待できる。

話をややっこしくしているのが、受講料の半額負担という扱いだ。

「こんなでは使えない、勉強してこいよ」というスキルアップを他人任せにする甘い気持ちと、「半額ぐらいなら負担してもいいか」という仏心が、仇になる。こんなケースに限って、院長の期待とスタッフの気持ちは相反する結果になる。
スタッフに期待する前に、院長自身がセミナー受講に対してコストと目的を明確にしなければ、スタッフには響かない。セミナー受講コストを、(例えば)受講料1万円+休日出勤手当て1万5千円+稼ぐべき付加価値4万5千円=7万円/1日と認識している院長は意外に少ない。スタッフ1人に1日7万円投資するという意識があれば、医院にとって有益なセミナーか否かの判断基準が厳しくなる。そしておのずと受講するセミナー目的も明確になってくるものだ。
ところが1万円の半額の5千円を負担して、スタッフ自身のスキルアップだから休日出勤扱いはナシでいこう、などとスキルアップと経費軽減の一挙両得を狙うものだから、スタッフのモチベーションも上がらないし、医院に対しての帰属意識も薄れて行く。結果、かえって医院経営にとってマイナスになる。どんなセミナーでも、スタッフの意欲をあげて受講させなければ、モノにならない。
そもそもスタッフにセミナーを受講させるということは、そのスタッフを少しでも早く戦力化して、黒字スタッフにすることを意味する。その結果として、医院の質が上がったり、医院目標が達成できるのだ。はじめから崇高な受講目的を掲げないほうが無難だ。また、スタッフ個人のスキルアップに医院がお金を出した上で休日出勤扱いにすることが、少しでももったいないと思うのであれば、端からセミナーのことなど考えずに、どうすれば残業代を減らすことができるのか考えていた方が、医院経営にプラスになる。
セミナー受講を医院経営に結びつけるハードルは高い。しかしそのハードルをクリアするのは、スタッフのスキルアップに対する院長のケレン味のない投資、お布施である。

スタッフ自身の損益計算書を作成させてみよう

コンサルブログ | 2011年4月23日

新年度になって1ヶ月、スタッフ賃金の相談が多い。この1〜2年で、DHの賃金バブルは収束してきたが、それでも以前に高値で採用したDHの賃金が、低成長時代の歯科医院経営の重荷になってきている。

賃金に対して、院長とスタッフの見解は全く違うのが常だ。業種を問わず、払う方は高いと感じ、もらう方は安いと感じるのが、賃金の特性というものだ。特に歯科のようなサービス業は、間接部門を占めるスタッフが多いため、賃金の適正が見えづらい。そのため、スタッフは「安い給与で使われている」という意識が強くなる。このことは、医院の全ての数字を把握している院長とそうではないスタッフでは、見えているものが違うのだから仕方がない。
しかし、このような状態を放置しておいては、医院はいつまで経ってもギスギスして、居心地の良い職場など望むべきもなく、顧客満足など夢の彼方だ。院長は、医院の業績を損益計算書から判断することができるが、スタッフは自分の給与明細とぼんやりとした数字やイメージからしか、自分の給与の適正を判断できない。その上、人は自分の評価はかなり甘くなりがちである。そんなこんなで、医院に対する不信感が募り募って、「院長はベンツを乗り回していながら、ケチだ」なんていう歯科医に対する定冠詞を頂戴することになる。院長は、医院の数字をスタッフに知らしめ、そして自分の給与の適を判断できるように、スタッフ自身の損益計算書を作成させてみることが、必要だ。
①スタッフの売上げ(DH、DAの売上げは医院売上げの貢献度から自己評価)
②売上げ原価(材料や技工代など)
③付加価値(①−②)
④給料手当
⑤法定福利厚生費
⑥その他の経費(スタッフ数で割る)
⑦経常利益 ③ー(④+⑤+⑥)
⑧労働分配率 ⑦×40%
①〜⑦でスタッフ個々の損益計算をし、⑧で労働分配率を出し、自分の賃金が医院経営に対して黒字か赤字か認識させることから、スタッフに経営参加意識が芽生え、自らの仕事をプロ化していくのだ。
院長のウデがいくら良くても、はやりの真っ白な内装にしてみても、スタッフの賃金に対するわだかまりをなくし、経営意識に目覚めたスタッフを増やしていかない限り、医院は成長しない。歯科医院は正社員率10%のユニクロ的経営ではなく、80%のZARAを目指すべきである。

歯科セミナー考

コンサルブログ | 2011年4月19日

震災後、鉄道の復旧がまだ追いつかず東北地方のクライアント医院に伺うことが出来ない状況が続いている。東京にいる私は、新幹線が復旧しないことには、お手上げ状態だ。しかし、私が制約されるのは、せいぜい月1〜2回、当地の在来線の多くは復旧の目処がたたないことを思えば、不便を口にするのは全て東京中心に物事を考える奢りであろう。

東北地方のクライアントの訪問が延期され、少し時間にゆとりができたので、歯科雑誌をパラパラと流し読みをしてみる。不勉強な習いの私は、滅多に歯科雑誌を読まない。歯科業界に入った当時、総山孝雄先生の「歯学概論」と飯塚哲夫先生の「歯科医療とはなにか」を繰り返し読んだ。しかし、月刊の歯科雑誌は各論で構成されているため仕方がないが、編集コンセプトが希薄なため、退屈だ。雑誌巻末のセミナー広告を見ていた方が、歯科界のトレンドがわかって、まだましだ。
セミナー広告は、矯正とインプラント、そして世相を反映して経営セミナーが目につく。クライアントからも、スタッフ教育について「どのセミナーを受講すればいい」という質問を良くいただく。不勉強なため返事に窮すること度々。ひんしゅくを買うが、内心は「なんでもいい」と思っている。セミナーが実際に役にたつことなど、ごく稀なこと。セミナーは受講者のレベルや心構えで、その効果は大きく変わってしまうからだ。さらにセミナーによるインプット型のレベルアップは、受講者のモチベーションアップ以上にも以下にもならないと思ってさえいる。
以前、訪問先の医院で、モノになるのは厳しいな、と思っていたDHがいた。当時の彼女は、渋谷のセンター街で彷徨う女の子たちと外見は違わず、会話も幼稚で患者に信頼を得るような期待はできそうもなかった。しかし、度胸と積極性だけは、並々ならないモノがあり、私の関連するセミナーにも良く顔を出していた。そのうちセミナーの手伝いをしてもらい、多少の発言をしてもらうと、そのコメントがタイムリーなのだ。そんなことを繰り返しているうちに、彼女はDH対象のセミナーを主催するまでに成長した。彼女を成長させた原動力はセミナーでのインプットではなく、セミナーでのアウトプットだったのだと思う。
セミナーでインプット過剰になり消化不良を起させるよりも、アウトプットさせる場や媒体を与えることでスタッフは成長する。

インプラントとマーケティング

コンサルブログ | 2011年4月17日

昨日は2軒のクライアント医院で、イプラントの話になった。その後、ある財団からは、中国の富裕層を受け入れるインプラント施設への専門医のアサインとプロデュースを依頼された。夜は夜で、ポルトガルのマロークリニックが銀座4丁目にオープンするとの話も耳に入ってきた。マスメディアからはインプラントへの風当たりは強いが、歯科業界ではどこ吹く風である。

 
個人でもチェーン展開する法人でも、インプラントを語るとき、患者QOLの向上と医療提供側との相互利益の合理性が切り口にされる。なるほど、QOLはコピーとしてはいささかインパクト不足だが、一見、生活者が納得するだけの整合性はある。一見と言ったのは、インプラントの引き合いに使われる入れ歯に比べて、インプラントはQOLの面では優れていると言われているが、そうは思えないからだ。

インプラントのコピーに使い古された「笑う、食べる、話す」ことに、QOLは集約されない。QOLは「生活」「人生」「生命」すべてを包括した質であって、「笑う、食べる、話す」は、主に「生活」の質を意味する。この一部を切り取って「QOLの向上」と繰り返しても、ますます10万円インプラトに市場を席巻されるだけだ。高齢者のQOLは、「健康」と「自立」が最も重要とされている。セルフケア可能な入れ歯は、インプラントに比べてこの点では明らかに優位で、一概にインプラントがQOLの面で優れているとは思えない。
 

しかし、インプラントの弱みこそが「伸び代」と考えることがマーケティング思考だ。首都圏では、05年から20年までに75歳以上人口が154万人増え高齢化が加速し、その10%が収容型施設に入るとされる。この人口増加層が、即ち現在のインプラント対象者層だ。入れ歯と違いセルフケアが不可能なインプラント治療は、通院が困難になる高齢者のための、メインテナンスネットワークづくりなくして、QOLを突破口に需要は拡大しないだろう。
 

インプラントのマーケティングは、オペレーションやプライスのフェーズからメインテナンスのインフラづくりに入った。

歯科医のモラル・ハザード

コンサルブログ | 2011年4月14日

「新潟は桜も咲き始め、やっと春が来ました」と、昨日コンサル先の歯科医からメールをいただく。前後して『道玄坂・ユニクロメガストア』など商業施設のリーシングをしているO氏から電話が入り、メール元の新潟の歯科医のお父様と同窓であることがわかって、発破をかけられる。今、新潟へ向かう車中、十日町のあたりか、残雪に西日が反射して車窓からの景色がやけに眩しい。これから打ち合わせだが、昨日の偶然にいつになく気持ちが高ぶる。

この「高ぶる気持ち」を、多くの歯科医にも体験してもらいたい。サラリーマンでは感じることができない、雇われないで生きる緊張感。しかし、最近は開業する歯科医のモラル・ハザードが大きくなった。ひとつは歯科医院の事業性など考慮されることはなく、担保に対しての貸し付けでしかない金融機関の姿勢。そして歯科医自身が内包している独立に対するリスクヘッジだ。リスクヘッジはとても大切だが、オーナーシップに欠かせない野性の欠如にも通じる。

いつまでも開業予備軍でいることは、歯科医として楽な生き方だ。なんの責任もないし、臨床や経営へのリテラシーが増えることで、歯科医として成長している気分になれる。しかし、どこかの時点で今までの学びを生かすステージにいかなければならないのが、多くの歯科医の宿命だ。

経済情勢、歯科医師過剰、人口減少、リスクは山ほどある。多くの開業予備軍の歯科医が、状況が悪いことを理由にスタートを切れないでいる。しかし、その本質は、外部状況にはない、歯科医自身が持つ独立に対する「恐れ」に他ならない。

100%でなくても構わない。生まれてこの方、どの局面においても完璧な状況などあったであろうか。恐れで自分を止めることで、完璧な状況が揃うことはない。永遠の開業予備軍にならないために、まず第一歩を踏み出してみることだ。

きっと、「やっと春が来ました」と言える時が来る。

歯科医院の参入障壁

コンサルブログ | 2011年4月13日

東海道新幹線14・15番コンコース下のカフェテリアが以前からのお気に入りだ。なんということないカフェテリアだが、震災の影響で薄暗くなった趣が、欧州の駅のような感じを醸し出し、以前に増して落ち着く。今日は、大阪へのコンサルティングだ。大阪の歯科医院の停滞は、首都圏を先行すること10年あまり、大阪経済の低調に因を発しているためか、特効薬はなかなか見つからない。 今後、首都圏歯科医院もスタッフのキャスト化やイメージ戦略では、経ち行かなくなることは、大阪を見ていると容易に察しがつく。

昨年から毎月一軒のペースで、歯科医院をプロデユースしている。開業は低調と、メーカー各社の声が入ってくるが、弊社の顧問先に関してはとても元気な医院が多い。新規開業の歯科医だけではなく、分院展開の依頼も多い。あるデータによると、売り上げ8000万以上の上位医院の業績は前年比約8%増、中位•下位医院は停滞か下降とされるが、なるほど頷ける。新規開業のマーケティングからも、既存医院のコンサルティングからも、歯科医院経営とは、参入障壁を作り上げていくことに他ならないと、実感する毎日である。

新規医院はいかにして既存医院の参入障壁を超えられるか、既存医院は新規医院に超えることのできない医院を作り上げるかが経営である。定量調査が意味をなくしつつある現在、追う立場の新規医院は、立地優位性と価格戦略に胡座をかいている既存医院が多いエリアでの開業が成功へのファーストステップだ。反対に追われる立場の既存医院は、立地と価格は中長期的な参入障壁にはならないことを認識して欲しい。新規、既存の別に関係なく参入障壁を超える手段は「人材」と「お金」である。もちろん「技術」であったり「サービス」であったり、様々な要素で医院経営に違いはでてくる。しかし、技術を高めようにもサービス水準をあげようにも、すべて「お金」と「人材」がついてまわる。

立地を担保している多くの医院には「人材」と「技術」がない、技術を担保としている医院には「お金」と「サービス」がない。歯科医院経営は、まだまだ隙間だらけである。

女性スタッフに嫌われる院長の未来は暗い

コンサルブログ | 2011年4月6日

昨日も勤務医のことで相談を受けた。「いいDRいないですか」は、どこの医院でも挨拶代わりになっている。歯科衛生士がいなくなったと思っていたら、勤務医までもいなくなってしまったのが首都圏の歯科事情だ。推測するに、若手歯科医は研修先で青田買いされていること、首都圏での過当競争を避け、出身地近辺で開業準備に勤務するケースが増えたことが挙げられる。しかし、だ。こんな正論を言っていても、働き手を求めている歯科医院には何の解決方法にもならない。

 

歯科雑誌や求人誌に「歯科衛生士が選ぶ就職先の条件」なる記事がある。給与・福利厚生・休日と労働時間・勤務立地が良いことが上位にきている。そんな当たり前のアンケート結果に、「そんな好待遇ができれば、困りはしない」と一くさり言いたくもなる。しかし、歯科雑誌や求人誌の編集は意外と現場を知らないため、アンケートには表れない現象を見る力も洞察する力もないのだから仕方がない。幸い仕事柄私は多くの医院の求人に立ち会ってきて、歯科衛生士にも若手歯科医にも「影の求職傾向」があることを知っている。

 

若手歯科医も求職先を探す条件は歯科衛生士と大差はない。中には、技術研鑚のため丁稚奉公を大御所の医院で志願する者もいるが、これは例外的な存在だ。若手歯科医の求職先として人気がある医院は、女性スタッフがポイントとなってくる。女性スタッフには歯科衛生士とか歯科助手の別は特には関係はないが、できれば若く、それに美形が加わると就職率だけでなく定着率も良いようなイメージがある。と、言うのも若手歯科医師は、求人先ホームページで院長のコンセプトや技術的ウンチク、実績などロジカルな判断もしているが、それに加え色香に誘われて応募してくる傾向があるからだ。以前まったく勤務医の応募が来なかった医院のホームページと求人サイトの医院紹介ページに、美形若手スタッフを集め写真を実験的に並べたところ、以前と同じ求人条件でDRが殺到した例がある。このような事例は珍しいことではない。「鮎の友釣り」のようと嘆くことなかれ、色香を否定して慢性的人手不足に甘んずる理由はどこにもないのだから。

 

歯科衛生士の採用は、勤務医以上にイメージに左右されやすい。歯科衛生士としての働き甲斐を求めるのは当然のこととして、「おしゃれさ」「明るさ」「楽しさ」など自分自身のライフスタイルのイメージで歯科医院を選ぶ傾向があるからだ。歯科衛生士としての働き甲斐がわかっていても、感情的に好きになれない歯科医院には梃子でも就職しない。さらに院長が知っておかなければならなことは、歯科衛生士が就職先を選ぶ基準に「院長のイメージ」が大きなウエイトを占めていることだ。つまり、院長のイメージが悪いとその医院は、歯科衛生士に敬遠される傾向がある。院長の悪いイメージのNO1.は「不潔」で、続いて「自慢話」「ケチ」などを挙げる歯科衛生士が多い。まあ、これは歯科衛生士でなくとも同じ気がするが。

女性スタッフが集まらない医院には、優秀な勤務医も来てくれない。つまり女性スタッフに嫌われる院長の未来は暗い、と言える。歯科医院の求人は一にも二にも「院長のイメージ」にかかっている。

 

 

 

求む、プロ歯科衛生士

コンサルブログ | 2011年4月4日

歯科衛生士の採用・雇用・待遇に関して、ゆく先々の歯科医から相談を受ける。なるほど、歯科衛生士に関する求人情報量が年々増えるのも納得できる。高度成長期当時の山谷地区の手配師よろしく人材派遣・求人企業が跋扈して、歯科衛生士の求人を情報媒体に載せている。その結果、膨大な求人情報量が、売り手市場の歯科衛生士を日雇い労働力化して、医院経営を蝕むという悪循環が起きている。

歯科衛生士の求人情報量の増加は、歯科医院経営が保存予防型へと構造変化していった結果である。物事の現象は外部と内部のバランスから発生し、悪化現象は、著しく内部が外部の変化に振り回された時に起きる。つまり歯科医院は求人情報量に錯綜された結果、実態は日雇いの「勘違いプロ歯科衛生士」をつくり、翻弄さる羽目になったのだ。

私は、約240人の歯科衛生士から基本検査、SC、SRPを受けてきた経験がある。その経験から、テクニカルワーク・観察眼・数値管理・言動・意識からプロフェショナルを実感できるのは、一医院に定着期間の長い歯科衛生士の中の一握りであって、求職を繰り返す日雇い歯科衛生士ではないという、当たり前の結論に辿り着く。しかし、多くの歯科医院は日雇い歯科衛生士の雇用に汲々として、慢性的に医院経営を悪化させているのは悲劇としか言いようがない。このような悲劇は、歯科医がプロ以前にまともな歯科衛生士を見る目を持っていないことにつきる。さらに、求人情報に左右されて目に見える報酬の給与や待遇の競り合いで、歯科衛生士を確保しようとする歯科医の姿勢もどうしたものかと思う。

一流の職人がそうであるように、真のプロフェショナルな歯科衛生士も、「腕を磨く」ことそのものを喜びとして、「腕」を磨き続けた結果、「人間」も磨かれていくものと、確信を持って言える。まず、目に見える報酬にしか反応しない日雇い歯科衛生士を、真っ先に不採用としよう。その上で、目に見えない報酬、①働き甲斐②能力の開発③人としての成長④仕事を通じての出会い、これらのことを大切にする歯科医院経営をしていると大風呂敷を広げてみることだ。

「これでは、何時まで経っても歯科衛生士を採用できない」と言われる向きもあるが、日雇い衛生士を雇っている限り、何時まで経っても「ゼロサム経営」から脱出できない。まともな(プロフェショナルな)歯科衛生士を採用して、「プラスサム経営」を目指すならば、「何時まで経っても歯科衛生士を採用できない」リスクを執ることである。腹を括れば、人は集まり、ついてくる。

歯医者が変人で何故悪い

コンサルブログ | 2011年4月1日

「歯科医は変人が多い」と、世間では良く言われる。そうかな?と思い、その問いを歯科医院のスタッフに向けると「変人というより変態ね」という声が返ってくる場合もある。「変人」と「変態」は全く別物で、片や行動原理に一方は性的嗜好に根差している。が、女性スタッフの多い歯科医院では、歯科医の言動を鵜の目鷹の目で観察されていることを自覚していないと、歯科医はいつの間にか変態に祭り上げられているのだから、たまったものではない。

さて、確かに歯科医には変人が多い、と思う。しかし、これは歯科医の業種的特徴ではなく、経営者という職務からくる歪みだと思う。「いい人では経営者は務まらない」と言われるが、歯科医以上に小規模零細の経営者は、相当な変人で、その上に悪相が加わっている人さえ少なくない。経営誌に登場しているイケメンIT系若社長やダンディーな中高年経営者など、例外的事例である。多くは、その職務の歪みから言動は変人と化し、時に外見には悪相が吹き出ている。

 
歯科医院の立ち上げから歯科医に付き合っていると、歯科医の変わっていく様をまざまざと見ることになる。資金調達の段階では、歯科医は「先生」からいきなり「債務者」へ格下げされ、世間の厳しさを慇懃無礼にも突きつけられ、胃がキリリッと痛む。どうにかこうにか開業までこぎつけると、医療機材の受注を目指して足繁く通ってきた業者は、納品と同時にフェードアウト、歯科医の周りから相談相手がどんどん消えていき、人間不信になる。開業して1年余りは、アレが足りないコレがない状態で医院経営を強いられ、綱渡りのような毎日だ。そうこうしていると資金繰りの苦しさを知らないスタッフからは、「忙しいのに待遇が悪い」などという囁きが耳に入ってきて、こめかみの当たりでプッチと切れる音が聞こえてくる。これでは、変人にならない訳がない。歯科医は端から変人だった訳ではなく、経営者になる過程で変人になっていくのだ。

 
気にすることはない。給料をもらって働いているスタッフ、借金を返済してもらって利ざやを稼ぐ金融機関、材料や技工を商いとしている業者と、患者を集めて金を稼がなくてはどうにもならない歯科医とは、仕事に対するマインドが根本的に違うのだから。絶え間なく続く悩みと苦しみの結果が「変人」でもいいではないか、「経営者は変人で、孤独だ」と、誰もいない診療室で叫んでやろう。

 
こんな歯科医が本質的に抱える恐怖心を緩和してくれるのが、歯科医院に多い同族経営である。しかし、同族経営は恐怖心を緩和してくれるが、変人扱いからの脱出は望めない。歯科医院経営とは、歯科医とスタッフ、出入り業者、金融機関との間にある大いなる隔たりを乗り越えなければ、売上も利益も出ない仕組みになっている。
歯科医院経営は変人扱い、同族経営を過ぎたのちに永続的に繁栄が待っている。